21*ピュリファの魔女の役割*


 アンナリーナは、寝台の上で静かに横になっていた。一瞬、死んでいるのかと思って、しまった。周囲の瘴気を浄化したら、少し、息がしやすくなったように落ち着いた呼吸を繰り返した。様子を伺い、おびえる侍女に苦笑して、続き部屋に移動して長椅子に腰かけた。
「……お茶を、こちらに」
「ありがとう」
 もう一度、アルベルティーナの日記を読み返す。昨日のことように鮮明でいて、失った重みが増すように。久しぶりに悲しみを自覚した。
 あの騎士団長も、懲りずに、ついてくる。壁際で監視か?
 王都の瘴気は他よりも浄化されて薄まっていた。それを担う神殿の祭場で、瘴気を浴び続けた彼女が、一番苦しんでいるのもよくわかる。
 と、扉が開いた。
「魔女、様」
「つらいなら、休んでいるといいわ。私は神殿に行ってくるから」
「いいえ。魔女様をご案内できなくては、巫女の意味がありません」
「そう。無理しなくてもいいわ。あなたの命で、何も変わりはしないのだから」
 瘴気を身に宿す巫女は本来短命。それを変えるのは信仰。――神の力。
 巫女は寂しそうに、悲しむように――そして、強く、口を開いた。
「私も日記に、魔女様のことを記してもよろしいですか?」
「――日記の内容にまで、文句は言わないわ」

 アンナリーナが息をしやすいように、道々、周囲の瘴気の浄化をしていた。しかし追いつかない。本当はもっと、違うものがあれば……中庭に咲いていた花を無造作に引きちぎって、束にした。いつの間についてきた国王がびっくりしていた。
 術をかけてアンナリーナに手渡すと、ものの数分で枯れた。
「……申し訳ございません」
「謝る必要はないわ」
 術式の構成を変えて、再度手渡した。今度はうまくいったようだ。枯れない。
「今できるのはこれくらい」
「ありがとうございます」
 彼女は、本来ならもう、神殿の浄化された空気の中でしか、生きられないはずだ。
「次の巫女は決まっているの?」
「候補はおりますが、神様の信託がおりません」
 あいつ、仕事さぼってるのか?

2017.05.22

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