ゆれている。一定の間隔で上下する。
「んーままー?」
「眠っていていいですよ」
「ん〜眠い……」



「……夢じゃなかった」
 夢だけど、夢じゃなかった。夢だけど、夢じゃなかった!!!! ――じゃねぇ!!!
 目が覚めたら真っ白いベッドの上だった。あれ運ばれてたのは夢じゃないのか。誰だし。
「お早うございます」
「メイドさんきたぁぁぁーーー!?」
 テンションあがるわ〜じゃねぇ!!
「ママは!?」
「王妃様は……」
「王妃!?」
 誰!? 誰が王妃!?
「まだお休みなってますので……」
「どういうこと!?」
「ええと……」
「いや、そのママが眠ってるのはいいのよ。そうじゃなくて、王妃!? 誰が!?」
「姫様。本日のお召し物は……」
「なんだって!?」
 別のメイドが入ってきてまだ着替えてないのかとあきれ顔で声をかけてきたがそうじゃなくて!!?
「責任者だせーーー!!!!」


「なんだ」
「………」
 なんで半裸で色気ダダ漏れなんだこの金髪……
 しかもここママの寝室らしい……いやいやいや。いやいやいやいや。
「あんた!!!」
 びしっと指さしてみた。相手は不愉快そうに顔を歪めたけど何も言わない。
「……なんだ」
 なんかふんぞり返って言われてる。この上から目線に慣れた感じむかつく。
「あのさ。まずなんでママ王妃?」
「……いや将来は」
「希望!? 希望的見解!!? 実はふられたんでしょ!? っていうかこの変態!!」
「うるさいぞお前」
 図星をついたのか嫌そうにつっこみをくらった。変態につっこみはなかったんだけど。
「ん〜ありすちゃーん?」
「ママ!?」
「大好きよ〜さとしさーん」
「パパかよ……」
 しかも寝言……
 目の前の金髪もがっくりと肩を落とした。こいつもママにふり回されているかと思っても、同情しないんだから!!
「おなかすいた」
「……そうか」


「ところで、お前」
「亜莉栖」
「……アリス」
 なんで、ちょっと緊張してんのよ。
「いや、その……そうだ。何かほしいものでも」
「今度はご機嫌うかがいに走り始めたんだけどこいつ」
「……あのな」
「なによ金髪……じゃなくてママにふられたけどあきらめきれなかったおじさん」
「……お前」
「亜莉栖」
「………」
「まぁアリスちゃん。あんまりいじめないであげて。いちおう新しいパパになるかもしれないのよこの人」
 あくびしつつ、見るからに豪華なドレスを着こなしたママが食堂に入ってくる。その恰好どうかと思うんだけどそこは金髪が慌てふためいてどうにかしたからいい。
「この金髪が?」
「そうよ〜オーディは王様に……なったみたいねぇ」
「私が姫なんだけど」
「あら〜シンデレラね〜」
「ママのせいなんだけど」
「あらそうね。おいしい? そのパン」
「うん」
「ママも好きなの」
「……やめて、金髪がつけ上がるわよ」
「オーディも、立派になったわよねぇ」
「だいたいなんでママこの国にいたのよ」
「それは、王族は異世界から妻を召喚してもいいことになっている」
「超迷惑。それで?」
「……お前な……お前にはわからないだろうな。愛する人が別の男の子を宿していると知った時のおどろきを」
「私だし」
「いっそ流す薬を盛ろうかと思ったが……」
「こわっ!?」

『かわいい赤ちゃん。……あの人に会いたいわ』

 オーディルドはその時の表情に衝撃を受け、必死に、もとに帰す術を学んだ。しかし諦めた訳ではなかった。

「そんなこと考えてたのね」
「……いやっその……」
 金髪が墓穴を掘っている。どうでもいい。
「ママ、こいつと本当に再婚するの?」
「それはアリスちゃんが〜」
「私をダシにするのは止めてよ」
「そう思う?」
「うん」
 それはそう思う。
「でもアリスちゃん。あっちでひとりで暮らせるの?」
「そこはー……どうしよう……」
「お前もここで暮らせばいいだろう」
「……」
「あ、オーディ。アリスちゃん呼び方には厳しいから上からな感じで話しかけると怒るわよ?」
「上から?」
「偉そうな感じ」
「存在が偉そうだからどう言っても同じだけどね!!」



「姫様。本日は……」
 あれから数日。勝手に話はまとまったらしく私は姫で確定が入った。ついでに空っぽだったクローゼットにはなんとお針子が採寸したかと思えば数時間後には服と、靴と、装飾品とか帽子とかもろもろでいっぱいになった。
「だから権力者め……」
 ところ構わずあの金髪がママに言い寄る姿ははたから見ていて激甘だ。ぇえい!!


「……ドレスを新調……?」
「アリスちゃん。アリスちゃん。そんなさもどんだけ道楽に税金つぎ込む気だよこの国家最高権力者みたいな顔をしたらダメよ〜まぁ事実だけど」
「ママのほうがひどいわよ。金髪が頭抱えてるし」
「金髪じゃぁほかの人が聞いた時に誰だかわからないわよ?」
「ずっとそいつに対して金髪しか言ってないから大丈夫。他の人間の名前は覚えるわ。しょうがないから」
「そうね」
「ところで、アリスちゃんは何色のドレスがいい?」
「いらないし」
「そんなこと言わないで〜さぁ」
 さぁ。でもねぇ!!!
「っていうか部屋の……衣裳部屋? もういっぱいなのに、なんでまたドレス作るのよ」
「あれは普段着用よ〜今度舞踏会するんですって」
「外堀から埋める気か!!!!」
「話しがぶっとんだわよアリスちゃん」


「で?」
「姫様の教育係に任命されま」
「なんで教育係?」
「文字が読めないと困るんじゃないひまで?」
「ママ、ほかにないの」
「ないわ〜家事全般は全部やってくれるから、ほかに趣味がないと本当にひまよ〜」
「王妃って仕事あるんじゃないの?」
「ええ? そんなのオーディが全部するんじゃない?」
「たまに金髪に同情したくなる自分がいることが認められない」


 日常は変貌を遂げていた。群がるメイトさんに、後ろからついてくる騎士。青い屋根の城と、高窓から見えるのどかすぎる景色と、城下町。
「みとめられるかぁぁぁぁぁぁぁあああーーーー」
 なんか叫びたくなる。
「姫様。言語学の授業の時間なのですが」
「どこに時計があるって言うのよ!?」
「太陽の傾きです」
「わからんわ!!!」

 ドレスには三日目であきてきた。コルセットが苦しい……苦しい。しかしうしろに合わせ目があるので自分では着られない。嫌味か!!!

「まぁ服を変えれば見られるようにはなるのだが、そのガサツな態度はどうにからないのか?」
「このヘタレがぁ!!」
「いつも思うだが、よくまぁそんなに俺を罵るよな」
「私の向こうの世界での将来計画がかかってるんだから!!」
「帰りたいか?」
「向こうのほうが便利だけど、こっちはこっちで慣れてきた自分が切ないのよね」
 なんたってお姫様だし。この金髪が友好的じゃない以外は、おおむね良好だ。ただし言語の授業だけは苦手だが。
「ところで何かほしいものでもあるか」
「だからもので釣ろうとするんじゃないわよ!!!」
 金髪が力なく笑っていたことは、見ないまま背を向けて歩き出した。


2014.09.11
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