第二四世  帰郷


「――――――十音!! ………十音!!!」
 ――――呼び声がする。

「十音!!!」

 ――――誰?
 まぶたが、まるで開くのを待ち望んでいるようだ。薄暗く、何も見えない。―――――何も。…………叫び声も聞こえない。
 どうしたのだろう………か………

 十音は、目を開けた。


「十音!!!」
 涙ぐむ母親が見えて、私は一気に飛び起きた。
「お母さん!!!」
「ああ、十音。どうなってしまうかと思った。―――――あなた、一ヶ月も行方不明で、見つかったと思ったら、意識が戻らなかったのよ!!」
「お母さん! お母さんお母さん!!!」

 ――――嬉しかった。帰ってきたことが。もう、あの惨劇が頭に映らないことが。
 ここは、「元」じゃない。…………私の世界。

カララララ――――
 嬉しくて嬉しくて、安心していて、聞こえなかった。

 破滅へと向かう呼び声を。

「――――気がつかれましたか?」
「!!!? ――――キャァァァァーーーーー!!!」
「十音!!!? 十音!!? どうしたの!!?」
 声の先を目に映して、絶叫した。
「っ! どうやらお嬢さんは混乱しているようです、無粋でした。申し訳ない、失礼する。」
 そう言って、男は部屋を後にした。

「ぁ…………あ……ぁ……」
 がたがたと震える十音を、母親はしっかりと抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫よ、十音。落ち着いて――――」

「『鳳(おおとり) 一瀬』――――」

「――――? 十音?」
 母親は、小さな声を聞きとがめた。
「………どうして貴女。“先生”の名前を知っているの?」

 ―――――先生(主治医)!!!?




 ――――――悪夢は、まだ終わらない――――――




				・・・終・・・


目次
あとがき