第11.5火



さてさて皆様

「おはようございまーす!」

よく寝ておいでですか? わたくし? そりゃもう安眠。快眠。熟睡ですよ〜〜寝坊? そうなんどもするほど学習能力は低くありません!! 本編は終わってますから、いつでもいいんですよ。いつでも。

ほらほら皆様、よく題名お読みになりましたか?

“.5”ですよ!! “テンゴ”!!

まぁ、はっきり言ってしまえばあほな鮗(このしろ)さんと国王の話ですな。さぁ、振り返って笑いこけましょう!!!

え? お前寝てただろって? ふふ、皆様。甘い、甘いです。お汁粉に黒蜜入れてもまだ甘い!! あ、余談ですがわたくし和菓子が好きです。こしあん。つぶあん? そんなの絽火に食わせてください。大喜びですから。

そう、甘いのです皆様。世の中には! 録画と言う便利なものがあるじゃないですかぁ!!!
録画ですよ。ろーくーが!!
さすが、文明の利器!!! 時代の申し子!!(?)

すばらしや現代。え? 時代が違う? 細かい事突っ込まないほうが身のためですよ皆様。








「………」

見えますかー皆様。いらいらと机を叩いている鮗さんが。どーっかで見た光景ですねぇーー大丈夫ですかぁ? ぶれてませんか? ピントあってますか? ん? あってる。よしでは進めましょう。はい再生。


「………」
 こつことつと机を叩いていた。もう、一時間。前回のこともあるが……遅い!! 何をしているあの小娘!!
 机の上に山となっている指南書を叩き崩して、部屋から歩き去った。





「静かだな」
「は?」
「静かだ」
「………。前々までこれが普通でした」
「……そうだったな」
 いつの間に、叫び続ける女の声が聞こえないのをいぶかしむようになってしまったのか。国王は薄く笑った。隣にいた嗄(かる)が驚く。執務室には相変わらず紙。紙。紙。これでもかというように。
「毎日毎日、よくもまぁ」
「……」
 ふと、嗄は思う。あの女火術師が来てからの変化――は多いが、一番不思議なのはこの国王だ。簡単に言うと、愚痴が増えた。――よく言うなら口数が増えた。思ったことを言う。などだった。と言うのも、あの術師の行動は一言では表しきれないほど特殊だ。なのだろうか。それとも―――

「どうした?」
「いえ」
「そうか。萩(はぎ)は相変わらずか」
「そうです」
「まったく、どうしたものか」
「………陛下」
「なんだ」
「あの方は、いつ動くのでしょうか?」
「俺にわかろうものか」
「ですが」
「黙れ。―――わかっている。来るべき時が来たら動くだろう。今は、あの女のために様子見といった所だ。まったく、まさか時間稼ぎまでしてくれるとはな」
「さすが、火谷一の術師――ですか?」
「そうは見えないがな」
 あんなじゃじゃ馬、見たことがない。
「ですが、兵士達も、そして」

「陛下!!」
 マントを乱した男がほぼ走るように滑り込む。いくぶん、だいぶ、怒り狂っているようだ。

「!?」
「――鮗。何事ですかノックもなしに」
「あの女はここに来ておりませんか!」
「あの女――絽火か?」
「あの小娘……指定時刻を一時間過ぎてもやって来やしない!! また逃げたのかと思い、調理場に行き、窓のカーテンをめくり、馬屋に行き、兵士を問い詰め、浴室を調べても、部屋に行っても、史書室に行っても、木の上を調べてもいやしない!」
 さぞや、指を指されてあの人あやしいーーとまでは言われなくても、見かけた兵士達は驚いただろう。必死の形相で怒りを表してカーテンを端からめくる鮗の姿など。わーー笑えない。まして、自分の上司だし。そして今は、もうお昼ですよ。いったいいつまで探してたんですか?

「絽火は……今日は樹木に森帯へ連れて行かれたぞ」
「…………は?」
「知らなかったか?」
 確か、伝えるように絽火に言っておいたが……確信犯か。

そりゃもちろん。絽火が伝えるわけないじゃん。「私がいない間探して疲れて疲弊(ひへい)するといいわ〜〜ほほほ〜〜」みたいな。

「夕刻には帰るだろう」

ちなみに、城の兵士は皆知ってたりしますよ。だって、あの絽火がいなくて静か。なんて、珍しくて広まる噂No.1!! ですよ。しっかし誰も言えないよね。そんなに必死に探しているのに、見つからなくて怒っているのに。「火術師は森帯に行きました☆」なんて。だって、自分が殺されそうじゃない? 鮗さんに。


「あの小娘……」
 怒りに震えた鮗さん。大量に課題を押し付けることにしたようです。ぅわぁ、怒らすと怖いなぁ。ちなみに絽火。本日提出の課題が終わってなかったから、実は内心ラッキーと思っていたのはここだけの話。

そのまま無理難題を押し付けるべく、鮗さんは史書室に走りました。ええもう、陛下の礼もそこそこに。あーーあ。そんなにしたら扉が軋(きし)みますからーー



「…………どう思う?」
「どうもこうも陛下。あそこまで鮗を逆上させられるのもあの術師だけですから」
「そうだろうな」








 窓の外は、赤く染まる夕焼けだった。

「……」
 城の廊下、左半分は中庭につながっている。どうやら鮗は自分の部隊を扱いているらしい。いつもより兵士達の叫び声が、たまに聞こえる。おいおい。それでいいのか。

まったくですよねぇーー憂さ晴らしは必要ですよーー絽火とまともに付き合おうとするなら。

 ようやく一段落した書類。休憩だ休憩。廊下を歩いている今でさえ、嗄の気配を感じる。最近まで大量にあった花瓶が減っている。特に、謁見室を飾る花瓶はわざわざ絽火が覗き込んでいるらしい。何をしているんだ? 何を。目の前の灯火(とうか)が音もなく燃え上がる。小さくても、暖かい火。暗闇に灯された火に、安堵の息をもらした事も多い。


「……」
 ふと、視線の先に見えた。“赤”。それは、夕日に染まった木でも、壁でも岩でもない。

「たーだいまー?」
「おかえり」
「ぅわあ!! 何よ誰よ!!?」
「…………」
「―――小娘ぇ!!!」
「げっやば!」
 遠めにやはり存在を感じたのだろう、鮗がホンキで走ってくる。さすが、早いな。脱兎のごとく、逃げ出した赤。

「待て貴様!! よくもばっくれてくれたな!!!」
「うるっさいわね! やってられるわけないでしょ!!!」



 また明日から、騒がしくなりそうだ。





そんな国王様と、待ちぼうけ鮗さんのお話でした。


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2006.11.29