「グライン家に先を越されたぁ!!」

ガジャーーーン!!!

 大きな叫び声と共に、耳障りな音。テーブルにのるお茶のカップとソーサーが派手な音と共に床に叩きつけられた。

「“また”グライン家に先を越されたなんて!! アニバス家の名折れですわ!」

 部屋の中の住人は、やれやれと息をついた。

「―――貴方!! どうしますの! 陛下の信頼は薄れていく一方ですわ!」

「……まぁ、落ち着かないか。」

「何をおっしゃいますの! 貴方はそれでよいのですか!」

「……………」


コンコン
「―――!」
「入れ」

がちゃ

「――――セイジュ! もう貴方しかいないわ! アニバス家の命運は貴方にかかっているのよ!」
「お断りします。」
「………っそんな言わないで事頂戴よセイジュ。レイシとコウカが落ちてしまったの。もう貴方しかいないわ。」
 ―――兄と、弟。

「嫌です。そんなつまらなそうな事。」

 そう言うか速いか、用はないとセイジュは部屋を後にした。

「待ちなさい! ………………っ貴方! どうしますの!!」


 いつまでも、奥方の悲鳴は響いていた。







(何考えてんだあのババア。)
 ゆっくりと目的地(昼寝の場所)。に、向かいながらセイジュは考える。

 ――――簡単な話だ。グライン家とアニバス家といえば、代々王に仕える優秀な護衛を出す名門として有名である。――――しかし、最近ではその地位はグライン家が独占……というか、王子護衛選抜試験に落ちただけだ。――――兄と弟は。ようは前回も。その前も。

 基本、一度落ちたものは続けて受けることはできない。次は、数年後だ。

「ま。かんけーねーし。」

 そう言って、木の上で寝に入った。







 鳥の声が聞こえる。風が髪をなでる。空は、雲が追いやられていた。
うとうとと、そろそろ熟睡に入りそうなころ。

ひゅ!!!

バキイィ!

 小気味よい音と共に、枝が折れた。一本のナイフの所為で。

 ――――ちなみに、セイジュが、自分を支える支点の一つとしていた枝である。

 つまり、

「うわ!!」
 情けない声を上げながら、

バサバサバサバキィィイイィ!!

どだーーーん!

 セイジュは落ちた。


「……………」
 青空を見上げて……

「城に上がるぞ、ついて来い。」

 自分の馬を用意した親父の、命令に断れるはずもなく。

 しぶしぶと、城に向かった。













「許可をもらったから、お前はどこかに行ってろ。」
「…………」

 親父が謁見をしている間。なんでか城の中で暇をつぶさねばならないらしい。

 俺がここにいなければならない理由は?





「……………」
 てくてくと、とりあえず城の中を歩く。

 待合室は、次の客が待つらしいから、追い出された。

「…………」

 廊下、回廊。

 絵、花瓶。


 すぐ先は、曲がり角だ。

 ――――右か、左か。

 曲がり角のちょうど間で、セイジュは止まった。


「暇だ…………」

「おいお前!」

「うわ!」

 まったく感じなかった気配に、突然の高い声に正直驚いて振り返った。
 と、そこには、十代に入ったであろう少年が、こちらの意思は関係ないというように言い放った。

「次に来た奴が俺がどこに行ったか聞いたら、こっちだと言え。」

 ―――そう指差しながら言って、言った少年は走り去った。


「………んだ……?」
 ―――なんだあいつ―――?

 はっと笑って、なんで俺がと、意味がわからず元来た道を戻ろうと…………

(……………!)

「ちょっと待て………」

 ふと、思い立って、足が止まった。

 この城の中で、今ぐらいの年のころの人物といえば………




「そこのお前!」
「…………」
 走りつかれたような、怒りを含んだ声に、恐る恐る振り返った。

「なに………」
「王子はどっちに行った?」
 人の言葉をぶった切って、男は言った。

「……………」
 なんだ、こいつら。さっきといい今といい。て、

「王子?」
「金の目で青みがかった銀の髪を後ろで縛った少年だ!!」

 知らないのか!と、言いたげに男はいらいらしながら言った。

(うわぁーーやっぱりー)
 予感的中?


 ―――どっちに行った? か?―――


「……………こっち、行きましたよ。」
 と言って、右の角を示した。

「……………」
 一瞬、男は目を走らせて思案したあと。

カッカッカッ……


 “左”に、走り去った。


「…………………」

 男の背は、先の角を曲がったらしく見えなくなった。


「ぁあ、言ったか。」

 ――――と、そのタイミングで声がした。

 ……………“右”から。


「…………………」
 あきれて振り返った。――声の元は誰だかわかる。

 右の角から現れたのは、エルディス国王子。


「いったい、どういった理由で。」
 “右の角に行った”と言えと言った後“右”に進んだのは。

 その言葉に、少年はふと笑ったが、黙した。




「…………簡単だ。」
 そして少し考えた後、言った。


「―――普通、“本当に向かった方向”を言うように言うか?」


「……………」
 まぁ、普通は、逆か?

「……………」
 そう言った王子は、ふと、俺のことを見た。まじまじと。

 まぁ、視界に入ってすらいなかったんでしょうね。と、言うか認識としては、“通行人一”ぐらいか。

「見ない顔だな。誰だお前。」

「……………」
 ふと、条件反射であけた口を、ゆっくりと閉じた。

 意味深に笑って目を合わせ、そして言った。

「すぐにお会いできますよ。エルカベイル様。」

 は? と、唖然とする王子を前に、礼をしてその場を去った。











「―――俺受けるわ。」


 と、いきなり扉から出てきた親父に言った。一瞬面食らった親父の顔は、すぐに元に戻った。
「そうか。」



 ――――何か、面白い事でもあったのか?


 聞こえた言葉に、笑った。



 ―――楽しめそうだ―――












「俺受けるわ。」
「セイジュ!! 受けなければ! 親子の縁を切るわよ!!!」

「「……………」」

 聞いていたのか? 馬から下りるなりやってきたババア(母親)の言葉はまるで人の話を聞いてない。俺と親父は黙った。


「…………………ぇ?」
 たっぷりと考え込んだあと、ババアは聞き返した。

「待って、待って、今、何ですってなんですって何ですってぇえ!!」

 ―――――問題あったのか?

「受けるって言ったのね言ったのね言ったのね言ったのねぇ!!」


 これで安泰だわ〜!! と、浮かれ始めるババアを置いて、俺は部屋に帰った。

















「なんだ、お前か。」

 ……………“二回目”にあった時の王子の言葉に、驚かなかったのは俺ぐらいだろうな。











俺の主はこんな人







とりあえず、セイジュとレランとカイル。うん。
ちなみに、このあと現代につなげようか考え中…
読みたい?



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