あーそんでぇーーっ!



「グライン家と一緒に陛下の御前に参上しろですってぇぇぇーーー!!!!」

 叫び声は、天井を越えて空を飛ぶ鳥を落としそうだ。


「………ぉ、奥方様、落ち着いてくださいまし……」

 おたおたと伝えに来た執事の声が遠くなる。割れたカップとサーバーは、いったいくらするのだろうか。

 陶器の破片を拾う侍女の給料より高い食器類を、惜しげもなく床に払ったアニバス家の奥方は、息荒く夫の執務室に向かった。







「あそんで〜〜あそんでぇ〜〜あーーそんでぇーーーー!!!!」


 そんな声が響くのは、次の週のとある日。今では考えられないことで、覚えているかもわからない。不思議と縁ある二人の子供。出会って再会するまでは、そう時間はかからない。







「―――――――陛下」
「なんだ」
「アニバス家、並びにグライン家の者達が到着いたしました。」

「…………では、行くか」

 エルディス国国王は、傍らのソファに座る王妃に声をかけた。―――――若々しく、まだ嫁いでから数年しか経っていない王妃。しかし、そんなことを微塵も感じさせないような落ち着いた微笑で、差し出された国王の手を取ったフレアイラ。





 さて、グランディア城に到着した格家は待合室に案内された。


「お前は遊んでろ。」
「あなた! 何言い出すのですか!!?」
「ただし、兵士や侍女の邪魔はするな。」

 そう言われた金髪の少年は、走って部屋を後にした。







「お前は関係がない。帰れ。」
「――――御爺様。そんな一人で帰れなんて。」
「何故、連れてきた?」
「呼び出しが唐突なのですから仕方ありませんわ。一緒にいたのですよ。それに御爺様、いくらなんでもいきなり帰れなんて酷いですわ。」
 怒りを表す娘に、父親は黙した。

「許可を取った。」
「あなた………」
 息子を連れた婦人は別の声に振り返った。
「終わるまで庭にでもいろ。」

 こくっと頷いて、黒髪の少年は扉を開けた。






 空がとても青く、いい天気だった。こんな日に部屋の中にいるほど、二人の少年は捻じ曲がっていない。





「――――まずは立て。」

 国王の声にゆっくりと、今でもそして将来ですら、優秀な護衛を勤める家系二組は立ち上がる。

「今日は、一つだけ話をしたくてな。」










 黒い髪の少年は、空を見上げていた。片手に持っている木の棒と、少し前まで聞こえていた数を数える声。―――――少年が、何をしていたかなんとなく把握できる。

 さて、そろそろ素振りを再会しようかと決意する少年の背後に、ひょっこりと影が浮かんだ。



「――――(…………よし)」


―――――すう
 大きく、息を吸った。
「ろくっ…」

「あーそんでぇーーっ!!」

ガバァ!!! ――――ドシャァ!!!

「!!!!?」

 突然だった。素振りを再開しようと息を吸った黒髪の少年に、細い金髪を伸ばした少年が飛び掛った。…………ほら。だって、邪魔しちゃいけないのは兵士か侍女だから。

 地面にめり込んだ少年は、背中でいまだに「あそんで」とねだる少年にかまわず起き上がった。

ずでっ!
 今度は、金髪の少年が尻餅をついた。

「………」
 黒髪の少年がなんだコイツは? と、思う事もなく素振りを再開することは、できなかった。

「あそんでぇーーっ!」
 金髪の少年が、後ろから遊んでもらえるものと思い込んで抱きついてきたから。

「…………」
 黒髪の少年は、振り返らなかった。

「あそんでーーあそんっで!!」
 金髪の少年は、おそらく自分より少しだけ年上であろう少年を、左右に振るは、前後に揺らすは暴れるは。黒髪の少年は、身体を振られても倒れることはないので、揺すられるがままだ。

が、いい加減で怒った黒髪の少年は。手を振りほどいて歩き出した。

 てっきり、すでに遊んでもらえるものだと勘違いしている金髪の少年は、鬼ごっこだと思った。

「つーかーーまえぇーたっ!!」
 と、飛び掛り、またも顔面から黒髪の少年を地面にめり込ませた。


―――――むくっ
「………」
 黒髪の少年はあきらめなかった。と、言うか、心に誓った。――――この少年が消え去ることを。

「つぎはーーつぎはー?」
 どうやら、やってもいない鬼ごっこにあきたらしい金髪の少年。いい加減で怒り出しそうな黒髪の少年は、震えながら立ち上がった。

「???」
 期待するようなまなざしに、黒髪の少年はあきれた。そして、甲高い声は無視するらしい。

「あそんで!」
 ほっといて素振りを始めようと思い棒を振り上げた黒髪の少年の前に、こりずに飛び出した金髪の少年。

ごんっ!
 ―――鈍い、音がした。

「ぁ………」
 黒髪の少年がまずいと思いながらも、ある意味これで静かになるか。と、ふと悟った瞬間だったが、期待は裏切るものである。

「ててててて………」
 痛がってはいるが、気を失うはずもない。だって、子供の力だし。

「………」
 黒髪の少年の顔は引きつった。――――さすがに、置いていくわけにもいかない。


にぱぁ
 ひとりきり痛がった後、金髪の少年は満面の笑みで黒髪の少年を見上げた。

 ――――だって、かまってもらえたし。
 金髪の少年にしてみれば、十分かまってもらえた事になるらしい。

「あーーそんでぇーっ!!」

 いっそううっとうしさをます金髪の少年。(黒髪の少年は本気で思った。)


 何をするわけもなく、金髪の少年は黒髪の少年に抱きついて、付きまとって、ちょこちょこと周りを歩き回る。

「あーーそんで!!」



 黒髪の少年の真っ黒な瞳が、ついに何も映さずただただ前を無言で見つめることとなってまでも、金髪の少年の高い声は響いていた。



 それはもう、通りすがりの侍女や兵士がほほえましく見守るのを通り越して。
 アニバス家とグライン家の謁見が終わっても。







「――――レラン!」
「――――セイジュ!」

 同時に名を呼ばれて、自分の親の元に走っていった時。



 ふと振り返った。だけど、
 城の中に入ったセイジュには外にいるレランは見えないし。
 城の庭先に向かったレランには城内のセイジュは見えない。


 セイジュが面白いのがいた!と親に報告する。
 あれは何なのかと首を傾げるレラン。


 こんな所(城)にそうそう子供がいるはずがない。と思っている親たちは、何を言い出すのかとあきれていた。
 ―――もちろん、話は聞いてあげましたよ。




 数年後再会したところで、二人は覚えているはずもない。小さな少年二人が城で遊んだ時のお話。――――だって、二人は五歳くらいだったはずだから。


 も一度出会った時だって、一人は王子を追っかけて、一人は暇を潰している。

 そんな感じの時だったから。

あとがき
セイジュキャラ的に崩しやすい。あんたはアホか!
レラン崩しにくい。なんだ、あの歳相応にならなさっぷり。
護衛という面でも、歳相応らしさでも、たして2で割りゃちょうどいい
そんな二人の少年時代。
ってか、セイジュの性格が歪んでんの母親の所為じゃね?
ぐれるってのーー見限られるってのーー
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