リール一人旅〜思いだす〜


 部屋の窓のカーテンの隙間から、日の光が、そしてガヤガヤとした人の声 が聞こえる。ここは町の大通りに面した二階建ての宿屋だ。その中にある小 さめの一人部屋で、窓が一つ。もう昼すぎだというのにまだベッドで寝てい た人物は、町人の活気ある声に起こされ、大通りに面したこの部屋に案内し た宿の主人を軽く恨んだが、起き上がった。

 窓を開けると、人の声が風となり髪をゆらす。
 窓の下に広がる景色を、窓際にひじをつき眺める。あえて、振り返るのを 避けるように。



 ずっとそうしてもいられない。伸びながら振り返ったリールは、ベッドの そばにある小さなテーブルに置いてあるペンダントを眺める。小さな水晶の 光は、リールの心を晴らさない。



 あの後。カイルと別れて数日後、レランが馬を走らせ森の前にやって来た。

「エアリー・リール。出てこい」


「………何しに来たのよ」
 レランの声を聞いたルチルクォーツに、自分の呼びだしを聞かされてやっ て来たリール。レランはその言葉を聴く気はないのだろう。いきなり紙袋を 投げつける。

パシッ
 なんなく受け止めたリールは、ガサガサと開けて中身を出す。
ジャラッ
 取り出したのは片手ではあまる大きさの布袋。紐で口を縛ってある。中身 が何か考えなくても、リールにはわかる。
 次に出てきたのは半分に折りたたまれた紙。丁寧な筆跡で一言。

【どうせ万年金欠だろ】

グシャッッ
 勢いよく紙を握りつぶしたリールは、ポイッっと後ろに投げ捨てる。
 最後に出てきたのは小さな袋、手のひらに乗るサイズの紙の袋だ。
 開けてみれば、先に水晶がついているペンダントが入っていた。
「あの時の……………」
 石の光を見ればわかる。カイルが湖の底から採った水晶が、リールの手の 中にある。

 しばらくペンダントを見ていたリール。そのせいで、レランが馬を走らせ て帰って行く姿に気づいた時には、もう遅かった。
「…………………返品不可?」
 すでにレランは豆のようだ。
(あれ(レラン)もつくづく苦労性ね。)
 リールが中身を確認するのは見ていたはずだ。そして、リールにこれを渡 すためだけに、ここ(デンスネス)まで馬を走らせたのだろう。命令で。きっ とカイルは、普段とかわらない口調で言ったはずだ。

 それこそ、「渡してこい」の一言ぐらいだろう。


 そしてセイファート。彼はリールが森を出るとき、人差し指の先に生まれ た光を水晶の中に宿した。
「ヴォルケーノにあった時、渡してくれ」
「………………………」

 普通に道を歩いていて、聖魔獣にあうことなど皆無(かいむ)だ。


 捨てるに捨てられない水晶から視線を外し、服を着替える。剣を刺し、ネッ クレスをかける。今日この町を発つ予定だったが、とりあえず食事だ。持っ ている荷物をすべて持ち部屋を出た。

―――――――階段の踊り場にあった小さな鏡に映る自分を見たとき、リー ルは水晶を服の下にいれていた……。


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