〜二人喧嘩 藺志Win〜



「藺宇!!!!」
 と、言って、王子が部屋に入ってくる。

バァン!!


「―――あら、藺志? 何かあった?」


 互いに自分の名を呼び合いながら、二人は部屋にいた。


「…………お前、よくも勝手なことしてくれたな。」
「何のことですか?」
「とぼけるな!! 大体なぁ!!」

 がみがみと王女を攻めだす王子。なんたって、国庫のお金を半分つぎ込んで、勝手に宝石買っちゃえば、そりゃ怒るわな王子は。
 ―――と、そこに二人の服を持って侍女達が現れた。その存在に、王子は気づいていない。だって、背後だし、怒ってるし。王女は、なんだかしおらしくなった。

 そう、入ってきた侍女たちが何事かと。いや、王子様が王女様に“一方的”に怒鳴りつけている………? と、しか見えないような状況で。

 とたんに、目に涙を浮かべて王女藺宇は走り出した。

「――――――ひどいの! 藺志がいじめるの!!」
 そう言って、泣きながら侍女に抱きついた。小さく肩を震わせて―――――そう、まるで恐れて泣く子供のように、儚い。

「…………王子様。よくもこんなにかわいい王女様を泣かすなんて! 何をしてくれたんですか!!」

「え゛?」
 はじめて侍女達の存在に気づいた王子は、こちらを批判する視線を感じて焦った。
 ――――なんだかまずい、いろいろ。

「侍女皆を敵に回しますよ。」
「は?」
 やっぱりーーーー!!!

「藺志が怒るのもしょうがないの。だって、私が悪いんだもん……」
 と、言って、そんなに藺志をいじめないでと言う王女。

「王女様、なんで王子様をかばうんですか!」
「そうですわ! どう見ても王子様が悪いですわ!!」
「ああ、王女様、泣かないで。」
「どこまで王女様を脅したんですか!!?」
「また王女様を泣かしたら、許しませんわよ!!」

 やってきた侍女が、藺宇を泣かせたと藺志に食って掛かる。


が、
(ちょっと待てーーー)
 幾人もの侍女に説教を食らったが、ちょっと待て、である。

(騙されるなーーー)
 その泣き顔に。


 それから、長々とその場で説教を食らった。
 もう、長いよね。


 震える王女をだく侍女の一人は、一番強く王子に文句を言っているので、下を見ていない。もちろん、彼女の方が、背が高かったので見えなかったろう。それに、その場にいた皆も。

 頃合を見計らった頃に、王女の口元が歪んだのを。


「とにかく、反省していただきます!!」
「………てっ! おい!!」

 言い尽くしたらしく、侍女たちは“藺志”を連れて部屋を後にした。

 もちろん、最後に一言言い残して。

「王子様! また王女様を泣かせたら許しませんわよ。」
「さ、行きましょう藺宇様。」



(だからそいつは藺志だーーーー!!!)



 当分、王子に接する侍女の態度は冷たかった。



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