故郷編 〜見つかった〜


…………………
強く引かれた腕。

「リーディ!!」
呼ばれた名。

どちらも同時。


 大きな声に反応して、通りの中で人々は振り返る。
 しばらく、止まっていた。つかまれた腕を睨む。
その腕を振り払って、逃げるのは簡単だった。でも、そんなことをすればこれはその名を呼び続け、私を探し続ける。


――――………殺してしまえば?
 考えが浮かんだ瞬間。剣を抜いて首筋にあてていた。

ざわぁ!!!
 通りの人々が一瞬にして離れていった。

これと話すことは何もないし、話などしたくもない。


 剣を突きつけた方も突きつけられた方も、無言で相手を睨んで、見ている。



ぱし!
 カイルがリールの腕をつかんで、静かに剣を引かせしまわせた。
 驚いたリールは、不満そうで、それでも従った。もう一人の男―――――自分より年下だろうか。
(誰だ?)
 リールにとってまったく知らない他人―――――というわけでもなさそうだ。

 とりあえず、目立ちすぎる。

「うわ!!」
 捨ててもいいんだが、連れて行く。―――――もちろんレランに背負わせて(荷物のように。)
 人形のように表情のなくなったリールの腕を引く。驚いている、いらだってる――――?

 わからない。










「「「………………」」」
 部屋は、誰もいないのと一緒だった。

 窓枠にひじをついて、外を見ながら椅子に座る一向に振り返らないリール。
 リールに向かい何か言おうとしつつ行動に出ない突然現れた――――邪魔者?
 レランは一つしかない扉の横に。
 リールと男の間に、自分。


「…………リーディ……」

(なんだ……?)

「……っお願いだ!!助けてくれ!」
 レランに床に投げ落とされ、ひざをつくように座っていた男が叫ぶように声を上げた。
「……………………」
 それでも、リールは振り返らない。

「リーディ!!! ………っっっ…―――エアリっ」

ギロッッ!!!
 急に振り返ったリールのにらみに圧倒されて、男は黙った。それでも、すぐに声を上げる。

「帰れ」
「助けてくれ!!」
同時に。

「帰れ!」
「このままじゃ、国が滅びる!!」

(……………………?)
 気づいたか、リールの視線が動いたことを、納得するように、哀れむように、その目が開かれたことに。

「帰れ」
「リーディ!!」
「うるさい」
「知っているんだろう。何が起きているのか!!」
「知らな……」
「うそをつけ!だったら何でお前にかかわった者ばかり、地に足をついて歩いているんだ!!!」
「何よそれ」
「言ったとおりだ!」
「………優秀な専門家がいるでしょう!?」
「使えないからここにいる」
「……〜〜っっっ〜〜!!!」




ガッ!
 窓枠を蹴って、リールは階下へ飛び降りた。――――叫ぶ声を聞き流して。



「リーディ!!」
 窓に近づき階下を見て、自分も飛び降りそうな男。
ドガ
 剣の柄で後頭部をねらい昏倒(こんとう)させる。

「見張ってろ」
 床に倒れた男を見下し、短く命を言って部屋を出た。―――もちろん、反論は聞かずに。





「は! ……は! ……」
 静まらない息を整えて、広場の芝生に腰下ろす。

(いったいなんで………しくじったわね)

 よく見ると、空の星は見知ったものに近かった。

「まだあと二年――――」
「ずいぶんと必死だったな。」

 不意打ちに、驚いて振り返った。

「え〜」
「何を逃げた」
「ぇ〜〜……」

 隣に腰を下ろしたカイルが容赦(ようしゃ)なく問いかける。

「「………………」」

「………………だから!!」
「なんだ」

「……〜〜〜〜!!!」
 いらだって、ぶちぶちと芝を抜く。
「関係ないでしょ」
「………そうだな」
 立ち上がって、カイルは来た道を帰っていく。

「って………」
 おいてかれたリールはあわてて後ろを追いかけた。
「………だって……」

 言葉を小さく響かせて。


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