第参火 セイズ・オブ・ファイア



「こんなところから申し訳ありません国王陛下。」

 “長”は、何よりもまず先に国王に断ってるよーーーーー。絽火無視って。


「いや。」

 でもさーー面白そうに国王様ひじをついて、眺めてるんですけど。




「何をしてるんだい?」
 私に向かって、明らかにわざとらしくため息をつきながら“長”は言った。
「帰る。」
「………書は見ただろう。」
「で?」
「よろしく。」
「何で!!!」
「仕方ないだろう。私は忙しいし、第一、国王様の期待には添えないだろう。」
「忙しいのは自分のせいでしょうが!」
「申し訳ありません陛下。口は悪いしこんな性格ですが、力のほうはあります し、やるときはやりますから。」
「そうだろうな。」
「何!!? 決定? 第一! それをすることによる私にとってのメリットがあると でも!!!?」
「まぁ、今度の儀式で、舞うのが君じゃなくなるだけだよ。」
「何で私が舞わなきゃなんないいのよ!!」
「君しかいないだろう暇人は。」
「はぁ?」
「皆忙しいし、修行で。」
「それはあんたの監督不行き届きでしょうが!!!」
「だから、忙しいんだよ。」
 笑顔で、言う“長”。
「第一、君みたいなじゃじゃ馬がこれ以上谷にいたらどうなることやら………」
「あ゛?」
「じゃあね絽火。まじめにやるんだよ、谷の術師が消されないように。それから、 壊したところは弁償するように。君がそっちで、“お金”に困ることはないんだ から。」
「ってちょっとぉ!!!」

 ひらひらと手を振りながら、“長”は消えた。燃えていた炎も四散した。
―――――壁のように燃え上がっていた炎は、特に何かを燃やしたようではな かった。下に敷かれた絨毯は、どこも焦げていない。

「あのじじい〜〜〜〜」

 いつの間にか握っていたらしい床の破片が手の中で砕けた。


「―――――――――逃がすかぁぁ!!!」
 鋭い目をして突然振り返り、窓の外に飛び立ちそうな蒼い火鳥に炎の塊を 投げつける。

どごーーーん!!!

「「「「…………」」」」
 窓が割れて、壁が砕けた。

 ぱらぱらと、破片が落ちてくる。しかし、火鳥は無事飛び去った。

 周り呆然パーート2! 破壊神復活!!

「…………」
 絽火が肩でしている息はずっと荒い。


「話はまとまったか?」
 国王は事無げに言った。

「まとまってない!! ぜんっっぜんまとまってないわぁ!!!」

 絽火は叫びながら振り返った。

「明日から働いてもらう。」
「なんで!!」
「お前の意見は聞いていない。俺は火谷の“長”と話をつけたのだから。」
 絽火は絶句した。

――――かに見えたその瞬間!!!


ざっ!!!
 突然天井から降りてきた兵士。周りに立っていた兵士が皆剣を抜いて
絽火に襲い掛かった。

「ファイアーサッシュ!!!!」
 絽火は、容赦なく全員に帯状の炎で攻撃した。


ダァァッァァン!!!
 いくつもの壁に叩きつけられる音。うめく兵士。謁見の間は静まり返った。 ――――――もちろん。絽火の力を図るためのテストだ。

 絽火はゆっくりと国王を見上げた。

 国王が送った合図に、隣に立つ男が動いた。顔を隠すように巻かれた布が邪魔 で、何者か判別がつかない。―――――まぁ、国王の側近というところだろう。


 剣を抜きながら階段を下りる―――――男?


 絽火は、右腕を水平に伸ばした。

「リプライド!!!」


また、“呼ぶ”ために。




 ――――――女がまた詠唱を始めた。――――長い。術師が戦闘する時の 欠点だろう。詠唱に時間がかかることは。まさか、待ってやる必要もない。 剣を構えて、走り出した。


―――――瞬間!! 音にならない音が、空気を震わせた。

「―――――っっな!!!」
 あせって、反応が遅れた。

 女が呼び出した火鳥が、いきなり襲い掛かってきた。ただ襲い掛かって きたわけなら驚かない。―――――しかし、自分に向かって降りてきる火 鳥の大きさが変わっていくとこに、剣を構えなおす暇もなかった。

 ファイアー・バード…………

 誰かが、呆然と言った。

 天井から一直線に自分に向かって降りてくる。その大きさは、はじめは人 の頭より大きいくらいだったのに、目の前に現れたときには、自分よりもで かくなっていた。

――――――!!!!!

