第十八火 意外な事実



っは!? おはようございます。
いやぁ〜熱くって暑くって、なかなか寝付けない日々が続いております。これでまだ夏じゃないらしいですから、おかしいですよねぇ〜〜

それでもいい〜休息をとりました! レム睡眠ばっちり!

そしてまた夢を見ておりました。
城にある抜け道を通る国王様の姿です!! それから鳥と男性と女性です!

……あれ? 現実でしょうかねぇ〜?

さて、寝るか。

お前仕事しやがれ!? なにぃーー暴言ですよ! わたくしの職は特技のツッコミを使える職なんですよ!

じゃぁ突っ込めと!? 皆様。この話ツッコミ出したら話数超えますよ!!?






「陛下! 陛下っ!」
 二人と一匹のあとを、必死に追いかけてくる翠(すい)がかすれた声で叫ぶ。
「なんだ」
 たしいて、国王の声はそう変わらない。
「いったいどこまで行かれるのですか!?」
 もう翠の息も絶え絶えだ。
「知るか」
「陛下!?」
「お前は上には出るなよ!」
「ぇえ?」

 さきほど、翠から絽火の話を聞いて、目を伏せて一時思案した国王。
 その顔が上がると、パラに向かって言った。

「案内、しろ」

 それがどこで、誰の元なのか。
 すぐにパラは飛び立ってあの抜け道を通っている。

「……いったい、何が」
 前を行く火鳥は、あれから何も言わない。――言えないのか。



※ ※ ※



「お前が死んだら、私は火族を殺す事ができたという事になる」
「……」
「風族の、他の種族の力を、証明するにはいい機会だ」
 話を聞きながら、絽火(ろか)はずりずりと後ろに下がる。背が、木の幹に付いた。
「まだ、力がほしいの?」
 飛針(ひしん)の独白に、絽火はあきれ返った。
「――準備ができたようだ」
 飛針が、術の詠唱に入る。
銀の風の言葉を捉えよ
暁の夜に燃える赤の炎よ、
 しょうがない、ここら辺一帯が灰とかすのは我慢してもらおう。と絽火も心の中で炎を呼ぶ。

 ざわりと、空気が震えた。

 絽火の髪が少し舞い上がる。
 かすかな変化、気がついただろうか。

「悪あがきは、感心しないね」
「ぁっ」
 何を思ったか、飛針は絽火の回りの空気を奪った。
 全身が空気を求めて喘ぐ――喉に手をあてて数秒。

 思い出したことがある。




 水の中に落ちたことがあった。それは昔、とても昔の事。

 火谷には大きな川も池もない。かろうじて流れる湧き水と、井戸。それが水のすべて。
 だから、恐ろしかった。
 本当に。
 自分をそこに導く水の存在が。
 苦しくて苦しくて、誰もいなくて、何もいなくて、ただ闇ばかり。

 それまでは、闇は照らせるものだと思っていた。

 ごうごうと流れる水と、息ができない苦しさを、鮮明に、覚えている。


 そして現れた。今誰より何より信じられる。助けを呼ぶ声に答えた、火鳥(パラ)が。




 予期せぬ息苦しさ、体が、すべてが空気を求めて喘いでいる。
 喉を押さえて、空気を求める。

 ぁあ、さっき燃やした男も、こうやって。
 “死んで”行ったのか。


『――!!』

 声が、聞こえた。

「なにっ!?」
 飛針の驚愕(きょうがく)の声が、かき消された。
 激しい爆音と共に、絽火の回りを炎が囲った。それは、いつも絽火の傍にいるものの守りの炎。

「――やってくれるわね」
 もう、息が苦しくて喉を押さえていた姿は微塵(みじん)もない。
 回りを囲む炎よりも、その姿が赤く、燃え上がるようで。
 ひざをついた足を、しっかりと地に立たせる絽火。
 その髪が、炎に舞い上がる。

