第六火  不可解



 国王が、執務室を出て、城の廊下を歩く中、見つけた明かりは灯されて。いつもの暗い夜を照らす。最低限必要な灯りと、薪。それが日常。しかし今や、城の明かりは全て灯された。

 一人の火谷の術師によって。





「ねぇ! お城に明かりが灯ったよ!!!!」
「――――本当に?」
「本当だよ!」
「………まぁ、いったい何事かしら? ――――――再び、“洸源”の異名を持つ城の明かりを、こんなに早く見られるなんて。」
「“こうげん”?」
「“光照らさん洸明の城、新たな主を迎え入れ”――――現陛下が即位してから、初めてのことね。」

 窓の外にそびえる城の明かり。城下の人々はその晩、誰もが一目見ようと窓を開け、通りに現れた。







「―――――」

「?」

 広い机の端に丸くなって、羽を休めていた火鳥が首を起こす。揺らめく目が――――そう、何かを心配するような、咎めるようでもあった。言い表しにくいが。

「――――どうした?」

 こちらの言葉を、“理解している”と、考えるべきであろう火鳥―パラは、またもとの姿勢に戻って眠り始めた。

「………」
 しかし、ここ数日でずいぶんとなれたようだ。最初は、あの棚の上で丸くなっていた。

 ―――かろうじて視界に入る本棚の上。だんだんと近づいてくる火鳥との距離。今では、手を伸ばせば羽にふれられる。


「………」
 ―――そろそろ行くか。

 眠る火鳥を抱え上げ、部屋を出た。









きぃ
 小さな音とともに扉が開いた。中に入った人物は、さらに気配を消している。照られた部屋は、暖かかった。

「…………」

 その暖かさにぼんやりと、眠気が襲ってくるのがわかった。振り払って、進んだ。



「…………」

 案の定だ。

「―――――何をここで?」

 陛下。
 何でまた、私の欲しい本のある棚の目の前にいるわけ?

「……………ここは城だ。」
 国王の住まう。

「…………そうですね。」
 私がいることのほうが異状だった。

 照らす光は、いつも傍にいたパラで。ここのところ一緒にいないのが不思議だった。――――そりゃ、いろいろ考えはあったけど。

 国王の隣で眠る火鳥。赤い輝きは光と暖かさを運ぶ。

「――――優秀だ。」
「――――もちろん。」

 照らすにはもってこいよ。


「…………」
 ――――帰ろう。さっさと本棚の中にある本から、目的の本を探す。

が、

「…………」
 嫌な予感を感じて、視線を巡らして見た。

「何読んでいるのですか?」
「本だが」
「それは、続きなんですけど」
 私が読みたかった。
「へぇ」
「――――嫌がらせ?」
「そこまで暇人ではない」
「ああ、そう」
 国王が本を閉じて上を見た瞬間に、本を手から奪って歩き出した。

「優秀だ、だが、」
「?」
 何か、パラに問題でもあるのだろうか。
「こちらから何も出来ないのか?」
「褒美(ほうび)でもあげるのですか?」
「…………何も口に運ばないが」
 お前と違って。
「…………」
 なんか、バカにされたような気がするけど。
「………だったら、――――でしたら、朝水でもあげて下さい」
「水?」
「食べる物、体内に必要な栄養は他で摂っていますから」
「――――ふぅん」
「それでは」
 よし、さっさと帰ろう。

「……………」

 意味深に追われる視線は流して置いといた。




 ――――止めるか、止めないか。
「いいんですか」
「いいんじゃないか」
「…………」
 なんだって、この国王は。ここ数日間、これだけのためにこの棚の前にいたのだろうか。


「行くぞ」
 不思議がる鮗(このしろ)のことは気にならないらしい。国王が立ち上がるのと同時に、火鳥も起き上がった。…………飛び上がった。

 独特の火の粉が空に舞う。国王の上げた左上、手の指に下りた火鳥。




ねぇ皆さん思いません? 火鳥は絶対絽火といるよりも、国王様といるほうが、絵的に様になるみたい?

さて、どうも、ご挨拶が遅れまして。お久しぶりですね〜〜〜〜〜………いやぁ……本当に。

あ、そうそうさっきの話。こうね、手の指に火鳥を止まらせた国王様。いやぁ〜〜〜様になりますね〜〜持ち主より…………

さて、そろそろこの場が灰になると困るので、とりあえずいったん打ち切りで。

早速国王陛下は次の日に、パラに水を与える気のようですから。






コトッ
 何で与えればよいのかわからなかったので、グラスと皿と、深さの違うものを三つずつ用意して見た。
「…………くくく…」
 ――――――何をしているのか。
 目の前に並んだ六つの水の入った器。よくよく見て、笑えて来た。

バサァ――――

 棚の上から下りてきて、水を飲む火鳥を見てまぁ、よしとするか。


 最初に口をつけて水を飲んだグラス、次に口をつけた皿…………つまり、第一の希望と第二希望か?








「案外、選り好みするのか」
「は?」

 またまたいきなりやって来た国王。人がねぇ、鮗の目の前で黙々と本を読んでいるときにさぁ。

「………」
 ――――おい!!
 言うだけ言って、どこか遥か彼方を見ている国王。ってかお前、執務は? とある種呆然としだした絽火(ろか)。ふと見ると、苛々と鮗が“私”を睨んでいる………ついでに言うなら国王の後ろの男………確か嗄(かる)? も………

 ………――――ぁあ!

「パラ?」
「そう言っただろ」
「……そうでし………た!」
 ―――そうでしたっけ?

 胡散臭そうに絽火が視線を向ければ時遅し、すでに国王は部屋を出ていた。

「…………なんなの?」
「………」

 何か言いかかった鮗は、だがしかし、黙った。彼も国王の行動が、不可解極まりないみたい?





 ――――気に入ったの? 気に入られたの?

 ………あなたはとても鋭くて、人を分けて見ているし。



「行って来い。」
 もう、日常の光景となった。“絽火が一人で走ってる”


 ―――寝不足?


 いつもより疲れるのが早くて、いつもよりどこかだるい。

 気にならないと言ってしまえばいいもので、気にしなければいい事で。

 違和感の感じる身体に、絽火は見向きもしなかった。



途中まであったのをちょこちょこ書いてアップ  だって、前回2月だし…
本格的に内容に入りたい……でも、「狂世」を先に終わらせる

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2006.06.05