18*アルベルティーナの日記*


 初めてお会いした始まりの魔女の一人、ピュリファの魔女様は想像に反して、小柄、しかも口が非常に悪く。私がそんな口をきいたら神殿長が卒倒しますと言えば何が面白いのか神殿に滞在してくださることになった。
 神殿長に本当に褒められた。あいまいに笑ってしまった。

 そしてなぜか魔女様は、私の一日に興味を持たれた。……そうは言っても、ある種祈りの対象を目の前にして祭壇に祈るのは……ええと……え? え? そんなに興味がおありでしょうか……面白いことは何もないかと思いますが。

 あるお休みの日に、叔父の営業する食堂に行くと言うと、面白がってついてこられた。
 口の悪さで意気投合した叔父と魔女様は盛り上がって。――お酒を召し上がりたかったようだが断られたのは根に持っていたが。
 叔父が出してきたのは赤辛蕪のスープ。
 私は慌てた。あれは本当に辛くて、二、三日まともに何も食べられず――止める暇もなく、魔女様は口にして――間食した。
 呆然とした。
 それからも一緒に叔父の食堂に行くと、叔父は辛さに挑戦するメニューを出し、それはもうお二人は楽しげにしていた。
 それでも、やっぱりか、あの赤辛蕪のスープが一番気に入られたようだ。

 魔女様の滞在の中で、私はいろいろな話をきいた。魔女様は歳を取らず、ずっと同じ姿でいると言う言い伝えは知っていても、どこか、他人事だった。ただ神殿に伝わる伝説ではそれは祝福となっていたそれを、魔女様を目の前にして、考えてしまった。
 ――それは本当に祝福なのか、それとも呪いなのか、私は、分からくなってしまった。

 ある日、突然として、魔女様はいなくなってしまった。まるで私の悲しみと葛藤を察したかのように、消えてしまった。
 神殿長に問いただされている間、言葉は何も聞こえず――ただ、声を上げて泣いてしまった。彼女も、泣きたいことがあったのではないだろうか。ただずっと、一人で。
 でも私にできることなど、もう何もないのだろう。だから、あのスープの調理方法を叔父から聞き出し、ここに記しておく。
 永遠を生き、ひとところにとどまらないピュリファの魔女様がいつか、ここに帰ってきた時、このスープの味がかの方を、迎えてくださいますように――

2017.05.06

Back  Top  Next