第九火 呼んでない男



いやぁーーいい季節ですねぇーー

なべがおいしいですよ〜〜

―――え゛!!? まだ早い!?

そんなーー気にしなさんでくださいよぉ

は? お前がなべで煮てもらえ?

火は絽火に任すから!!?

皆様! それじゃ揚げられるのと同じくらいですよ!!

天ぷらが食べたい!?
フライでいい!?

ひでぇーーー……








「陛下、本日はお日柄もよろしゅう………」

「………」
 くだらない時間が過ぎる。なんだ、初めから話をする気もなく自分の意見だし押し付けてくる者達。

うわぁー国王って大変なんですねぇーーぁあ、今日はいい天気ですよ! そりゃぁもう! 物がよく燃えそうな……

 謁見室では最後の訪問者が訪問していた。風族の者である男は、また自信の一族びいきをしていた。どうしてくれようか、実際にこちらに拒否権はあるようでないものだ。ただ結果の変わらない話をずっと自慢していたのだろうか。

「――――それで、なんだ」
「陛下、聞いていてくださいましたか?」
「………」
 こんな調子だ。そういえばずいぶん前から怒鳴り声が聞こえなくなっているが、問題は解決したんだろうな。
 ふと、城の中で騒ぎ立てる女を思い出した。―――あの、赤。
「以上です陛下」
「思うようにしろ」
「ありがたき幸せ」
「………」
 どうせ、何を言っても結果は変わらない。一つだけだ、先が決まっていなくて、まるで決められた道を通らない事は―――

「………?」
 今、声が?

ヒュォォォォ―――ダン!! ズザァァァァアア――――

「絽火ぁ!! どこだ!!!」

 隣の机に丸くなっていたパラが身体を起こした。
ざわぁ―――
 突然、開いていた窓から入ってきた男。謁見室にどよめきが走る。


入ってきた男の正体とわ!? 呼びつけた絽火との関係は!? どう動く国王! どうなる、火谷の運命は!? そしてはじまるラブ・ロマンス……次号! 乞うご期待!!?





なーーんて嘘ですよ。ページ? 余ってます余ってます。絽火が燃やしても困らないくらいには。

ラブ? ロマンス? 駄目ですよーーこの話に期待しちゃ

絽火のはちゃめちゃ破壊談紀伝なんですから。

さて、まぁ解説入れますと、開いていた謁見室の窓(一階)に、いきなり男が飛び込んでまいりましたーーみたいな(事実)。

臙脂(えんじ)色の髪、赤い瞳。誰がどう見ても火谷の火術師。はいけってーー



「何者だ!?」
「絽火ーー? ………。」
 剣を持って嗄が問いかけるにもかかわらず。まったくの無頓着。しかし、
「なんだ?」
 間抜けな声をあげているあたり、たかが知れる。どうやら、ここが謁見室だと気がついたらしい。
「………いない……」
 不思議そうに声をあげて、何か考え込み始めた。

―――ドガン!
「でぇ!?」
 羽ばたいて飛んでった火鳥が男の後頭部に激突する。
「何しやが……」
 言葉を聞かずに、ついて来いというようにパラは飛び去った。
「ちょっと待てよ!」

「………」
 あわてて追いかける男の後ろを、ついて歩き出した。まだ、何かいい足りないらしい風族の男には、帰ってもらうことにした。



※ ※ ※



時間は戻って本日明朝。
ほらほら、覚えておりますか? 絽火の提出物!

「再提出」

うっわーーようしゃねぇーー

「……なんですって?」
「再提出」
「二回も言わなくても聞こえてるわぁ!!」
「……」

だったらなんでまた聞き返すんですかーー? ………っと。

「事件は、まだいいとしても。政策は点も付けられない」
「だって、反乱とか革命とかのほうが楽しそう」
「………期限は明日」
「早!? ――ちょっと負けなさいよ」
「なぜだ」
 なぜこの女のために譲歩してやらなければならない。
「面倒だからに決まってるでしょ」
「……期限は明日。」
「このドケチ」
「…………字数は四千」
「はぁ!!? ふざけんじゃないわよ!!」



