〜王女様、グルメです?〜


 さてこの国優麗国の王子藺志……王女藺志? まぁどちらでもいいですね。は、コーンのスープが大好きです。
 毎日出ないと機嫌を損ねるのは――“よく似た”違う生き物でしたね。

 この国では、王女様(藺志)のご機嫌伺いは、第一にコーンスープ、第二に甘い物です。常識です。きっと城の兵士の進級試験には出てくることでしょう。……兵士、藺志の食事のメニューには何も関わりがないですけどね。

 ぁあ、無駄知識。知識だけが増えていく……(そんな一句。なにそれ)。

 そして今日も王女様には求婚者がやってきます。最近、来すぎなので王女様が他国の王子様に会う前にご機嫌を損ねないように、朝食にコーンのスープを出します。もちろん、おやつのお供にも。これ、忘れてはいけません。

 さて、そんな朝食風景です。王子様は朝から肉汁滴るステーキ、に魚のムニエル。食べますよく食べます。サラダはコールスローです。コーンが余ったから。ライ麦の混じったパンにかじりついて、王子様幸せそう。
 一方、王女様は湯気の立つコーンのスープ(パセリなし)を一口……あ、王女様パセリ苦手なのです。乗っていれば一緒に飲みますが、嫌がります。
「!!!」
 侍女と料理長と給仕がごくりと息を飲む中、王女様の目が見開きました。
「今日は牛乳を混ぜたの!?」
「はい」
「この前のクリーム入りもおいしかったけど〜これもいいわぁ〜」
 王女様、至福のときです。反対側で、王子様が今度はフランスパンを手に取りました。
「それはよろしゅうございました」
 ほっと、胸を撫で下ろす、料理長。
「ぁあーーー!?」
「はいっ?」
 それをぶち壊す叫び声。
「これコーンが入ってない!?」
「え゛?」
 王女様、まるごとコーンのスープがお好きなようです。ついでに、コーンの産地はベリテ、クリームはウェテル、塩はカリス海で胡椒はセリックというこだわり。しかし誰も守っていません。だって、王女様差がわからないから。ついでに、クルトンはアーリア産の小麦粉から作ったパンをオリードの植物油で揚げたものです。
 どうでもいいですね。
 事実、どうでもいいと言うように王子様。同じくスープを飲んでいます。こちらはクルトン入り。がりがりといい音がします。王子様、クルトンはふやける前が好きなのです。コーンフレークも同じです。
 王女様、コーンフレークはこれでもかと言うほどふやかしたのが好きです。
 だから、一緒にとる朝食にコーンフレークがでることはまずないです。喧嘩になるから。朝から、騒動に巻き込みたくない城の人々は回避癖をつけたようです。

 さて、騒がしくなりそうですが話を戻しましょう。
「コーンは!?」
「あちらに、全部ってない!?」
 コールスローサラダ間食、王子様。サラダボウルごと食べていたことには目を瞑ってあげましょう。
「まぁいいわぁ〜」
 でも王女様、この前はコーンが入ってないのがいいといいました。すべて気分という一言によって左右されます。
 王女様の一番のわがままが、コーンスープにコーンが入っているかいないかであるというのは、知っちゃいけない優麗国の事実(一)です。
 いくつあるのか、数えた人はいません。だって、あまりの情けなさに穴を掘って潜りたくなるとか、ならないとか。真実は謎の中。迷宮入りです。
 コーンスープにコーンが入っていないと騒いだ王女様。それでもスプーンを持ってスープを飲みます。飲みます飲みます……それしか食べていません。
 給仕が焼きたてのパン籠を持ってきて、王女様の隣にしゃがみます。先ほど、王子様にバターたっぷりのクロワッサンを持っていかれました。
 さて王女様、今日はいちごのジャムが食べたいと言っていたので、もちろん、侍女は食パンか白いパンを選ぶと思っていました。
 しかし、王女様、期待を裏切る天才です。最高です。そこで干したぶどう(レシテ産)の入った黒パンを選んだのです。
 そのまま、スープにつけて食べ始めたものだからなんかもう……食堂の中は不思議〜な空気です。誰も、言葉に表しきれません。すばらしすぎて。と、まとめておきます。無難なところではないでしょうか? どうでしょうね。
 そのまま王女様。パン食べきりました。それはいいのですが……いいのでしょうか? 誰かーー誰かー突っ込もうよ〜(それなりに)。
 でも、唯一突っ込み役の王子様。無視です。そろそろ食事を終えそうです。待って?! 置いてかないで!?
 黒パン(干しぶどう入り)に気をよくした王女様、今度は食パンを取りました。今日の食パンはパン職人がいい出来だと一押しの食パンです。香ばしい香り、焼き色。外側のパリッとした感触、中の記事のきめ細やかな事、山形を描く曲線! どこれもこれもすばらしい……ものが、容赦なくいちごのジャムに侵食され、その感触を楽しむ間もなく残さず、食べつくされます。いえ、食べてもらうのは嬉しいですが……なのですが……。いえ、もう何も申しません。


「甘い」
 と、誰も何もいえない中、容赦ない一言。と、手です。王女様の二枚目の食パンに乗せられていくジャムの山に、飽き飽きです。
 さくっと王子様。王女様の手からジャム瓶を取り上げます。
 余談ですが、王女様がたいりょーに使うので、ジャム瓶のストックは信じられないくらいあります。
 そして、その瓶、以外に重いです。
 普段はのほほんと、ホールケーキしか持ち上げられない王女様も持ち上げます。
「きゃーー!!?」
「うるさい!」
「返してよ! まだ乗せ途中なのよ!」
「それのどこにまだ乗せる気なんだ」
「だってジャムを食べるのよ!」
「食パンを食え!!!」


2009.09.27
目次