再会 〜問いかけと救い〜


 今や森は動く、大きな怒りに二人はまとわりつかれる。しかし、リールに はこの方が落ち着く。怒りがあることは、感情を感じるもの(生き物)がい る事だから。森が、自分が、生きているから。前のように何もないと自分の 存在も忘れそうだ。
 カイルは歩きながらまた剣を抜く。リールは自分の剣を抜かずカイルに聞 きたかった事を聞く。

「あんたさぁ、あの子とうまくやってるの?」

ガシャンッ!!!
 カイルは剣を取り落とした。
(動揺したぁ!!!!!!!???)
 リール呆然。

「グルルル………!!!!」
 そして第二ラウンド
 さっきの倍はいるだろうか、歩き始めた後、確実に数を増やしつつ木の隙 間から襲い狂う機会を窺(うかが)っていた。
 そして、どうやらこれ以上待ってくれないようだ。

チャキッ……
 カイルは剣を持ち直し、リールは剣を抜きかまえる。

「……ガウッ!!!」
 獣は、一気に襲いくる。

ザシュッ
 肉の切り裂かれる音がする。二人はまた背中合わせだ。今度はカイルも、 あえて急所をはずす。


 半分戦闘不能にしたころだろうか。

「話をした事がない。」
 ふとカイルは言う。うなり声と剣で肉を割く音がする中、会話が始まる。

ドオッ
 足元に転がる。二人は獣の死体が積みあがらないように同じ速さで左右に 動いている。

「まったく?」

ザン ドッ
 同時だ。

「ああ。」

ギンッ
 ある獣がカイルの剣を噛む、牙がこすれて耳障(みみざわり)な音がする。

ドカッ
 足で蹴り飛ばす。

「あんた一年あったんじゃないの?(私と別れて。)」
 剣の柄で額を突き、鈍い音を立てながらリールはいやな予感を感じていた。
「まあな」
 カイルは左右二匹同時に現れたところを、両手に剣を持つ事で切り抜ける。

「なんにも話してないわけ? 挨拶とかあるでしょ!? ―――(12!!)」
「廊下ですれ違っても向こうが軽く頭下げるぐらいだからな。」

(おいおい………)
 だいぶあきれてしまう。しかし、容赦なく襲い来る獣に切りつけるのは忘 れない。
(いったい何をやってるんだこの男)
 リールはティアイエルの心境がわかり始めたような気がする。

「何を話すべきだと思う?」
 脱力しつつも、あきれつつも、応戦していたリールの行動が止まった。
「……………はぁーーーー!!!!!!?????(何言い出す んだ!! つかありえないだろ!!)」

 自分の婚約者に話しかけたことがないって。

 リールは襲いくる獣の存在を無視してカイルのほうを振り返る。
「話す事がないな」
「お前はアホかーーーー!!!!!!」
 叫ぶ。

 彼女(ティアイエル)の性格上自分から話しかけないだろう。というか、 カイルはまじめにしているとだいぶ話しかけにくい分類にはいるはずだ。

「それでいいのかよ!!!!」
「彼女に会う前まで二年間、一緒にいたのはお前だぞ」

☆ジャジャーンッ☆只今より「リールとティアイエル(以下ティア)の比較講座」をはじめま〜す☆ ☆この講座では、リールとティアの行動・性格・その他を比べてみま〜す☆

☆わかりやすくまとめて☆
・・・リールティア
食事 食べる少食(カイルが見てないところで食べるのは別にする)
しゃべる(うるさい?)自分からあまり話さない
第一印象? 変な女なんだこの女
キレやすさ けっこう早い怒らない…?
行動 とりあえず動くおとなしい
性格 執念深いうえに根に持つ内気
モットー 出されたものは食べる参考なし

