22*騎士団長が理解できること*


 神殿に行くと言った魔女、案内をすると言ってきかない太王太后様。途中で花を引きちぎった魔女。何をするのかと思えば、それは太王太后様に手渡され、枯れた。
 何が起きたのか、わからない。
 魔女は想定の範囲内だと言うように再度同じものを作り、今度は枯れなかった。
 ――心なしか体が軽い。まるでパラスの村の中にいるようなあの感覚。まさか本当に、魔女はピュリファの魔女だと言うのか。

「随分ね」
 神殿には早馬を出しておいたが、神殿長と巫女たちの出迎えは、王の訪問時のそれを越えていた。この短時間でよくも……しかしそれすら軽く無視して、魔女は祭場に向かった。場所を知っているかのように。
 途中で、呟いたのが、さっきの言葉だった。
「……お判りになりますか……?」
 太王太后様の言葉は、震えていた。
「あ〜まぁ。私も悪かったわ」
 ここにきて初めて、魔女が謝った。
「そんなことは、ありません」
 二人の会話はそれきり、途絶え、祭場の扉が見えた。体が重い。瘴気が濃い――おかしい。どうしてこの国で一番清浄なはずの祭場の瘴気か、こんなに濃いんだ?
 魔女が扉に触れると――天井まで届きそうな祭場の扉が、いとも簡単に、口を開いた。まるで待っていたかのように、飲み込むかのように。
 それ以上、足が一歩も進まない。流れ出た瘴気に気を失いそうになる瞬間、急に瘴気が途絶えた。おどろいて顔を上げると、黒く濁った祭壇と、壁の文様が白く光り、まるで本当はこうだったのだと言うように、輝き始めていた。
 周囲を囲むように集まった巫女たちの祈りの言葉が、こだまする。風が吹く。
 信仰心を失った我々はどれほどの負担を、神殿に化してきたのだろうか。

 自信はなかった。だが遠く、神のささやきが聞こえてきた気がしたとのちに語れば、陛下も、部下も、父や母、国の民が皆この時、同じ声を聞いたという。

『選択はなされた――』

 神が、囁いたのだ。

2017.05.22

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