そんな風にのほほんと、国王様と王妃様がお茶を飲んでいる時、 カイルとリヴァロ(うわさのふたり)は戦術試験会場にやって来た。


 ちなみに、戦う術は何でもいい。種類は問わない。ただし、実 力は問うが。
 試験者同士での二試合と、城の兵士との試合。計三試合で実力 を測る。護衛の中で武器のバランスが偏らないことも、重要なこ とだ。剣士の割合は高いが。


キィィン!!
「やめ!!」
 相手の剣を弾き飛ばすのと、制止の声が上がるのは同時だ。制 限時間ぎりぎりとなってしまったが、こちらの方が評価は高くな るはずだ。

「…………」
 無言で、闘技場を降りた。―――――が、ある視線に反応して、 数歩降りた階段の途中で止まった。―――――視線は、視線を追う。
――――向こうの、窓―――


「――――っ!!」
 突然、窓から下の闘技場を覗いていた王子が窓を離れた。
 円く作られた闘技場を囲むようにそり立つ壁、その窓のひとつだ。

「……? どうかされましたか?」
――――まさか、矢が飛んできたわけじゃあるまい。

「……………あいつは?」

「………?」
―――なるほど、王子の指す指の先に、次の闘技者に邪魔だと言わ れているらしき男がいた。

「レランですか?」
「知り合いか?」
「はい。父親の弟の息子ですから。」
「従弟か」
「そうなりますね。」
――――“受ける”という話は聞いていたが。

「何か?」
「俺に気づいた。」
「――――――。」
 別に驚くほどの事でもなかった。そのように、訓練されて育って きたのだから。王家に護衛を出す名門に生まれた者として。

「…………強いのか?」
「―――まだ、若いですが、そうですね。――――いずれは。」
 昔、国王の護衛となった自分に対して、私も護衛をする者になり たいと言っていたぐらいだから。

――――うまく洗脳されているとも言う。………本心に変わりない だろうが。

「へぇ」

 もう控え室に入ってしまって、姿は見えなくなった。



(今のは―――――?)
 控え室で、レランはこちらを見ていた視線のことを考えていた。 観覧(かんらん)は認められていない。それに、どこか人目を忍ぶよ うだった。

「…………」
 次の試験までは、まだ時間がある。

 下ろした剣をもう一度担いで、レランは部屋を後にした。



「ひまだ。」
「………帰りますか。」
 すっかりやる気をなくしたらしい王子。第一、なぜここに来たの かすらなぞである。

「……………。」
 王子の視線が、動いた。鋭く細められる。―――自分も、気づい ているという風に剣に手をかけた。

 ゆっくり、確実に、近づいてくる。

(何者だ――――?)
 どさくさにまぎれて世継ぎの暗殺を企てる者は多い。

(あと、十)
 自分の剣に手をかけると、リヴァロに制された。――――仕方な く、リヴァロの後ろに回る。
 故意に気配を消した気配が、近づいてきていた。

 壁際を移動するリヴァロ。しずかに、ゆっくり。先は角になって いて見えない。一番近い左に曲がる角。壁を背に、また一歩近づく。 剣は構えたまま。

 距離、八………五…………二………

 角の向こうから剣が降りるのと、リヴァロが剣を振るうのは同時 だった。

キィンーーー!!
 重なって、しばらく止まった。角から現れた顔に、リヴァロは驚 いた。

「レラン!!」
「従兄(にいさん)?」
 現れたのは、俺に気づいた男。リヴァロが言うにはレランという らしい。

「なぜここに―――?」
 不思議そうにレランが剣を下ろすと―――

「――――…………」
 俺を見て絶句した。

「そんなわけだ。」
 リヴァロのフォロー。むしろ追い討ち?

「申し訳ありません!!」

 突然レランがひざをついた。
「なぜだ?」
 俺は問いた。
「知らずに……とはいえ剣を向けるところでした。それに、不躾(ぶ しつけ)な視線を――――」
「あえて切り合ったほうが腕を試すのにちょうどよかったな。」

「王子。」
 リヴァロが非難するように目を向ける。

「視線は、気づいたのはお前だけだ。」
 ほかの者は気づきもしない。――――気にするな。…………それ より、時間は平気なのか?
「時間ですか………」
 俺の質問に、レランはあわてていた。そこにやってきた影。
「そろそろ第三の試験が始まる。せいぜい、遅刻しないことだな。」
 そう言って、リヴァロはレランを角の向こうに押し返した。

「頑張れよ。」
 声は、聞こえただろうか?


「………なんだよ」
 リヴァロが、ぽかんと俺を見ていることに腹が立った。
「いえ……気にいられたので?」
 声をかけるなんて、どういった風の吹き回しで?

「うるさい」
 そう言って、窓に視線を移した。

 今度は、暇じゃない。―――――見たい者があるから。




 合格者は、今回は一人だといわれた。あとの四人は、まだこれから。


 最初の一人となった男の名前は、聞かなくてもわかっていた。だから、 合格者が誰なのか、言おうとした大臣を黙らせた――――――





あとがき
なんだ?この家系。護衛をいじめるのは日課か?
ああ、何に苦労したって、カイル(少年。)だって、あの腹黒が少年だよ!!13歳!!中一ぃ?ありえねぇーーー。
このあと、レランはカイルの部屋に入ってきます。そして、苦労性人生が始まるのさ………
カイルが人を使うことを、覚える少し前のお話。

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