三人 〜発見〜


 カイルとレランは町の通りを歩いていた。微妙に、レランが後ろを歩くの は変わらない。
 町に入ったカイルの結論は、「とりあえず、食事だろうな」と。という事 で、二人は食事のできる店を探し、巡っていた。六番目の宿屋の看板が目に 付いて、入り口まであと少しというところ、

ドガシャーーーン!!!

 それなりに重量のあるはずである扉が、派手な音を立てつつ突然開かれた。 通りを歩く人々はまばらだったが、皆行動が止まり、視線が出てきた男に、 いや、開かれた扉の先の影に集中する。すでに男はのびている。投げ飛ばさ れたか蹴り飛ばされたか突き飛ばされたか。
 呆然(ぼうぜん)と、男と影を見比べる。

「な!! なんだお前!」
 なんとか気がついたらしく、(いいのか悪いのかすごいのか)男は扉の中 に向かって叫ぶ。
「あ!?」
 中に見えていただけの影は、不満そうに声を荒げて現れた。

(お前か…………。)
 レランは自分の勘(かん)を呪った。

 開かれた扉をくぐって女が現れた。――――もちろんそれは、

エアリー・リール。


「ひ!」
 出てきた女の顔を見て、男は短く悲鳴をあげた。
「……なんだって………ああ!!?」
 低い階段を下りたリールは容赦なく男に向かい進む。正直怖い。
「え? ひ!? ……あ、いや……」
 男が取り付く暇もない。
「真っ昼間から酒なんか飲みやがって………まぁそれはいいとして、」
 後ずさりする暇もない。
「私の食事を邪魔するなんて………。」

「終わったな。」
 カイルは一人つぶやいた。――――レランには聞こえたが。

「そ・れ・で!」
 ダン! と男の足を踏みつける。
「あぎゃ!」
「なんだって………? 酒に酔って邪魔しやがって……」
「な! なんかお前に関係あるか!?」
「ないわ!!!!」

ドゴッ!
 トドメといわんばかりにトドメさして、リールは店の中に戻った。



バァン!!
 開いたときと同じように、荒々しく扉は閉じられた。

「………………。」
「………………いたな。」
 勢(いきおい)よくリールが閉じた扉を見ながら、カイルはレランに話しか けた。
 動かない男を前に、通りの人々は閉じた扉を見続ける。―――――――男 が二人、入るまで。

 気絶した男はほっとかれた。



ガダン
 リールは席に戻った。
 店の中にいる人々は、呆然とリールを見るしかない。

「…………ねぇ。」
 まわりの沈黙を、さらに緊張させてリールの声が響いた。
「それ。」
「え!? ……はい!」
 ビ! っとリールは料理皿を指(さ)す。それは、リールが頼んだ料理の二 品目。
「あ! え!? お! お待たせしました!!」
 あわてて女の子が、前の皿を片してテーブルを拭き、新しい皿を置く。
……こぽこぽ…
 コップに水足して、戻っていった。

「………いただきます。」

―――しきりなおし?
 ちなみに、騒いでいた団体はそうそうに退散していた。

(…………ほんっっっとに……。)
 スプーンでピラフを口に運びながら、もくもくと食べる。

ゴクゴク

 左手に持つコップに力が入る。

ミリッ
 不吉な音を立てような………

だん!
 コップをテーブルに叩きつけ、一度も放していないスプーンを口に運ぶ。 とそこへ………

「あいているか。」
 聞こえた声の先を無言で睨みつければ………

ガシャ!!!

 落ちたスプーンと皿が合わさって、耳障(みみざわ)りな音が響いた。

「…………………………。」

 右手に持っていたスプーンを取り落として、リールは目の前の人物から目 を放すことができなかった。
 さっきまでの怒り具合はどこへ?固まったように動かない。

(………動揺しているな。)
(動揺してる動揺してる。)
 そんなリールを見ているレランとカイル。

――――――……………。
 店の中の人々が心配になるほど、リールの行動は止まっていた。

(叫びだすか、切れるか、逃走。まぁこれぐらいだろう。)
 リールは次にどんな行動を取るでしょう!? をカイルは三択問題にしてい た。

「………………………は?」

 あ! 動いた。その場にいた全員が思ったことだろう。かなりまぬけな声を あげていることに気づいているかどうか。

「――――――ちょっとこい!!」
 立ち上がったリールは、レランを強引に引っ張って店を後にした。

……………………。
 呆然と光景を眺める店の中の人々。………………残されたカイルは、とり あえず席についた。




「なにやってんのよあれはーーーーーー!!!」
 裏路地の一角で、リールはあらん限りの声で叫んだ。

「ちょっと! 説明しろ!!」
「私にきくな。」
「ってゆーか!説得しろ!!」
――――――こんなところに来ないように。

「できるなら私がしている。」
 お前に言われるまでもない。

――――じゃぁなんでいるのよ。

「説得して!」
「お前が言うことか。」
 レランは迷惑そうにリールを見ている、なぜ、お前の相手をしなければな らないのかといわんばかりに。そして、原因はお前にあるとばかりに。

「え〜〜………ぇ……。」
「…………………。」
 言葉もでないリールを、レランは容赦なく置いていく。

「………………。」

―――――モドル。
 それしか、リールの選択肢はないように思えた。



「…………あんたさぁ。……なんで人の料理食べてんのよ!!」
 自分の荷の横に戻ったリールが見たのは、注文すべてやって来た料理を食 べているカイルだった。

 基本的に、カイルは自分から食事をする事はほとんどない。城にいれば無 条件で出てくるし、リールといれば目の前で大量に平らげるし。目の前に出 されたら食べるだけであって、何もなければそのまま食べずに一日でも三日 でも過ごすだろう。さすがに一週間もたてば何か口にするだろうが。独りで ほっとけば食生活はどうなる事やら。

 すべてと言ったが、ようは適当に皿の中身を平らげているのである。ある ものはあと半分、あるものはあと少し。あるものはほとんどある。といった 具合に。
 しかし、リールの注文した料理の量は、普通なら三人前は軽く超すだろう。 カイルだってそんなに食事量が多いわけではない。

(これだけ一人で食べるきか。)
 レランはあきれを通り越して、無視する気にしたようだ。

ガタン
 リールもレランも席についた。店の中の人々は、あまりの目まぐるしさに 付いて行けていない。

「あの〜……」
 おそるおそるといったように、男の一人が声をかけた。
「………………。」
「なんだ?」
「――――――。」
「これを……。」
 それは、さっきリールが食べ損なった料理。
「皆さんでどうぞ……。」
 なんとなく何が起こったか想像したカイルは薄く笑った。
「それはどうも。」

 それから三人でもくもくと食べ続けた。――――――――誰も何も話さな かったが。

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