 耳にきつい音が響く。まるで、邪魔をするなというように。



(―――――なるほど。)
 側近が火鳥に襲われる様を、国王は納得してみていた。
(だから、火鳥を先に召還したのか。)
 そして、次の詠唱で邪魔をする者の足止めを。………よくしつけられている。 面白そうに国王は笑った。まさか、鮗(このしろ)の驚いた姿が見れるとは。
………久しぶりだ。さて、どう出る―――?


      


「紅蓮の炎よ燃え上がれ! この場を蹴散らせ焼き尽くせ!

闇夜を照らす月の様(よ)に、その刃(は)で照らせ映し出せ!!

光あるべく場所には力を、光見えない場所には灯(あかり)を

火の神ファイア! そして炎の見使いよ

すべての力の源よ、変わらぬ力を我に与えん我の願いを聞き届けん

我は役目を果たし続けん

火谷の術師、絽火が呼ぶ

燃える炎を糧としてこの世に生まれしその姿

我の行く手を阻むもの、すべてを切り裂く力を持って


現れよ火の鎌  セイズ・オブ・ファイア!!


ダイン!!!」




 火の柱が、女術師の腕を囲むようにあがった。長い髪が中に浮かぶ。 こちらの視線に気づいた女術師は、笑った。――――自信ありげに。
………………目が合ったわけじゃない。

 柱の炎が一層大きく立ち上り、ゆっくりと床に渦巻く炎から柄が現れる。 ――――どうやら、正位置とは逆に出てくるようだ。伸びてくるように現 れる鎌の柄は、女術師の背を越えた。――――黒い柄に、大きな赤い刃。 三日月を描く鋭い刃――――これも、赤く染まっている。赤と黒で彩られ た女は、鎌の柄をつかんだ。



ぱし!!!

「…………久しぶりに、腕がなるって?」










「――――――!!!!」
「――――っっ!」
 ようやく、と言ったところか。火鳥の羽根を切り裂くと、思わぬ攻撃に空へ と飛んだ。――――やっかいな。弓でも用意させておくべきだったかと考え。 また降下してくる火鳥に構えなおした。―――――もう、その攻撃には驚か ない。


「パラ」


「――――!!!」
「なっ!!!」

 声に火鳥は反応し、一瞬にして向かう先を変更した。――――――自分に 用はないと言いたげに。振り返ると、大鎌の先を床につけた女が火鳥に手を 伸ばしている…………


「チッ!!」
 あまり舌打ちはしないほうなんだがな。



 私に向かって飛んでくるパラの羽根に、切り裂かれた痕がある。………ふうん。

「――――っっっ」
 申し訳なさそうにうなだれるパラが、私の横に降りたち始めた。手が届くと ころまで着たら、手を伸ばして傷にふれた。
「ありがとう。パラ。」


 女術師が火鳥の羽根の傷をなぞると、傷が消えた。それから、ゆっくりと 火鳥の大きさが変わる―――――はじめと同じ大きさよりも小さくなり、 ついにもえる炎が四散した。



………逆に出てきた鎌を、――――――持ち上げて、構えた。




(今度こそお前が相手になると。)
 思った瞬間。相手が走り出した。



ガキィィーーン
 剣と鎌が交わって、金属音が響く。

キン!!
 距離をとった絽火は持ち方を変えて動き出す。

 鎌を振り下ろした瞬間を狙って、男は絽火に切りかかる。

 絽火は鎌を引いて男の足を狙うが、後ろに飛んで、かわされた。

 追いかけて着地の瞬間を狙い、鎌を振るえば男の姿が消えた。

「こっちだよ。」
 そういって、横から絽火の首を狙うが、今度は絽火の姿が消えた。

「遅い!!!」
 絽火が鎌を斜めに振るうのと、男が射程距離を離れるのは、空ぶった 空気の音で区別がつくだろう。


―――――どれも、一瞬。目まぐるしく情景が変わる。



クス
 離れた男に、絽火は満足そうに笑った。――――うつむいた影の中で。

「ファイアー・ケージ!!」

 瞬間。男の周りに仕掛けておいた火種が燃え上がる。床に手をつき 呪文を入れた先が男の四方を囲む箱となり、上に天井を、回りは上か ら下に伸びる縦の格子となる。―――――どの場所も、炎が燃え上がる。 格子を通るように炎が流れ、天井には今にも捕まえた者を燃やそうと うごめく。