「ありがとう、パラ」
 飛び込んできた姿を抱いて、羽を撫でる。
『遅い』
「――ごめんなさい。ダイン!」
 ひゅっと、転がっていた鎌が絽火の目の前に飛来する。

 本来の姿となって優に人の背丈姿の二倍はある火鳥と、炎をそのまま刃にしたかのような鎌。
 その二つを手にした絽火。

 とても赤くて、一つの炎のようだった。

 驚愕していた飛針が、絽火ともう一人の姿を認めて口をつぐんだ。
 だんだんとその顔に驚きとも、喜びとも言えぬ物が広がる。
「――よく、来たものだ」
「?」
 その言葉が向けられたのは、絽火ではない。
 パラがここにいる理由を考えれば、すぐにわかったはずだったのに。

「二度と、ここに来るなと言ったはずだが」
 木の陰から飛晶(ひしょう)が姿を現す。
「こちらの台詞だ」
「今の状況はすべて、あなたの差し金ですか?」
 こんな事を聞いて、なんになるというのか。
「何を今更。でてきてくれて、好都合だ!」

 風よ、荒れ狂え!

「っ炎よ!
 風を炎がぶつかって消える。大きな音と煙が消えると、国王と火の術師の姿が消えていた。
 どうやら、周囲を囲っていた水の鎖を引きちぎったらしい。

「行くぞ」
 短く言った飛針の後ろに、水族の“長”が現れた。




「状況はよくはないわね」
 絽火は、パラとダインと自分の力を総動員して、水の鎖を引きちぎって逃げてきた。
 絡んでいた残りを払い落として、ただ森の中を走る。
 ちらりと、絽火は国王を見た。
「一人なの?」
「萩(はぎ)は、付いてくるのを阻止された」
 そこの鳥に。
「パラ?」
『主、ここに“人間”は必要ない』
「そりゃ、そうでしょう?」
「………」
「来たわ」
 地が揺れた。先までおとなしかったのは、飛針の意見を待っていたのかもしれない。
 予期せぬ再会に――どうするか。決定は覆(くつがえ)らなかったらしい。
 一瞬にして亀裂(きれつ)の入る大地。
「パラ!」
『大業に出たな』
 火鳥は空高く舞い上がる。

 それが、狙いだった。

「おいっあれは!?」
 飛晶が指差した先、絽火が振り返るより前に、それは起こった。

『あるっ』
 空が金色に光った。
「――」
 いきなり振り落とされて、体が宙に落ちる。

 見えたのは、一直線に向かってきた雷に身を焦がしたパラ。

「パラ!!?」
 自分が落ちていくよりも、飛ぶ力を失って落ちるパラのほうが先に地面に叩きつけられる。
ファイアー・ピラァ!
 火の柱に助けられて、地面に叩きつけられるのはかろうじて免れる。
「パラ!!」
 落ちながらその姿を小さくした火鳥は、動かない。


「こううまく行くものか」
 現れた影を、絽火は睨みつけた。
「いくら種獣といえども、あの距離の落雷は耐(た)え切れまい。あれで終わりだと思ったか?」
「ずいぶんと入念な事で」
 雷族までも、連れてくるなんて。
「あれは保険だ。使わないですむと思っていたが」
「使わなきゃならないと思ったから用意したんでしょう?」
 その炎を恐れて。
「――ありがとう、パラ」
 羽の傷に炎を送り込んで、傷を塞ぐ。今は、たくさんの力をわけるわけにはいかないから。これだけ。
 短く、召喚と逆、強制退去の言葉を唱えパラを送る。
 火鳥の姿が、炎となって消えた。
「よくもパラを」
「おやおや、ずいぶんと余裕だね」
 そう言った飛針の手が後ろに振られる。
「――っ!?」
 水が溢れ出して、地面が揺れた。
 自分の周りに炎をはって、地面からの攻撃に耐える。水の波には、一部に穴をあけるように炎を――
「絽火っ!」
 水の波の中から、風の刃が現れる。
「っ炎よ!

