一人旅 〜策略〜


きぃぃぃぃぃぃぃ―――――――

「あのように扱いにくい娘にしてどうするつもりだ。」

 部屋にいた侍女をすべて追い払い。広い部屋に入ってきた国王、カルバードは言う。


 薄暗い部屋だった。日は暮れ、明かりを必要とする中、王妃は月明かりを浴びていた。

「心配なさらずとも。エルカベイルは帰りますわ。」
「それは心配しておらん。―――そうではない。なぜだ。」


 部屋の中央まで来た王の心配は王子ではない。


 エルディス国の王は側室を取らない所にある。そのため、王妃はなによりも大切にされる。

 困るのだ。あまり発言権を持たれるのは。

 政治に関係してほしくもない。

 四大大国エルディス国の裏の顔。それを知るのは、一握りでよい。

 教養は必要だが、あまり聡いのも困る。

 たとえ死しても、自分(カルバード)と后(フレアイラ)の統治の余波がある限り。

 表沙汰にしたくない事を知られる。

 阻止するために動かれる事。

 すべて邪魔となる。


「あれ(ティアイエル)ならば………」
 結局、王子の相手を選ぶ権限は、王子にあるはずがない。―――――王妃にあった。



カタッ
 王妃は寝そべっていた長椅子から起き上がる。明かりの灯されていない部屋では月明かりが王妃の背を照らす。

――――――――ゆっくりと、王妃は王に近づく。深い色のドレスがひるがえる。まとう雰囲気も、昼のそれとは違う。

 背の高い王の首に、王妃は腕を回す。微笑んでるその顔は、昼のおっとりとした表情からは想像できないほど妖艶だった。

 王はぞくぞくしている。それは昼とは違う王妃の表情に、体が歓喜を表している。


 静かにゆっくり引き寄せた王の耳に、息を吹き込むように王妃はささやく。





「だって私(わたくし)―――――“お人形さん”には、厭(あ)いてしまったんですもの――――――」




        一人旅〜悔い・遭遇・変化・利用・策略〜 終了



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