「はっ! ふ〜〜ん」

 ―――今、鼻で笑っただろ!

セイジュは、目の前で、

「お願いしま〜すこれ追加!」

 数えるのもあほらしい注文をした女を見た。

「おい…………」
 ―――お前が! 聞いてきたんだろうがぁ!

と、いうか、エアリアス家の女に探りを入れるはずで来たにもかかわらず。
 ――――いつの間にか。

 “酒場”で飲んでいる。しかも自分の話をしてしまった。

 ―――待て。
(ちょっと待て。)

 セイジュは、リールから何か聞きだす予定だった。

 ………もちろん。何の成果なし。

 目の前で、飲んで、食ってる女。―――厨房と周りと接客の人物の視線が痛い。
 いや、ただ純粋に“驚き”の視線だ。


 ――――そりゃお前、あれだけ食ってれば………

「あとそれに――――」
(おい!! 誰の支払いだ!!)

 あせった視線は、一瞬で見下された。

 はっ! と笑った女。

「……………」
 ………ああ、レランのほうが扱いやすい………

「ご愁傷様」
 笑顔で、言われた。

 セイジュは、自分の予定は破壊されたことを悟った。―――もう、遅い。

 自分の目的を簡単に壊して、さらに人に話をさせた女はグラスをあおった。まだ飲むらしい。

 ―――夜は、長い。

 まぁ、逆らってあとで“王子”に睨まれるのは、目に見えている事だ。





 正面でついたため息は、意識を過去につれてった。






「お前らどっか行ってろ」
「……………」

 初仕事? 初任務に向かう前の一言がこれだ。

 どうやら、朝から王子は勉強に入るらしい。――――その間は、唯一の自由時間といっていい。と、しておこう。
 王子とノーザイス様がいる部屋に、別の護衛がついた。その部屋には護衛がいつもいるらしい。二人のいる部屋は城の奥。部屋の中こそ二人きりだが、外は異様だ。――――兵士の数が。


「…………」
「……。」

 レランは、それでも待つらしい。壁に背を預けているが、どうやら警戒は解いていない。
 俺は、さっさと部屋を背に廊下を進んでいった。

 あまりに対照的な態度に、部屋の前で護衛するこの城の兵士は呆然だった。
 レランの好意的でない視線を背に、角をまがった。








(さて、寝るか)

 ここは、“庭”。もちろん、この城の庭の数を数えるほうが暇人だ。
 大小さまざま、日陰日なた庭園、王妃専用、花園――――

 俺は、城の裏。三番目に“裏”といったことろか。こちらまで来た賊はいまだかつてないそうだ。
そこにある城壁近くまで木の枝が伸びた大木の上に登って、寝た。


 ――――よく寝てはいたが、“警戒”しなかったわけでもなかった。しかし、
「―――?」
 ふって湧いたような気配に、いぶかしく顔を向けると、

「――っ!」
 “王子”がいた。


「―――“かくれんぼ”は、得意ですか?」
「あ?」

 一瞬呆然と王子を眺めて、そして次に口をついた言葉。俺自身は驚きに口をついたのだが。
そんな俺を、王子は心底不思議そうに見て止まった。

 木の上、太い幹に体を預ける男と、細い枝に座る王子。




 ―――何か、考え込んだ王子は、俺にあきれたらしい。


 ………アホかお前?
 顔にそう書いてある。

「……………」

 沈黙するうちに、王子は枝と枝を移り、一番城壁近くまで届きそうな枝の根元に立った。

「王子?」
「―――――」

 にやりと、何かを含んで王子は俺を見た。

 ………………わかりました。

 こめられた意味と考えの一端を理解して、俺は言った。

「いってらっしゃいませ」

トン!

 ―――王子は、枝を走り塀に飛んだ。

ズザァァァアー――

 …………慣れているらしく、着地は見ていて見事なものだった。

 それから、塀の壁をつたわって、王子は、反対。――――城の外、城壁の外に消えた。
「………………」




 やってきたレランには、空を飛んでいったと言った。

「…………」

 真面目な男は、相手をしていられないと歩き去った。もとい、“城”に帰った。



 ――――問題は、王子が帰ってきたあとになってからも、昼寝していたことだな。わざわざ、俺の隣をまた通って城に戻ったのは知ってたが。


 初日から何もせずに寝ていたので、あやうく切り殺されるところだったさ。







「あ、これおいしーー」
「…………」

 ふと、そんなことを考えている間に、追加で来た料理も食い尽くされた。
「…………」
 もう遅い、財布の中身を心配するのですら。


「……………」
 まぁ、“王子の女”と思うべきだろう。

 ―――つまり、どんなに非常識でも納得できる。




 行動も家柄も性格も。大胆さも不敵さも勝ち誇った態度も強さも。言葉も話も考えも。
 …………あげても切がない

 ――――そう、結論づけた。


ガダ
 椅子の引かれる音に、意識を戻した。


「お願いしま〜〜す!!」

 さらに、いそいそと注文を増やす女。



 ――――それから来た酒と食べ物は、俺と女の隣に座る王子と護衛の嗜好をよく知ったものらしく、二人は女の注文に口を挟むことはなかった。
 ……………なんでいるんです?

 ま、きっと女を捜しにきたらしい王子と、その護衛。



 ―――いまだに、王子によく逃げられる男は不機嫌だった。








「お前、そういえば何をしてるんだ。」

 …………王子の、とりあえず場をつないでおこうかなというぐらい。困ったら天気の話でも持ち出しとけ。と、言うように言い出した言葉は、明らかに女と二人きりでいたことに対して言っている。

 ――――やばい、怒らせた?





 基本当たり障りなくやってきた男は、初めて自分の行動を悔やんだようだった?











続 俺の主はこんな人







日吉さんへ Present for you 品第一弾!
でもさ〜今じゃーねー………だいぶフライング……

「セイジュさんいい!」
というお言葉でしたので、セイジュの話にしてみました。

まぁ、リールを出したいがために現代につなげてみて………てか、本編との時間軸を考えるとむしろ未来?

そのころにまた書くよ。さーて、誰を出すか………
やっぱり番外な今日この頃。(本編進めろや)



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