「はい! お母さん!」

「…………リール。貴女、また森に行ったのね。」

「?」

 目の前には森しかないのに、その言葉にリールは首をかしげた。

「―――――そうね。遊びに行くにも町に行くにも森を通るしかないわね。」

 ここは、シャフィアラの王都島。でも、この家がある場所はとても特殊(とくしゅ)だった。


 小さな小さな二階建ての家が、森の中に。


 看板に掲げられた文字は、この島で一番の権力者の名が下がっている。
 小さな家に不釣合いなほど立派な。

 ――――エアリアス―――





 小さな少女







「う〜〜〜〜〜………お母さん!」

「どうしたの?」

 なぜか、リールはきーーーと怒ったままである。

「ごめんなさい、リール。でも、貴女が薬草を取りに行かなくてもいいのよ。――――誰かと、遊んできたら?」

「イヤ。ザインは。」
 即答か。お前。

「――――えっと?」

「いいの!!」
 そう言って、少女はバンと机を叩いた。

「私が行きたいの!!!」

「……………リール。」
 行かなくてもいいのに。――――――誰かを、陥れる薬を作ることに。いつか、なってしまうのだから。誰かを、病ませることに……………。

 どうか、この子が。

 腐敗したこの島をいつか、抜け出せることができないものか。

 笑顔で採ってきた薬草。手に腕に、何故か足にすら。いくつものきり傷と、すり傷があるのがわかった。――――服もどろどろ。


「――――リール。」

「なあに?」

 さっきまで怒っていたと思ったら、私の言葉にもう笑顔で振り返る。

 ―――――いつか、貴女に話さなければならないことはとても多いけど。――――真実。

 ………時は、何時?

 いつか、何時か。

 その何時が、少しでも遅く来ることを。



「さぁ、着替えてきて。お父さん迎えに行ってきなさい。」

「ホント!!? 行ってくる!!!」

「――――待ちなさい! リール!! 着替えてコート着て! 雨が降りそうだから傘もって行きなさい!!!」

「はーーーい!」



 その声が、何時までも響くことを。





 時が来るまで、まだ時がある。

 ―――――本当に?





「いってきま〜〜す!」

 明るい声は小さな家の中では、よく響く。





「はぁはぁ!!」

 道を、走る。
 その身に不釣合いなほど大きな傘を持って。


 やがて、小さな影が見えると、少女は手を振った。―――――傘がずり落ちた。

 止まって、拾って。

 さらに、走った。


「お帰りなさい!!!」

「うお!!」

 飛び込むようにしゃがんだ父親の胸の中に突進した。

「ははは! リール!! 元気だな!」

「ぅわーーい!」
 そのまま抱えあげられて、肩車をされる。高い視点で下を見て。リールはご機嫌だった。

「ねぇねぇ! お父さん!」

「どうした?」
 また、母親にでも……

「ひどいの! お母さんってば! 薬草を採りに森に行ったらダメっていうの!」

「……………」
 ―――――やっぱり。

「何故だかわかるかい?」

「? …………???」

 そんなこと考えもしないように、リールは身体ごと後ろに倒れてみたり父親の髪を引っ張ったり。

「おいおいおい」
 落ちそうになるリールを支えて、引っ張る髪を握る手を広げた。

「お母さんは心配しているのだよ。」

 そう言って、リールを地に下ろした。しゃがみ込んで目を合わせた。


 何時か、望まずとも自分の役割は回ってくるから。

 ――――過去の術を継ぐ者に、成ることができるから。


 この子には、こっちに来て欲しくない。

 だが、真実を知らないからといって、真実に関わることがない訳じゃない。

 知らないほうがいいのか。それとも。知ってなおここにいるのか。


 私が歳をとると同じく、この子は大きくなってゆく。


 時よ、止まれとはいわない。だが、せめてゆっくり進んでくれないものか。





「ただいまーーーー!!!」

 雨音に負けないくらい明るい声が、高く、響いた。







過去のお話でございます。もうね、友の子供リール絵がとっっっってもかわいくて!!
リール…これくらい純粋無垢だったんですよね…………
いや、カイルがあの性格まんまなのはまだ納得いきますよ。
でもね〜〜〜ああ、リール。これくらい純粋だったんだよね………
ああ、かわいらしい。
しかし、両親のイメージが固まってないのがよくわかる……

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