19*魔女と赤辛蕪のスープ*


「魔女様、お願いがございます」
 一晩経って、立場が逆転したのかアンナリーナは床に座り、後ろにあの偉そうな国王と騎士団長を従えていた。私はと言うと、重たそうな服を着せられそうになり断固拒否。残念そうな侍女を無視して簡素な服を着て、ふっかふかの椅子に座っている。お茶がおいしい。お菓子もおいしい。辛いものほしい。
 三人……その後ろにもいるのだが、除外。もぐもぐと食べながら、たぶん声をかけなければ顔を上げもしないだろうなとぼんやり考える。
「何?」
 少しだけほっとしたようにアンナリーナが顔を上げる。
「無礼を承知で申し上げます。――処刑の件はわたくしの命を差し上げます。ですから、お願い申し上げます。どうか、どうか神殿の祭場の浄化をしては頂けませんか?」
 ――ため息をついた。確かにパラスの村を放置した以上。次の王都候補は消えたも同然だろう。私には関係ないが。

『この世界の住人は瘴気の中で生きて行く事になったんだから』

 ……関係、ない……と言うか。
「浄化の力は信仰によって保たれる」
「……存じております」
「そう」
 まぁ昨日の様子じゃ、もうそれを説いても、無駄でしょうね。当然のように並べてあったスープを飲む。うん。おいしい。って、
「どうして私が、このスープを好きだと知っているの?」
 当然のように、ご機嫌をうかがうつもりか、お茶と一緒に出ていた。飲むけど。
「それは、第二位の巫女アルベルティーナの日記に」
「は?」
 アルベルティーナの日記?
「読まれますか?」
 アンナリーナが支持を出して、お盆に乗せられて差し出されたのは、古くなった日記帳だった。修復の跡が新しい。一枚、二枚とめくっていく。
 彼女が二位と呼ばれる地位に就いてからの日々の中――私に出会った日のことが記されていた。
 気を使われたのか、ふと顔を上げると誰もいなかった。そんなこと、読み終わってから気が付いた。

2017.05.14

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