酒場に行きたいと押し切ったため。まじで酒場に入った。おお、なんかファンタジーっていうか!
「ゲームゲーム!!」
「アーリ様」
「……酒場だよ!!!」
 他に言いようがなかった。
「見ればわかると思いますが」
「おまちどう!」
 まだ何も頼んでいないのに飲み物がきた。アーベルが慌てている。
「これお酒?」
「席を間違えている。これはあっちだ」
「なんでわかるの?」
「来た時に頼んでいた」
「そうなんだ〜じゃぁ飲む〜」
「お酒ですよ!?」
「かんぱーい!」

 数分後……

「だからさ〜」
「……」
「聞いてる?」
「はい」
「もう。あんたちょっと顔がママの好みど直球だからって許されると思ってんの〜」
「ちょっと待ってください」
「なに〜よお」
「今何か不穏な言葉が」
「え〜あなたママの好みのタイプよ〜顔が」
「なんでわかるんですか」
「パパに似てるから〜」
「それ、は……」
「どーしたのぉ?」
「陛下には言わないで下さい」
「えー」
 考える。うん。
「言わない」
 明らかにほっとしてる。
「そうよね。切り札はとっとくものだよねぇ〜いつかのために……なにこいつも敵かって言いたげなその視線」
「……アーベル? やっぱりアーベル!? どうしたのこんなところで〜最近店にきてくれないし」
 と、会話の途中で金髪巨乳に乱入された。ちらりと自分と比べる。その意味ありげな視線に気がついたのかアーベルの腕にしなだれかかったお姉さんがアーベルの死角でこちらを見て勝ったと言いたげに笑った。金髪がさらに嫌いになった。ただし八つ当たり。
「そのおばさん知り合い?」
 若さを武器に喧嘩を売ってみた。
「おば……」
「厚化粧でもいいけど」
「エリー。今は仕事中だ」
「まぁ、こんな子どものお守り?」
 おばさんは年齢をスルーした。
「いいから離れろ」
「ひどいわ」
 頭を抱えてしっしと追い払うアーベル。
 その光景の向こうに食事を持ってきたお姉さんが見えて私は皿を受け取った。
「いっただっきまーす」
「そんなつれないこと言わないで」
 まだおばさんががんばっている。無視無視。

 数分後。温かい料理も冷めるんじゃないかと言うほどのブリザードが吹き荒れておばさんは去った。
「失礼を」
「んーん。今日ここに泊まったほうがい〜の?」
「子どもが余計な気を回さなくてよろしい」
「あ、そう〜……」
「アーリ様?」
「気持ち悪い……」


「あら〜アーベルごめんなさい。迷惑をかけたわね」
「いえ」
 酔いつぶれた娘を背負って帰れば、部屋の中でお茶を飲んでいた王妃はにこにこと機嫌よく迎えてくれた。
「まま〜ぁ?」
「あらアリスちゃん。寝てていいのよ?」
「ん〜」
 働いてない頭で、背中でもそもそと動くのでおろしてやった。おそらく探していたあろう包を手渡す。えへと、ほほ笑んだ顔がかわいいと思ってしまった。
「ただいま〜ママ〜」
「おかえりアリスちゃん〜」
 まったり言葉を交わして、両手を広げて抱きあう二人。一連の流れを見ていた陛下が舌打ちしている。しかし、次の瞬間おどろかされる。
「はいお土産」
 王妃から距離を取った姫様が、王妃様の反対側に腰かけていた陛下に、あの自分のだと言い放った手土産を手渡していた。


 眠いけど。あとなんか気持ち悪い。あれ? どうやって帰ってきたんだ私? まぁいいか。これこれ。
 奥のソファにいる金髪にすれ違って、包装紙の片方(箱は赤いリボンと青いリボンで飾られてどっちがどっちかわかる)を押し付ける。そりゃぁ私だって。いちおうこの状況と今日使ったお金がどっからきているのか……出所は税金かもしれないけどある程度はわきまえてるつもりよ!!
 おどろいて固まった金髪と、あっけにとられたアーベルは無視してママのもとに向かう。「はいお土産〜」
「ありがとうアリスちゃん」
「おやすみ〜」
「ここソファよ」
 ママの呆れたような言葉が遠い。いつぞやのように靴を脱ぎ捨て、足をたたんで。そう言えば噴水近くで寝ていた時も勝手に移動してた〜ぐー


「アーベル。ね、それ開けてみて」
 愛おしそうに娘の寝顔を見つめていた王妃はそっと立ち上がって、未だに衝撃を受けている陛下の隣に座って言う。
「あ、ああ」
 自分は中身を知っている。あれは――
「まぁ」
 王妃がさもおかしいと口元に手を当てている。それもそうだ。陛下は木彫りのハリネズミ、王妃はネコだ。サイズは手乗り。
「……どういう意味だ」
「そっくりね〜」
「どこがだ」
「……頭?」
 それを見つめた姫様が小さく目つきそっくりと言っていた。なんのことか今わかった。
「頭?」
 陛下が怪訝そうに復唱した。というか反論したそうだ。
「でも一番は目つきね〜こーんなに吊り上って〜私の猫ちゃんよ〜見て〜」
 くすくすと王妃は笑う。陛下は何とも言えず人形を握りしめそうになって手にとげとげが刺さったらしく忌々しげだった。それでもどこか嬉しそうに、人形を机の上に置き、王妃の人形も奪い取って仲良く並べて王妃の腰に手をまわし始めた。
「姫様をお部屋にお連れします」
「お願い。アーベル」
 これ以上は無粋だとそっと声をかけると、王妃は声をかけてきた。――陛下に接するものとはまた違う慈しみのこもった言葉に小さく一礼した。



 朝起きたら、一応自分の部屋だった。だから誰だ運んでるの。まぁいい。ちょっと頭がぐらつくこれが二日酔いか?


2014.09.14
Back Menu Next