再会 〜再び、共に〜


(せっかく王都に居るのになあ)
 かなしいかな、財布の中身は多くない。
(さて宿はドコ? 泊まれるかどうかは別問題)

 周りは人人人である。左右には店、露天商、観光客。ここは繁華街の一つである。この国の特産品だけでなく、他国の品々も見ることができる。呼び込みのお姉さんをかわしつつ、旅のいり用品のチェックを怠らない。

(ま、国を出るときでいいか)
 人にぶつからないように歩きながら、昼ごはんに買ったパンの最後の一口を飲み込み、通りを眺める。

 瞬間、前から来る男が剣をぬき赤ん坊を抱く母親に斬りかかった。

キィン
 考える間もなくリールは男の剣を自分の剣で受け止めた。

「キャー!!!」
 周りは大騒ぎである。二人の周りにいた通りの人は、みな遠巻きに二人を 見ている。

(何なんだこいつ)
 往来の真ん中で人に切りかかろうなど普通ではない。
(って思っているのは私だけ、なんて落ちじゃないでしょうね)

「……なぜ邪魔をする」
 舌打ちをしながら男が苛立ちを隠さず言う。
 リールは考えを打ち消し目の前の男に意識を集中した。頭から足首まですっぽりと覆うマントのようなものを着ている。顔は深くかぶったフードで見えないが、あんがい若いのではと思う。

「なにそれ。あたりまえでしょ」(こんなところで人殺しなんてさせるか)
「女にしてはやるな」
「そりゃどーも」(だからなんだっての。でも……)
 リールは歯を噛んだ。こんなところ(大通り)で剣をぬいたのである。

(腕に自信があるかただのバカか……)
 うれしくないが前者であろう。

「きづいた事はほめてやろう。だが、詰めが甘い」
「は?」

キン

 リール剣の剣をはじき返した。

「な!」
 男はリールが驚く間もなく人ごみに向かって走り出す。
 そしておそらく大勢が見ていただろう人垣を飛び越え、見えなくなってしまった。

「なんだったんだよ……」


ガチャン!
「は?」
 左腕に重さがきて、見て見ればかせが。周りにはおそらくこの国の警吏であろう軍団。
「キサマか往来で剣を振り回しているというのは!!」
「え!! ちが、私じゃなくて……」
「キサマ以外誰がいる!!」

(「詰めが甘い」)
 言った男は逃走中。

(あのやろう……)
 周りの人はかかわりたくないのか人垣が人ごみになりつつあった。
「振り回したのは私じゃなくっ……」
「じゃあそれはなんだ」
 右手に持つものそれは剣。
「…………あれ?」
「ちょっときてもらおう」
(マジ?)
 リールが考えたのは、逃走手段だった。

(人数多!)
 周りの隙をうかがう。とそこへ

「長官」

 耳に響く声がした。
(え!?)
「なんだ」
 声に驚き顔を上げれば、そこには……

「カイル!!」

 かつて一緒に旅をした、仲間がいた。




「ひさしぶり」
 通りの一角の食堂でお茶を飲みながらカイルは言った。リールの腕をひっぱり、半(なか)ば強引に食堂に連れて来て、頼んだお茶が来たところで口を開いた。
 昼過ぎということもあって、テーブルに座る人はほとんどいない。

 なぜかあの後、カイルの一言で警吏は皆行ってしまった。

「彼女は知り合いだ」

(なんでだ?)
 普通ならとりあえず取調べだろう。しかし、カイルの名を出した私を、驚愕とも驚きとも言える目で見ていたのも事実である。
(????)
 目の前にいる人物に聞けばいいものを、リールはだいぶ混乱していた。

「リール」
「っっはいぃ!」
 目の前の人物がやっと認識できたようである。
「ってあんた!何なのよいったい、こんなところで出てくるし! 捕まりかかるし! ……」

「ひさしぶり」

 聞いていない。


「……本当に。まさか会えるなんてね」
「まあそうね……」
 ふとカイルの身なりを見る。さっきの警吏とは違うが、大き目の襟にボタンの多い上着に、ズボン。紺色で統一されたの動きやすそうな型の服に、剣をさしている。

