*永遠の先を生きる魔女 2*

*予想外の出来事*

 ――不覚だっというか、考えてもいなかったというか、魔物に連れさらわれた。
「おはよう。ピュリファの魔女」
 若い男だ。なんと言うか。
「本当にいるなんて信じられない。神殿で大人しく神官なんてしてなくてよかった」
 おいこら。
「魔物に連れさらわれるなんて、考えもしなかったろう? ああいいんだよ? 縄を切って逃げ出しても」
 こいつ。攻撃はアティー魔女。防御はプロテの魔女の得意分野と知ってて言うか。腹立つ。そして、前にもこんな風に拘束されたことを思い出す。
「ああ分かってるよ。どうして僕が魔物を操るか――知りたいだろう?」
「どうでもいいから殴らせろ」
「……実は僕は瘴気の側に捨てられていたらしい」
 お前。友達いないでしょ。

 要約すると、おそらく魔物に襲われた両親は殺され、近くに瘴気溜まりがあったのか濃い瘴気に一晩さらされ、間一髪で拾われたと。そこで多少の耐性が付いたらしい。うん。多少ね。

「で、なんで魔物?」
「魔物は濃い瘴気を求める! なぜだか知ってるかい?」
 食べるし、強いものが正義だからね。うん。知ってるから。
「力を欲したのは僕も同じさ」
「あんた、話が長いって言われない? ああごめん。人と会話したことないのよね? ごめんごめん。ところで――どうやって、魔物を従えたのかしら?」
「これさ!」
 図星をつかれて顔を真っ赤にしたが、先を促すとそれはもう喜ばしげに話しはじめる。――ごめん最後の一行だけしゃべってくれる?
「瘴気溜まりの近くでとれた宝石は! 瘴気を帯びてるんだ!!」
 それを使って簡単な意志の疎通をはかり、報酬を与えることでいくつかの役割をこなしてもらう。――なるほど。初耳ね。原石とか、ゴミのように捨てたから。別にいらないし。
 と言うか普通の人はそこまで瘴気溜まり近づけないだろうから。こいつが例外であることはわかる。だけどこの箱庭の世界で生きる人という存在は時に目を見張るほど魔術や、時に科学を発展させる。限られた世界でみせるのは、おどろくほどの好奇心。――そして身を滅ぼす。そうは言っても瘴気が現れて数百年。これからもっと瘴気に耐性のある人が産まれ増えて行く可能性はあるかもしれない。それでお払い箱にされるとは思えないけど。
 今の人の常識は覆るかもしれない。――やっぱり、人と関わるべきではなかったのかもしれない。
「だからこそー」
「うるさいわね」
「は?」
「魔物は濃い瘴気を求めるし、力を欲する――そうよ」
 で? あんた。誰が一番強いって?

 身を伝って溢れる瘴気は濃度を増して、おそらく普通の人なら死んでいるのだろう。息が苦しそうだ。
 もがきながら何かを呟いている。
 依頼主より濃い瘴気を感じ取った三匹の魔物。おそらく親子のうち子供は床に平伏して、母親は私の拘束を噛みちぎった。ああー手が楽だわ〜
「苦しそうね」
 男の周りだけ浄化を進めると魔物は、私の横に並んだ。立場が逆転した。
「な、なぜ浄化(ピュリファ)の魔女が瘴気を操る……」
「進化はあんた達、「人」の特権だけど。私には永遠があるのよ」
「――魔女が!!」
「知ってて、捕まえたのよね?」
 にこやかに微笑むと青ざめていた。――後悔させてやるわよ? もちろん。
2017.06.11

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