23*ピュリファの魔女の選択*


 アンナリーナが死んだのは、その日から一か月後のことだった。巫女として言えば魔女を案内し、神の声を聞いた。かなりの功績だろう。もっとも、彼女はそんなもののために生きてはいなかったのだろうが。
 欠かさず書いたという日記は、神殿に奉納された、次に来た時までに伝えられるのだろう。
 アルベルティーナの墓の並びに、アンナリーナの墓は作られた。毎日のように花をささげていた。
「魔女様」
 九代目の巫女はアリシアと言って、これまた礼儀正しかった。そう言うと本当に私の口が悪いみたいね。
 祭場の瘴気はすべて払われた。あの日から人々の信仰心は増し、王も率先して祈りをささげている。くそう。今まで祈ってきたことなんてないでしょうに。何が「これからスティアに祈りを捧げます」だ調子乗りやがって。
 ――なんだか、腹立ってきた。



 てくてくと街道を歩く。城の造りは昔と変わっていないから、抜け出すのは簡単だった。
 赤辛蕪のスープが食べられなくなるのは残念だけど。信仰を取り戻して、活気があって、キラキラした目でこちらを見つめられるのは、居心地が悪い。瘴気を浄化することは、――そんなに、素晴らしいことではないのだと知っているから。
 今度は、どこに――ん?

 ふと、馬のかける音が聞こえてきた。――後ろから。振り返る気はないが、こちらは徒歩。すぐに、追いついて、前を塞がれた。
「魔女様」
「あんた」
 何よ騎士団長。
「帰らないわよ」
「私も連れて行って下さい」
 斜め上の発言をされた。

2017.05.28

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