☆提供はカイルさんで〜す♪ ☆さあ以上からお二人の事をそれぞれ一言でまとめると〜……



「何あんた私にケンカ売ってるわけ!!? ええ゛!!! 何が言いたいのよ!」
 リールにカイルの考えが伝わった。そしてキレた。
 リールは右からやってきた獣の頭をなぐりつけ、カイル胸倉を引き寄せつ つ怒(いか)る。

「5000ガルで。」
 一方のカイルは見事な切り返し。
「高いわ!!!!!」     

1ガル=200円

「ガウッ!!!」
 リールの背後から襲い来る獣に対し、カイルから手を離し斬りつける。少 し深いが気にしない。カイルもまた自分に襲い来る獣に切りかかる。二人の 間では、複数の獲物を倒す時は数を半分に分けるのがルールだ。

「でももう一年でしょ」
 どうやらあまりにリールの存在に慣れすぎたようだ。リールとティアイエ ルのギャップに、ついていけなかったのだろう。リールにしても、二人の時 の旅と一人になってからはなれなかった。初めは一人のはずだったのに。
 どちらとも、悄愴(しょうそう)を感じていた。


「で、何しに来たのよ」
 すべて二人を追う事が叶わないように叩きのめした獣に目もくれず、さっ さと森の深奥へと進む。勝手に行くリールに、今度はカイルが着いていく。

「――――今度の木曜日、」

 リールの目線が外れた。カイルにはそれで十分だ。
「彼女が来て一年だ」
 リールは話だすカイルに耳だけ傾ける。いつの間にか二人は並んで進んで いる。リールの歩みのためにカイルが、カイルの速さにリールが、足の進み を合わすわけではない。二人は自分のスピードで歩く。

 並んで。

「で?」
「ちょっとな」
 話したくないのか話す気がないのか。どちらにせよ、これ以上聞いても無 駄だ。リールは森を見る。

………ツ!! ………
 リールに聞こえた音、叫び声。
(「カナシイ。タスケテ」)

 突然、走る。カイルは驚いたが、リールが何かを感じ取った事はわかる。 後ろに着いて行く。



 走るリールはまた声を聞いた。深く低く響く声を。今度はカイルも何かを 感じたようだ。いぶかしんでいた顔が先を見つめる。
 二人は、目の前に広がる森の茂みに迷わず入り走り続ける。

ガサァッ!!!!

 押し分けた茂みの先に広がっていたのは、少し開けた場所だった。形とし ては楕円に近い形に木が周りを囲み、何種類かの花が咲き乱れる。もちろん ここはエルディスの土地であり、地に咲く花は見たことあるものばかりだ。 しかし、カイル口からは感嘆の声がもれる。この森の中で始めて咲く花を見 るからだ。

が、リールの視線は別にそそがれている。中心にいる者。声の正体に。見れ ば、ルチルクォーツの親子ではなかろうか、先ほどまでカイルとリールの攻 撃相手と同じぐらいの体格の者が母親。もう一匹はリールでも抱えあげられ るだろう大きさの子獣だ。

 横たわり、動かない子獣のそばで、母は必死に声を上げる。――――なぜ?
 助けるため。自分ではどうにもならないのだろう。悲しみの咆哮(ほうこ う)が森をゆるがす。木がざわつき、風が行き場を失い旋廻する。咲く花は 風に薙(な)ぎ倒される。日の光は、無常なあつさで冷静な判断を失わす。


 その親子をずっと見ていたリールは、動かず、息も絶え絶えの子獣に向か い歩き出す。

「おいっ!」
 あわてたカイルの声がする。
「ガウッ!!!!」
 近づいてくるリールに気付いた母親は威嚇(いかく)を始める。リールは真っ 直ぐに動かない子獣に近づく。