※ ※ ※



 前を羽ばたくパラの後ろから、さっきの男と俺。それに嗄(かる)と鮗(このしろ)。そういえば、なんでお前ここにいるのかと聞いた時、あの女には文章を提出してもらうので今日はほっておくとか行っていたな。静かになったあとで。

「陛下」
 こそっとどころか堂々と耳打ちしてくる鮗。
「よろしいのですか」
「見たとおりだろう」
 火族の男。そして、火鳥―パラが自ら案内をかってでている。
「なんにせよ、あの男から話が聞けるとは思えないからな」
「………」

 なぜ、火谷の術師はこうも話を聞かない者達ばかりなのか。


―――ちょっと待ってくださいよーーそれじゃーー他の術師さんがかわいそうですよ〜〜
まぁ確かに、話を聞いてるようでまるで無視筆頭は絽火でしょう……ぎゃぁ! 枠が焦げる!!!?



※ ※ ※



「あーーめんどーー」
 うだうだと愚痴を洩らす絽火。

さてさて、またまた話は戻って絽火の事。え? やけどはしてないかって? 皆様、皆様にもお優しいお心はあったのですね。大丈夫です! 皆様のお気遣いのおかげで怪我ひとつなくっ!! ―――は? いっそのこと入院して代理人よこせ?

っそれは皆様の愛情ですかーーー!!!?


「やってらんな〜いしーー」

藺志(いし)? ぉおっと、番組が違う。

「―――まったく」
 史書室をあさりながら、絽火は手ごろな本を持ち出していた。
「なんだっけ? 政策?」
 そんな楽しい政策なんてしてないじゃないのーー
 数代前の歴史書を開いて、閉じて。
「これでいいか」
 数百年前に行われた、税金の徴収の仕方についての政策だった。


数分後

ぐーーーー


…………寝ましたよ皆様。あの女。どう頑張ってもただの長いすにしか見えない椅子の手すりに腕を乗っけて、頭を置いて。頭が右に傾いているので、穏やかな眠り顔が見えますよ。珍しい。
眠ってれば静かですけどねーーー

しかも、城の廊下の端の長いす。反対側は中庭ですね。



※ ※ ※



 ――――?
 “気配”は、途切れる事がない。

 よくもまぁ。
 さすがというべきか、それとも―――




ばさぁ―――
「!?」
 羽ばたきの音で我に返ると、鋭い目でこちらを見る種獣。―――どうやら、扉が開けられないらしい。

 おそらく外につながっているのであろう扉は、案外重かった。

ギィィィイイ―――
 開ききった扉の先に――見える“赤”。長い髪の先が、宙の上で音なくゆれた。

「「「「………。」」」」
 遠めでも見れば、わかる。寝ているらしい。

ゴキッ!
 後ろで、鮗の指がなった。呆然と立ち尽くす男と護衛を置いて、距離を縮めようと歩き出す。

「……?」
 やって来た男が怪訝そうにこっちを睨みつけてきた。―――何だ。
 敵意が表れる瞳と、見下すように睨む視線がぶつかって、沈黙する。しばし呆然と立ち止まる? 羽ばたき止まる? っていたパラが、動いた。

バザァ―――
 速いスピードで絽火に近づいたと思ったら。

「絽火! 勝負だ!!」
 いきなり男が叫びだした。

ぐーーー

「「「「…………」」」」

 一瞬、行動が止まったパラは、気を取り直した。
ばさっ
 絽火の肩に止まり、腕をつつく。―――最初は、弱かった。
「………ん〜〜〜? なに?」
 うっとうしそうに手で振り払って、絽火が声をあげる。が、止まらない攻撃。
「だから、何?」
 突っ伏したまま絽火は言う。

ぶす!!
 後頭部に刺さった。

「っだぁ!!」
 がばっと跳ね起きた絽火から、パラは離れた。
「何するんよパラ!!」
【…………】

「絽火! 勝負しろ!!」
 怒ってパラにつかみかかろうとしていた絽火はその声にゆっくりとこちらを見た。

「……火緒李(ほおり)?」

 何してんのあんた―――?


目次
2006.10.26