第八火  寝てる間に…



「……………さて、」
 どうするか。

 泉と森とを分かつ場所。一歩踏み出せばそこは芝で、木はなくなる。淵で眠り込んだ女と、隣でおそらくため息をついたであろう火鳥。嗄は呆然としているし、鮗にいたってはどうやら思い当たる節があったようで。

「「………」」

 ここ数日、彼女は夜この城のすべての明かりを灯していたらしい。なぜそうなったのかは知らない。――――しかし、彼女の意思だけとは言いがたい。

 あのやる気のない女が、ただで行うはずもない。



ですよねーーーよくわかっていらっしゃる国王陛下。

え? また出たって?
なーーにをおっしゃいます。わたくしいなくしてどうなさるのですか!!!

それで、


「―――おい」
「――――!!?」

 声をかけられた、火鳥がさほど驚かず振り返った。羽根の羽ばたく音と火の粉が舞った。


わたくしがいるのにーーーーー………


「―――!!」
「なんだ? 何を言っているんだ?」
 わからない。さっきまで、絽火との話は聞こえていたのに、あの頭の中で反響するような言葉を拾って、全貌をつかむのは大変だった。


――――聞こえていた?
 いぶかしむような火鳥の表情に、頷いた。どうやら今度こそため息をついたらしいパラは、また、話し出した。

【聞いていたのか】
「知っていたんだろう?」
 “いた”ことは。
【―――そうだな。声が聞こえるのか。】
「………なんとか。言わなくて良かったのか?」
【…………主には、それ以前にもっと考えてもらう事がある。しかし、そうか。主の影響か?】
「?」
【さっき、火の力を撒き散らしたからな。残留力はあろう】
「そのせいか」
【もう主も眠った。いずれ消えよう】
「そうか」

 二人の前で眠る絽火。国王は静かに笑って、絽火を抱き上げた。


「――――帰るぞ」




 ※  ※  ※




「…………ん………?」
 絽火が目を開けると、部屋にいた。しかも、すでに日は暮れて外は真っ暗。

「………」
 確か泉にいたような………

「ま、いっか。」
 そのまま、気にした様子もなく絽火は寝た。



なんて図太い女なんだ………わたくし嘆きますよーーー

話を聞いて喜んでいたような笑っていたような国王様。絽火をわざわざ自分で運んだみたい?





「―――――」
 ふっと、火鳥が顔を上げて、宙を舞った。窓辺に行って窓をくちばしでこつこつとつつき、また、棚の上に丸くなった。しばらく見ていると、どうやら本格的に眠ったようだ。

「おやすみ」
 私室の机の書類の最後の一枚を積み上げて、自身も寝台に入った。


 明日にでも、呼び出してみるか――――



 ※  ※  ※




「――――ん〜〜〜」

 開いていたカーテンから入る日差し。絽火は、目を覚ました。

「朝か…………」

「………………ん?」


「……………」


 沈黙が長い。


「…………寝るか。」

 ぱふっと、起き上がったシーツに再び身体を沈めた。



ちょっとちょっと絽火。いくら今が真っ昼間で、約束させられた時間を過ぎすぎていて、なおかつ誰もおこしに来ないしいくら行く気がないからって、また寝るのもどうかと思いませんかぁ!!?

――――ごめんなさい黙ります……

いくらうるさくて寝れないからって、手元にあったもの投げないでくださいよねーーー


え? なんであの鮗さんがおこさなかったのかって?

それはもちろんこれからに、ご説明させていただきますよ。



数時間前――――


 イライラと、鮗は机の上を爪で叩いていた。――――来ない。

 ゆうに、三十分はたったらしい。

「〜〜〜〜」


ガダン!!!
 苛立ちを押さえもせず不機嫌顔で、鮗は廊下へと続くドアを開け放った。

「あの女ぁああ!!!!」

ドガン!!


「――――どうした。」
 少し、驚いたように廊下を歩いていた国王が言う。

「――陛下っ!!!?」
 さすがに、嗄とパラを引き連れて歩く国王に鮗は焦った。

「どうかなさいましたか?」
 今さっき叫んだばかりだが、極力平静を装って鮗は言った。

「通りかかっただけだ」
「………。」
 そうらしい。

「で、どうした」
「いえ………実は………」
 黙ってはいけないのはわかっていたが、言いたいとも思わない。

「来ないんです………」
 あの女。

「――――――寝ているか」

 国王の的確なまとめに、後ろで羽ばたいていたパラが落ちた。落下寸前に持ち直したが。鮗は頷いた。

――――だって、それしか考えられないじゃないですか!!!
現に、寝てるし絽火。



「それでは陛下。」
 そう言って、鮗は礼をとって国王に先を歩かせ、自分は叩きおこしに………

「――――お前に、休暇を与えればいいのか」
「…………は?」
「そうしよう」
「へっ! 陛下!!」
「一日休め」

「………」

 呆然と立ち尽くす鮗を置いて、国王は歩き出した。まるで頭を抱えるかのような火鳥と、嗄をつれて。



ちなみに、突然休みを貰った鮗さん。話についていけなくて、通りすがった部下に声をかけられるまで、その場に立っていたそうな。――――バカだねーー


※ ※ ※



「ぁふ…………ぁ〜〜〜よく寝た」
 次に絽火が目を覚ますと、またも外は真っ暗。日暮れと、真夜中の中間だった。

当たり前だよーーー簡単に一日は寝ているよ絽火―――


「おなかすいたーー」

現金な女だーーーー


「…………」
 暗い。
 時間としては、まだ夕食のために与えられた時間である。が、

「……………」
 行ったら、会うか? ――――鮗に。

「………。」

 しかし、空腹にはたえられないらしい。着ていた術服を変えて、絽火は部屋の扉を開けた。

「よっと!」
がちゃ! ―――――バン!!

がっ!!

「「…………」」
 しばらく、二人は睨み合った。


 絽火が誰もいないだろうと思って恐る恐る開けた扉。しかし、すぐ脇に鮗がいたので勢いよく閉じようとしたら、向こうのほうが早かったらしく、片足を扉の下に、片手で閉じないように押さえつけてきた。――――鮗。


「「…………」」


「「………」」


「………」
「………。おい」
「何!?」
「いい加減にしないか?」
「…………」

 仕方なく、絽火は閉じようとしていた扉から手を放した。


「――――まったく。」
「………ちっ」
「…………」
 嘆息した鮗は舌打ちした絽火を睨んだ。なんだこいつと言いたげに。というか、いい加減で怒りが爆発しそうに。

 不機嫌さを、まったく隠すことなく。鮗は絽火に紙を渡しつけた。

「――――なに?」
 負けないくらい不機嫌な絽火が受け取る。

「これまで暗記した歴史事象の中で、主だった事件と、政策を一つずつ上げ二千字以内でまとめろ。」
「はぃ?」
「提出は明日。“約束の時間”に書庫に来た時! だ。」

 強調して、鮗は絽火に背を向けた。

「今度こそおきろ」

 一言言い残して。




ちなみにその後の食堂で、いつもの倍近くやけ食いしている女がいたそうですよ。


突然アップ
だって、一人語りの最初の!「いや〜〜いい天気ですね〜」のところが思いついたから!!
もうねぇ〜〜書きつづりましたよ〜面白かった
思いついて、書き留めて(バイト中)家に帰って書きましたよ〜そしたら、面白くて進んだのでアップします
書きたいときに書き進むのが一番好き〜〜♪

パラの必死さが伝わってくれると嬉しい。


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2006.07.10