*永遠の先を生きる魔女 1*

 ダダ漏れな心の声を暴露してついてきた騎士団長――エーリクは、再び見つけた瘴気だまりの定住先(引きこもり先)の一番近い村でちゃっかり結婚して子供をもうけて、あろうことを老後の跡継ぎに据えやがった!!! ――それだけに飽き足らず、孫まで産まれた。双子だった。
「お前さぁ。ホント図々しいと思わないの?」
「申し訳ございません」
 町に家まで立派な家まで構えやがって。私を孫達の遊び相手とか説明して(って言うか最初子供の遊び相手とか言ってなかった? で今度は孫か? ええ?)村にたびたび引き連れてきやがって。ホントにもうっ!
 足を悪くして、寝台にいることが多くなったエーリクは、それでもいつも通り私の話し相手をしていた。
「――また、移動されますか?」
「……。別に。と言うか別に何もなければどこでもいいんだけど……」
 まぁそれは無理でしょうね。“あいつ”の暇つぶしは、――根深いから。ため息をついた。
「それに、町に姿を現している以上。適当な所で去らないと、また魔女狩りに合うから」
「……死刑ですか……」
「燃やしてくれるわ」
「相変わらずですね」
「そっくり返すわ!! 言っとくけど、ついてこなくてもいいんだからね?」
「それは二人が――」
「アンジェ様! 食事の準備ができました!」
 部屋をノックもしないで入ってくる。これがエーリクの孫の一人、妹の、
「アンリ」
「辛いのもあります」
 妹の躾は諦めたのか、私が帰らないように好物があることを告げる、兄の、
「クルト」
「二人とも、あとで見送りを」
「いらないから」
「「はいっ!」」
 双子は息ぴったりで、忌々しいほどエーリクの図々しさを引き継いでいた。
「あんた達さぁ……」
 エーリクは言った。ついて行くかは、二人が決めることです。と。
 ――魔女に付き合おうなんて、ホント酔狂ね。




*時の流れに身を任せ*

 アンジェ様は時々、こちらには到底わからないような遠い目をして考え事をしている。永遠を生きるその身にも、何か、枷や理の力が働いていて、すべては万能ではないと彼女との生活の中で知った。
 ――特に、料理の腕が壊滅的だったのは記憶に新しい……あと、物を散らかしては、散らかして、散らかしっぱなしで……いや、一人だから構わないのか? ――踏んで壊すと怒られるわ、移動すると叩かれるわ……散々な目にあった。
 陛下は頃合いを見て帰ってくれば代わりを派遣すると言ったが、村の娘と結婚して設けた子に跡を継がせた。――妻にだけ、経緯を話すことをアンジェ様が許して下さったおかげだが……
「あんた、本当にわかってないのね」
 村娘と結婚することになったことを話すと、なぜか呆れられた。「――嵌められたのよ」とはなんのことだったのだろう。
 動かなくなっていく体。一向に衰えないその姿。――聞けば爪も、髪も伸びないと言う。それに関しては便利そうだと、そんな感想を持った。

 妻は一人の子をもうけ、そして失われた。自分はこの村でもかなり長寿だった。瘴気溜まりの近くの寿命は、違ってくるのだろう。
 一人息子も結婚して、双子の孫が産まれた。魔女といさかいを起こし、腫物を触るような息子に育てられたとは思えないほど、双子はアンジェ様を、慕っていた。
 息子の嫁は、双子を産んだ後の回復が遅れたことが要因だったのかはわからないが、やはり早い時期に亡くなってしまった。
 今では私と、息子、――それに双子。
 アンリはどこかアンジェ様に、母親の面影を求めていることがあり、迷惑をかけないように何度も伝えたが、同性であったほうが話しやすいこともあるのか話にならない。
 ――ただ、問題なのは――アンジェ様が常識を知っているかどうかで――

 まぁおおむね、順調だった、はずだ。

 ――わかってはいたことだが、もう死を迎えるほうが早い。

 惜しいと思うのは、未練だろうか? ほどほどにして帰ってきてもいいんだぞ、と、手紙を送ってくれていた陛下も退位し、新しい国王陛下は魔女を、知らない。
 しかし信仰は、続いていた。




*森を出て町で生きるには*

 足元を転がるように這いずっていた子供が生意気を言うようになって、次の子供が産まれ。手を引かれるように森の家まで帰る。何がそんなに面白いのか。

 村長の娘と言う階層ヒエラルキーの頂点を出し抜いて、エーリクと結婚したのは見た目には清純そうな娘だった。お前、嵌めたな? 知ってるからね。しかもしばらく私とエーリクの間柄を疑っていて本当に面倒だった。だいたい、エーリクといる時と、いない時で私の扱い違うし。
 まぁ王都から来た騎士だなんて優良物件よねぇ? 怖いわー
 しかし、この村は長く生きたほうだが短命だった。これだけ瘴気が濃ければそうだろう。
2017.06.11

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