〜出会い編〜出会い


 ばったり

 その言葉しか、今の状況は表せない。

 男は街道の真ん中で止まり、警戒心をあらわに、森を睨んで剣に手を かけている。
 森から出てきた女は、腕や頬にひっかき傷。髪には小さな葉が絡んで いる。

(変な女)
(変な男)

 二人は、出会った。


 話は、数分前にさかのぼる


〜男の場合〜
「………………」
 細い街道を行く男は無言だった。青銀の髪を簡単に後ろで束ね、腰に 刺す剣は長剣だ。広いマントが身を隠すが、もう暖かい陽気ではあった。
 面白くも楽しそうでもない。ただ、無言で無表情。

「………………!」
 突然、歩が止まった。
 静かに森を睨みつける。ひどく、不規則に森の葉がザワメク。
 ガサガサと鳴る森。
 近づいてくる音に、男は剣に手をかけた。


〜女の場合〜
「……………っっっっっ(ふざけてる!)」
ぐしゃ!
(何なのよ!!)
ガザッ!!
(ここは何処だ〜〜〜〜〜!!!)
 何度そう思ったかわからない。叫ぶのに疲れた女は、とりあえず叫ぶ のは、中止した。
(詐欺だ!!!! 珍しい森とか言ったって、この国の森とさほど変わら ない!!!)
 しかし、ガサガサと派手な音を立てて歩く女の左腕には、おいしそう に熟したオレンジ色の果物が収められている。



 そんな二人は、森沿いに作られた街道の途中。

「「………………………」」

 男と女の行動は止まっている。まさか森から人が出てくるとは思わな いし。森を出た街道(さき)に都合よく人がいるなど思いもしない。

「「………………」」


(…………変な女)
 派手な音を立てて出てくるので、てっきり獣か何かかと思っていた男 は、出てきた女を見て唖然とした。
 木に引っ掛けたのだろう。腕や頬に引かれた赤い線。何処に突っ込ん だのか疑問になるほど、髪に絡んだ初夏の色の葉。もう、半袖で十分な 気候だった。

 腰に剣が刺さっている所を見ると、ふと、一人でもやって いけそうだなと思った。いくらここの治安が良くても、女の一人は危険 だろう。だが、左腕に抱えられた日を浴びたように明るいオレンジ色の 果物、それに負けないくらい日を浴びたように明るいオレンジ色の髪。
なぜか男に、今まであった女とは違う印象あたえた。


(…………変な男)
 剣に手をかけたままこちらを見る男を、女は不機嫌そうに睨む。
 女は街道を目指して来たが、まさか都合よく人がいるなど思いもしない。 長く伸ばされた髪を後ろに送り、同じく長い長剣。それなりに装飾が施 されていても、実践的に使えるものであろう。旅路が長いとは思えない、 まだ新しそうなマントに、しっかりとした布地で出来た服。

 どこぞの貴 族の坊ちゃんが、半分遊びで旅にでも出たのか? しかし、顔つきは世間 知らずというわけでもない。むしろ、油断のならない相手だろう。普通 の人にはわからないかもしれないが、男の目は物を見透かすのが得意に 見えた。


「「………………………」」
 しばらく、行動を止めて睨みあう。


―――――ずっとそうしてもいられない。
スタッ
 二人は足を踏み出した。―――――同時に。北に向かって。

「「……………」」

(は?)
(なんだ?)

 歩き出した二人は並んで歩いている。特に男が女の歩に合わせるわけ でもなく、女が男の歩に合わせるわけでもなく。一番歩きよい速さで。
 しいて言うなら、男は世間一般より歩が遅くて、女は世間一般より歩 が速かったのだろう。

「「…………」」
 並んで歩く。
 どちらかが歩を早めたり、遅くしたりすればいいだけなのに。自分が 歩きやすい速さで歩いている事を、わざわざ変えることはしない。

「「…………」」
 並んで歩いているわりには、二人は無言で無表情。

シャク
 女は抱えていた果物を口にしだした。甘い香りがまう。

シャクシャク
 もくもくと果物を食べる女を見ながら、男はまたも思う。
(変な女)
 だからと言って、これといった理由もないのでそのまま歩く。

(変な男)
 さっさと速く歩くか遅くするか、とりあえず自分の前からいなくなら ないだろうか。…………女には、自分から行動するという気はさらさら ない。

 結局街道の先。ホサナという町まで、二人は並んで歩き続けた。

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