 風よ、阻止せよ。

 短い呪文に、再び炎に干渉される。

 立っていられないほど揺れる大地、そこに襲う水の波。
 術をかき消された絽火と、国王が飲み込まれた。





 もういつだったか覚えていない。
 ただ、風に乗って聞こえてくる声を聞いた。

 怒りに身を任せたあとが一番大変だった。
 史書室の本を自分の手でひとつひとつ戻した時、洗濯物を吹き飛ばして怒られた時。

 だがとても楽しかった。この力がなぜあって、どれほど危険かも知らなかった。

 そして母は、この力を封印する事を望んだ――





「な、に?」
 もしかしたら、一番驚いていたのは絽火だったかもしれない。
 自分の生み出した炎の囲い、その中で国王に後ろから抱きとめられている。
 風と一緒に四散したはずの炎が、どうして燃えているのだろう?
 それより、自分が全く水に濡れていないのもなぜだろう?


「ま、さか……お前」
 そんな二人の姿は予想し得なかったのか、飛針が一歩後ろに引く。
 考えたくない、一つの予想。

 火術師の回りを、“風”が囲っている。
 自分は炎から風を切り離して、消した。しかし風が、炎を受け入れれば、どうなる?

 風は、炎をもっと強く燃え上がらせることができる。だからそれを利用したのに。

「どういうこと?」
「俺には、風の力がある」
「はっ?」
「おそらく、半分受け継いだんだろう」
 風族の男と、王家の娘の出会いによって。
「ただ……」
 どうも、歯切れ悪い。
「ただ?」
 早く言え。
「自分の意思で制御する事ができない」
「なんでよ」
 もしこれが火谷なら、そんな危険な状況はありえない。
「人間として生きるのに必要ないし、母は特に嫌っていたから」
「――まぁ、いいわ。“風”がおこせるのね」
「……お前も吹き飛ばしてしまう可能性もある」
 さっきは自分でも何をしたのかわからなかった。ただ襲ってくる水に対して身を守るために――
 身を守るために、消えかかっていた炎に力を与えたのか?
「上等だわ」
 絽火は、飛晶の腕の中をぬけて立ち上がった。
「殺せ!」
 どこか焦ったように、飛針の声が響く。
ファイアー・インパクト!!!
 残って待っていた風と共に、絽火は飛針の後ろに向かって術を放つ。
 その炎は木々も吹き飛ばし、砂が降る。
「邪魔なのよ、あんた」
 その言葉は、かろうじて攻撃を避けた水族の“長”に向けられている。
 その後ろで、地堺(ちかい)と流瀬(りゅうせ)が気絶していた。

「――ちっ」
 かすかな舌打ちと共に、水の“長”の姿が水になって地面に入る。
「どこへ!?」
 あわてた飛晶を制して、絽火は飛針を睨んだ。

「――さぁ、どうするの?」

 笑った絽火の後ろで、風が消えた。しかしその姿は、いまだ炎のように激しい。
 飛晶も立ち上がって、かつて自分が父と呼んでいた飛針を見据えた。

「……」
 一瞬、飛針は思案した。残ったのは、風と、水。
 水の長の力が、地下にある。おそらく、下の水を利用するつもりで――

世界を駆ける風の刃よ
 叩き潰してくれる。水と共に。



「……こりないわね。いいわ。もう一度、できるんでしょうね?」
 絽火はちらりと後ろを振り返った。
「どうにか……」
「やれ」
 少し思案したあと、無言で、飛晶は絽火に手を差し出す。
「………」
 不愉快そうに睨みつける絽火。
「このほうが確実だ」
 少しだけ乾いた、音が響いた。

「……赤き炎を糧として
 つながれた手が暑い。そこから、不思議と力を感じる。
 回りを囲む風の気配を、少し先で荒れ狂う風の気配を。
 驚いたのは、こちらに干渉しようとする風が弾き飛ばされている事だった。
(これなら……)

 風と、一拍送れて火の術の詠唱が響く。

ザバァァ――
 集まって回りだした風の後ろに水が現れる。壁のようになって、風に混じる。

 風の“長”と、水の“長”の詠唱が重なっていく。

渦となって敵に向かえ、ウィンド・トーネード
その力で押しつぶせ、流せ、ウォータ・ブレイカー

ふり降りて燃やし尽くせ赤の火よ! ファイアー・レイン!

 すべてを燃やす炎と風の竜巻、切り裂いて弾き飛ばす風と流れる水。


 すべてがぶつかり合って、森に爆音が轟(とどろ)いた。


目次
2007.06.28