「な…………」
 突然の状況に男は絶句した――――――させられた。


 絽火は、他の種族の者たちを一瞥(いちべつ)してから、国王を見た。


 うわぁ〜〜〜嬉しそうだな〜〜〜〜よくもやってくれたわね〜〜って 感じだし〜〜〜でもさ、叩きのめしといてそれはないでしょう。




 何かに満足したらしい絽火はくるっと振り返って、指を鳴らした。

 格子の一部から炎が流れ、男の顔を隠すように巻かれていた布だけ が灰も残らず燃える。いきなり火のついたことに驚いた男は、しかし 動くことができなかった。

 現れた“顔”に絽火の表情は変わらない。―――――そう、それが たとえ火揺石がほしいといった男でも。




「――――――名は。」

 一番初めに名乗ろうとして邪魔しなかった?

「絽火」

 国王の問いかけに、絽火は火の檻を消しながら振り返った。



ざぁぁぁぁぁ―――
 空気が流れる。

「………っげほ!! はぁはぁ……」
「苦しいでしょ? 回りが炎だから、“中”の酸素は燃えることに使われ るわ。調節はしてあるから、徐々に減っていくようになってるけど。」

「「「……………。」」」
 ゆっくりと死に向かわせていた―――――それで、男が抵抗らしい 抵抗をしなかったのか。動くことも困難なくらい、酸素を減らしてい たのか?



 沈黙が降りた謁見の間。絽火のテストは終了だ―――――




こつこつこつ
 ひとつ、靴音がした。首を回せば、私が壁にたたきつけた者共の治癒を していた森族の男が、壊れた窓に向かう――――――


こつ!!
――――止まった。
「修復」

 次の瞬間。時間が戻るように窓が直った。元に戻った。

「――――!!!」

 近づいてきて、同じように穴の開いた床を直した。

「“修復者”なんて、はじめて見る――――」
 男は、私の言葉に微笑んだ。



“修復者”
 さてさて皆さん森族に、“治癒”の力があることは、納得しといて 下さいね。

  植物を生育させる者は“生育者”
  人の傷を治す者を“治癒者”
  回復させる者は“回復者”
  建物などを修復させる者は“修復者”として、力が上がっていくんです。

 特に、もともと治癒能力のない建物や物を直す力“修復”を、 持つ者は特に力が強い。上の力が仕える者は下の力も使えるから。
――――この男、兵士を治癒して窓と壁と床を直したんだね。


「はじめまして火谷の術師。私は森族の術師“樹木(じゅき)”。主に城の 修復をさせていただいてる者です。」

「……………つまり、あなたに弁償すればいいのかしら?」


 あ!! “長”の言うこと聞くんだ!! いがいーーー


「と言っても、これしか今はないのだけど……」
 言いながら、絽火は耳飾を取り外した。――――両方。
「それはどうも。“森”では火はとても貴重なものですから。二つとも よいので?」
「だって、ねぇ。これ対となって使うものだし。…………貴重?」
「ええ。“火”は、森を簡単に“灰”にします。森族(わたしたち)には、 恐れの対象ともなり、何があっても怒らせてはならない“神”に等しいですから。」


「……………。」


   ――君の行動一つで火谷の命運が変わってしまうから――
   ――谷の術師が消されないように――


“長”は、知っていたのかも知れない。いつのまにか、火族(わたしたち)が、 恐れと、畏怖の対象になっていたことに。それと同時に、この世で一番、 憎しみの対象となっていたことに。


 私に、“忠告”を促す森族の男の目を見て、小さくうなずいた。


「時に、お聞きしますが、」
「はい……?」
「記憶にある中で、物を“壊さなかった日”は?」

「……ないわね。」

「私は言ったとおり主に城の壊れた所の修復に参ります。が、」
 あまり暇でもないので―――――

「………努力するわ。」



 基本としては、各種族の人々は、用がない限り王都にはこない。自分たち の住むべきところで、生活してるよん!!


「……………。」

 そんな二人の会話を聞いて、国王が“後悔”という二文字を思い出すのも、 そう遠くない事実にならなければいいね。


ちょっと補足をし始める〜〜
ここで鎌の意味として使ってる言葉

“セイズ・オブ・ファイア”の“セイズ”は英語で、「scythe発音としては、【サイズ】が近い。 (長柄の)草刈りがま、大がま」 から取ってます。なんで“セイズ”かって言うと、歌夜が勝手に変えただけ。そのままじゃ嫌だったから。 なので英語として正しくないので真似しないように!! え゛!!そんな人いないって?いないならいないほうがいいんですよ。


目次
2006.02.08