「ガァウッッッ!!!」
 母獣は全身の力でリールに体当たりをする。

バアンッ!
 弾き飛ばされ、背後の木に直撃する。「ダッ!」っと苦痛を感じた後。 ズッッっと木の下にずり落ちる。
 リールには、母獣の存在は目に入らなかったのだろうか。特に避けるわけ でもない。正面から容赦なく襲い来る獣の攻撃を直に受け、木の下で座り込 むような格好でリールは痛みにうなる。
 呆然とリールが叩き付けられる光景を見ていたカイルは、我に返った。
「大丈夫か」
リールに走り寄る。
「……ツー」
 声に反応したリールは痛みに拘かかかかわらず、頭を上げる。視線の先で、 母獣はまだリール達に警戒の目を向ける。
 子獣を後ろにいつでも攻撃できる態勢だ。

 リールはギリッと歯を噛んだ。
(早くしないと……)
 明らかに子獣の様子がおかしい。
 自分に何が出来るか……。リールは苛立を感じていた。腕からつたう血で 汚れた手のひらを握り、カイルの呼び声にも答えることなく考える。

(落ち着いて、冷静に)
 肩でしていた息を抑え静めつつ、初めて辺りに目を向ける。チラッと見た 先にある物に目が留まる。リールの行動を不審に思っていたカイルもリール の視線の先を見る。

 そこには、鐘形(しょうけい)型のストロベリーピンク色の花が咲く。花 の咲く所は一列に並び、並んだ花が穂のように直立する。上から下に行くに つれつぼみが開いている。薄緑の葉は刃針形で、先端が鋭く尖(とが)る。

(何の花だ?)
 なんとなく見覚えのある花にカイルは思考思考しこうする。木の周りにと ころどころ咲く花、背丈は50cmくらいだろうか。

「メルトネンシス」
 その花から一時も目を離さなかったリールが、静かに呟(つぶや)いた。
「メルト……?」
 聞き咎とがとがめたカイルは、さらに思考する。聞いた事のあるような響 きだ。
―――昔に。

ガッッ!!!!
 突然行動を起こしたリールは、一本の花を根元から折る。手にとった花を 見た後。痛みを殺し立ち上がる。

「グルルルルル……」
 立ち上がったリールを見て、母獣はまた突進せんばかりだ。

母獣を見据えていたリールは歩き出す。一歩、また一歩と。特に早いわけ でも、遅いわけでもない。淡々と歩いているようでも前を見据えている。突 進しようと前足を進めた母獣に言う。
「助けたいんでしょう」
「ガウッ?」
 母獣の動きを一瞬止めたようだが、こちらに向ける敵意は変わらない。
 リールの前に改(あらた)めて立ちはだかる。

「邪魔をするな!!!」

 ビクッッっとリールの威勢(いせい)にひるんだ横を、見向きもせず通り 抜ける。
「!」
 リールのただならない雰囲気を感じ取ってはいたカイルではあったが、さ すがに獣一匹止める行動に驚いている。


ストッ
 子獣の所に歩いていったリールは、横に膝をつく。横向きの子獣を仰向け にして、口に手を当てる。浅い息を繰り返していたように思えた子獣は、ほ とんど息をしていない状態にあった。

パクッ
 リールは手に持つ花と葉を噛み砕く。

「待てよ!! 確かそれは!!!」
 それ(メルトネンシス)が何なのか思い出したカイルは、あわててリール のそばに走りよる。
 リールは、荷物の中から取り出した小瓶の中に入っている液体を口に含み、 噛み砕いた物とともに仰向けに寝かした子獣に口移しで飲ませる。

 メルトネンシスのことを知る母獣が我に返り、カイルを突き倒す勢いで リールに向かい走り出す。しかし、母獣は、そしてカイルさえも、リールの 睨(にら)みにまたも動くのを抑えるしかなかった。

 コクッと子獣が液を飲み干したのを確認すると、リールは状態を起こした。 そして……
「おい!!! 大丈夫なのか!?」
 カイルのあせった声が聞こえたのかもわからない。後ろに倒(たお)れこ むリールは、気が遠くなる事は感じていた。


 あんなにも騒(さわ)いでいた森が静まっていた事など、二人は気付きも しなかった。

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