*神のみぞ知る*


 自分がいつ産まれたのかもわからないはるか長い時間を、箱庭を眺めながら過ごしていた。
 箱庭の中の人間は、奪い奪われ、殺し殺され、産まれては奪われるような死を繰り返していた。
 ――何が面白いものか。

 そんな折、私は妻を迎えることになった。

 彼女に出会い私は、愛を知り。四人の娘に恵まれた。――そして、彼女は失われた。
 私は喪失を知り――闇が訪れた。根深い所まで浸食した闇は形を変え、今にも破裂しそうになっていた。それに気が付いたある日、四人の娘を呼び出した。

 長女、クリスティーネは防御の能力にたけていて、よく言えば慈悲深く、悪く言えば自己犠牲の激しい娘だった。
 二女、エレオノーラは攻撃の能力にたけていて、非常に美しい存在であったが、他者の美しさを妬む娘だった。
 三女、ペトロネラは探求心に優れていて、よく言えば新しいもの好きだが、飽きっぽい性格をしていた。
 四女、アンジェリカに関して言えば、彼女から産まれたとは思えないほど、根暗な存在だった。

 私は絶望した。彼女の存在をこの娘たちのどこに、見出そうと思ったのだろうか。

 だからこう言ったのだ、『世界の瘴気溜まりを、どうにかしてくれないか』と。

 長女は防御の能力を駆使し、瘴気溜まりのひとつを封じたが、それがひとつではないことを知らせていなかったせいか、足元から新たに生まれた瘴気溜まりに飲み込まれた。
 侍女は自前の攻撃力で瘴気溜まりを吹き飛ばしたが、流れ弾に当たってしまった。当たり所が悪かったのか、瘴気にやられたのか、彼女も消えてしまった。
 三女は地中にもぐり瘴気溜まりの原因を突き止めようとして、それは私の絶望から生まれ、切り離せないほど箱庭の世界に浸食していることを知り、帰ってはこなかった。
 四女は……まさか彼女に、浄化の能力があることを、私は知らなかった。だから、私は彼女に永遠を与えた。――面白くなりそうだと思ったのだ。その時は、

『ずいぶん幸せそうだね。アンジェリカ』

 それは、逆恨みだったのかもしれない。

 だけど彼女、アンジェリカは、彼女から産まれたとは思えないほど根暗で、彼女から産まれたとは思えないほど、口の悪い娘なのだと、その時、知ったのだ。
2017.06.11

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