(ああ剣は変わってないのね。相変わらず髪長! そして剣も長いから!!)
 腰まではありそうな髪を後ろで縛っている。そして、装飾が施(ほどこ) された剣も長い。

「………………」
「………………(むっ、無言だ!)」

「っなんかひさしぶりねっ!なんでここにいるのよ?」
「それはこっちが聞きたいがね、ここは俺の国なんだが」

「へ〜そうなんだ」

「………………」 
「………………」

「今日はどこに泊まるんだ?」
「まだ決まってない」
「じゃ、ちょっとこないか?」
「?」



「え〜と……?(ここはどこ?)」

 城下で馬車乗り、(馬車の中ももちろん無言。)降りれば目の前には城。

 四大大国の城だけあって大きさも警備も半端ではない。そびえ建つ城はさらに塀に囲まれ、堀で埋まり、すでに通ったが後ろには頑丈な門がある。
 そしていったいどうやって上に上がるのかという勢いで高い塔が四つ建ち、真ん中にもう何年もの歴史をもちつつも、いまだ壮大さ衰えないグランディア城がある。

 馬車の中では、外を見られないように窓のカーテンを閉めてあった。
(もちろんカイルが)


「行くか」
「うん! ……ってそうじゃないわよ! なんなのよドコよここ!!」
「城だが」
「んなもんみりゃわかるは!!!」
「じゃあいいだろ」
「いいわけなっ!(何考えてるのよこいつ)」

 怒鳴りつけようか考えたその時

「エルカベイル様」「王子」
 何処から現れたのか数人の男たちが集まってきた。
「お戻りに。本日はどうなさったのですか、警吏長が申すには取り調べの女と…」
「セイジュ」
「はい」
「部屋を一つ用意するように手配してくれ。」
「はい」


「じゃ行くか。」
「だから何処に!!!」


※ ※ ※



 どこまで行くのかわからないリールは、カイルについて行くしかない。

 歩く廊下は広いというか幅と長さがある。外見もみごとながら、中も派手すぎず控えめながら、美しく飾ってある。
 リールは常に左右を見渡していた。

 入り口からすんなり中に入り、迷わず前を行くカイルに送れずついて行く。さっきの男たちのうち一人が、後ろについてくる。


「………王子?」

「今頃その反応か?遅いだろ?」
「だれが?」
「俺が」
「ドコの?」
「ここエルディスの」

「王子? …………はぁ!?」

「予想通りの反応をありがとう。さっき言わなかったか、俺の国だと」
「聞き流したわ!!」

「ああここだ」
「聞けよ!」

 怒りつつも、カイルの視線の先を見れば、目の前にはどでかい扉。

(すご!)

 廊下の床は鏡のように磨かれ、壁には絵や紋様が刻まれ、ところどころに花や絵が飾ってあったが、目の前の扉に刻まれた紋様は、一段とすばらしいものだ。

(平凡な感想。)
 リールの知る言葉では表しきれないほど美しい紋様の刻まれ方だった。

 横の立つ二人の兵士が、カイルに一例をし、扉を開ける。開けた扉の先には…


「戻ったかエルカベイルよ」
「はい父上」
 玉座に王が座っている。


(はぁーーー!!?)
 入り口で固まっているリールなどまったくきにせずカイルは先に進んで行く。

 おそらく謁見の間であろう部屋(部屋と言えるのかわからない広さである)には、玉座に王が座り、二人の男が控えている。

 リールがいるところから王のところまでは、ゆうに50mはありそうである。
 カイルは黙々と進み、王座の手前にある階段の前で止まり、二人は話をし始めた。


(で、どうしろっての?)
 とりあえず固まっている場合ではない。視線を変え部屋を見渡す。部屋にはゆうに20人は兵士がいる。しかし、みな一様に視線は王から離れない。リールから見て左手には窓が、右手には扉が二つ。玉座の後ろにも入り口がある。

(あれ?)
 そんな中視線を感じ見渡せば、ちょうど右手の別の扉から一人の女の子がリールを見ていた。歳はリールと同じ、いや少し下かもしれない。金の巻き毛を腰まで伸ばし、青いドレスに身を包んでいる。

(王女だよ。いわゆる王女だよ。かわいい子もいるもんだ)
 ふと目が合うと目をそらされた。

(ありゃ。……泣いていた?)
 目が潤んでいたのは気のせいだろうか?

(つーか泣き出しそうって感じだな)

「してそこの娘よ」
「はぃ?(なんだよ!)」
 そんなことを考えている中、突然話しかけられたのでだいぶ喧嘩腰になってしまった。

「………。(ああ……周りの視線が突き刺さるようだ……)」

「近くに」

(なんていうか死刑台に上る犯罪者?ものすごい視線が……。50mがこんなに長いとは思わなかったよ……)
 カイルよりやや後ろの左に立つ。……また視線が。
(私を射殺すきか!! 座ればいいんでしょ! 王に敬意を表せってか?)
 ひざを突き頭を下げる。


「知り合いか」
「昔の仲間です」
(仲間ね。……二人旅だなんて口が裂けても言えないわ)


 結局、その後もカイルと王が話し続け、私はずっと下を向いているはめになった。

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