「ママ!」
「あらアリスちゃん。きれいよ〜」
「主役が何を……」
「もう作法とか忘れそう」
「早いから!!」
 結婚式をあげろと言ったら、ママと金髪は顔を見合わせた。いいからやれと押し切って数か月。青い空の下でママは笑っていた。王家の婚姻は神殿で上げるものだったが、途中で作法を忘れた、と言うよりも覚える気のないママのおかげで後半はぐだぐだだった。それも、幸せなハプニングと笑う。

 涙が、溢れてきた。一番いい席で見ているので、つまり向こうから見えるってことで、気合を入れて化粧をしてくれたメイドさんに悪い気がして、でも止められなくて。
 アーベルがそっとハンカチを差し出してきて、こうやって時折、優しくされるから。大事にされるからうぬぼれそうで、気持ちが傾いて行くことを自覚しながら受け取ったハンカチで目元を抑えた。
 最終的に、金髪はママを抱き上げて退出することにしたらしい。歓声が大きくなって、二人は馬車に消えた。――新婚旅行に行けと強制したのも私だ。
 王様の仕事? よくわかんないけど、どうにかしたらしい。
 ママのお腹には今度こそ産まれることを望まれる子がもういたと知るのは、しばらく後の話で、喜んだ。
 ママは相変わらず、王妃とは思えない態度で暇を持て余して、金髪はママを溺愛してて甘々で。亜莉栖にやさしくて。弟のあとに妹も産まれてちょっと金髪に呆れたって言うか。
 でも、弟と妹が当然のように「パパ」(ママの趣味)って言うから、私もパパって便乗しやすくなって。距離は変わって行った。



 ――何度目かのスープリの季節がやってきた。
 今日もまた、噴水の前のベンチに横になって――眠る。のは、あなたが迎えに来るからだって言ったら、どんな顔をするのだろう。



 ちなみに、次にまたでかい我儘を言うことになるのは、私の結婚が持ち上がったその時なんだけど――それは、もう。
 恥ずかしいから、内緒。





異世界 Marriage 〜いせかいマジック〜

おしまい

2014.10.04
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