15*騎士団員が知る真実*


「おばあ様!!」
 陛下の叫ぶような声にはっとして、無礼は承知で太王太后様の手から短剣を取り上げた。
「何をする!」
 この方は、こんなにはっきりとものを言う方、ではあった。しかし、最近の物忘れ病を患ってからの姿からは到底想像もでき――
「お前達、この方に何をなさったのだ」
 それは、王妃陛下時代の気迫そのもので――われらは皆、一様に膝をついた。駆け寄る足音は、陛下だろうか。
「おばあ様。いったい……」
「始まりの魔女様に何を……まさかっ! パラスの村で何か……」
「ここはどこ?」
「はい! ここは、ディアフィです」
「ああ。すっかり見違えたわね。アルベルティーナは元気?」
 古い巫女の名前だったと、記憶はしていた。しかし、いつかは――
「――申し訳ございません。二代目巫女が亡くなってから――」
 さすが神殿の巫女、太王太后様。ふと、続くその言葉を聞いた女が、どこか悲しそうに姿が揺れたのは、見間違いだったのだろうか。
「三百年経過しております」
 さん、びゃくねん?
「そう……パラスの村では火あぶりにされそうになったわ……今までそんなことなかったのに、何か吹き込まれたのかしら?」
「なっ!? ――ぁ……っ! まさかアレニウス! お前!」
「違います! 誤解です!! 確かにおばあ様が隠居して砦を作りましたが攻め込むなんて真似はしてませんし! 始まりの魔女が住んでいるなんて初耳です!」
「パレスの村に使者を送り交流することは禁じただろう!」
「――っ交流はしてません。近くに砦を作っただけです」
「あそこは不可侵で、他者が手を加えてはならぬとあれほど……」
 太王太后様の絶望は深く、今にも倒れそうになっていた。女が続ける。
「まぁ進行なんて、時が経つにつれ薄れるものよね。だからと言って、無知が許されるわけじゃないわよ」
「魔女様……」
「死刑は保留よ。とりあえずお腹がすいたわ」

 またそれかと、一瞬、声を荒げそうになった。

2017.05.01

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