果物



「♪…♪…♪…♪…」

広い部屋の真ん中のテーブルで、リールはご機嫌でナイフを握っている。

目の前のテーブルには、普段なら口にする事の出来ないような果物。普段でも口にするような果物。

洗われて水をはじく。

季節は、そう。

果物でのどをうるおす。

山となり盛ってあった果物も、半分は食べられる準備がすんでいる。

一つ食べまた用意するのでなく、

全て食べれるようになってから食べるのがリールは好きだった。

もちろん。皮を剥き、切りながら味見は欠かさない。


ザクッ スルスル トン サクッ ぱく シャリ

丸く大きいものを半分に切り、さらに切る。

皮を二回剥くものは剥いて皿に並べる。

両手に収まるものの皮を剥き、真ん中の種をよけるように切る。

皮を剥いても、剥かなくても食べられるものは、半分皮を剥いた。

食べる直前に皮を剥くものは皿に並べてある。

中には、果物と呼ぶのが正しいのかわからないものもある。

火を通してもおいしいものがあったが、今回は生でいただく。


「♪…♪…♪…♪…」

ちゃくちゃくと並び増える果物の皿を並べて、リールは幸せだった。


「……………暇人だな。」

ちょっと離れた場所で椅子の背もたれを抱くように座っていたカイルが言う。

カイルは、食べるのが大変な果物はあまり好まなかった。

細かな種の多いもの。食べるために手を汚すもの。皮が厚く硬く食べられないもの。

基本的に、洗ってそのまま食べられるようなものを好む。

カイルにとって果物は、特に食べなければならない。というものではない。

リールがわざわざ皮を剥いたものでも、カイルならばそのまま口にするものばかりだ。

甘いものを好まない事も理由としてあがるだろう。

果物を食べるために時間を費やすなら、本でも読んでいたほうがましだ。

しかし今、果物を剥いているリールに視線がいっている。

あきれているのか、感心しているのか、見る価値があるのか、バカにしているのか。


「うーるーさーいわね!!! 食べたいんだから!!」

リールにしてみれば、それが食べたいだけである。

だから皮を剥いたり、種を取ったりする事は面倒だなど思いもしないのだ。

食べたければ、皮を剥くのに時間がかかろうが、種が果肉を食べるのに邪魔しようが、関係ない。

皮と種があって当然なのだから。

これが食べたい! の一言で説明できる。


「おいしいじゃない。」

「誰もまずいとは言ってないだろ。」

「………………めんどくさがり。」

「早く食え。」

「なんでよ。」

また、新しいものに手を伸ばし、厚く皮を剥き、芯を採る手を止めずに言う。

「あるのを見ているといらいらしてくるんだよな。」

「だからなんで。」

「種が多い果物は食べるのが面倒だから。」

「あっそ。私は好きなの。」

種の周りに甘い果肉がついていて、皮に割れ目の入る果物を籠から取り出し皿に置く。

カイルの好まない果物は向かって左よりに。好む果物は向かって右よりに。並べられていた。

テーブル上の真ん中の入れ物に入る果物の山が崩され、周りの皿に並べられる。


皮ごと口に運ぶもの

種をとられて口に運ぶもの

皮と種をとられて口に運ぶもの

口に運ぶ直前に皮を剥くもの

ヘタだけ切り落とされて口に運ぶもの

個人の好みで皮を剥いたり剥かなかったりするもの

種ごと口に運ぶもの

スプーンですくって口に運ぶもの

皮を剥いて切って口に運ぶもの

ただ切ったものを口に運ぶもの


真ん中に大きな種が一つあるもの

種が果肉全体に広がっているもの

細かい種が果肉と絡んでいるもの


リールは別に気にしない

食べたいのだ。



「はい。しゅーりょー。」


甘い汁でべたつく手を洗い。皮だの芯だの種だのを捨てて帰ってくれば、

「ってちょっとぉ!!!」

「あ?」

無残にも並ばれた果物は減っている。

「あんた食べるわけ!?」

「誰も食べないとは言ってないだろ。」

「何でよ!!! せっかくキレイに並べたのに! ものの三十秒でぶち壊し!?」

皿の上に並ばれた果肉は、花びらをかたどったり、山となっていたり、中心から渦を巻くように並べたり、同じ形の果肉をずらして重ね合わせたり。

無造作に置くのではなく、置き方にもこっていた。

自分のために盛ったものを自分で壊すならいざしらず。食べる前に片付けている間に食われた。


目の前の果物を剥いて切って食べる準備をして、皮だの何だのは片付けて。

食べる用意を万全にして食べるのがリールは好きだった。


「あ〜ん〜た〜ねぇえ〜〜〜勝手に食うなぁ!!!!」

いつの間にやってきたのか、テーブルに椅子を引き寄せて、リールが食べるために用意したフォークを使っている。

「それ私が使うの!!」

「一つしかなかったが。」

「あんたの分はない!!!」

「お前のじゃないだろう。」

「食べたきゃ自分で剥け!!!」

しかし、入れ物に入っていた果物は全てリールが皿に並べた。入っていた入れ物は返してきてしまった。

「それだったら食べないな。」

「……………………人に剥かせるのかよ!!!」

「違うな。お前が勝手に剥いただけだろ。」

「だったら食べるなよ!!!」

ぱく

カイルは止めていた手を動かし始めた。

「俺のために剥いたんじゃないのか。」


―――――――――――――瞬間、リールは声を失った。


叫び出したらうるさいなぁと、しばらくは耳が痛くなるであろう事を予測していたカイルは、いきなりリールが席に着いた事に驚いた。

「どうしたんだ。」

「食べないとなくなるでしょうがぁぁ!!!!!!」

目の前の皿を投げつけそうな勢いで、怒りをあらわにリールが言う。

フォークを使われているので、手づかみで食べ始める。


食べやすいものばかり食べていたカイルは、ふとリールのように種の多いものを口に運んだ。

「甘いな。」

「基本的に甘いから。」

冷ややかに、リールは言う。



置かれていた果物全てを口にしたカイル。


それからは、気に入ったものをたびたびリールの前に置いといて、リールが食べるために剥いたところに現れる。



自分の食べる分が減るのが嫌なリールは、そのうち二人分剥くようになったとか。



〜あとがき?〜
なんか、食べるリールに、ちゃっかりカイル。みたいになってしまった。
思い浮かんだ果物季節感まるでムシだから。
カイルが気に入ったのは、自分で剥くのは面倒な果物なんです。




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