〜お暇な王女の一日は〜


「ぉおぉお王子ぃーー!!?」
 さて、憂麗国(ゆうれいこく)王の城。大臣の叫びがこだました。


「お?」
 王女らしからぬ声をあげた王子藺志(いし)。―――まぁ、誰もいないから問題ない。

 今王女がいるのは塀の上(どこ?)執務室から追い出された大臣がよく見える。
「あほじゃん」
 そういって、王女は塀から飛び降りた。

すたっ!
「―――ふぅ」
 芝は青く緑。木々は伸びて長く。花は黄と白。
「―――王女様?」
「はい?」
 やって来た兵士が、この場に突然現れた王女におやっと首をかしげる。
「ご苦労様」
 にっこりと微笑むと、なぜか兵士が顔を赤くして去っていく。
「――――さすが俺」
 この確信犯。

 どうやら、まだ藺宇(いう)はお怒りらしい。弦鋼(げんこう)がため息をつきつつ部屋をあとにしている。―――また帰ってくるだろう。

「大変ね」
 まったくもって人事である。
「―――そろそろ、行くか」
 竪琴(たてごと)の時間だ。
「今日は新しい曲だったな〜〜」
 音と歌と舞を好む藺志(いし)は、意気揚々と歩いていった。




「―――今日はここまでにいたしましょうか」
「はい先生」
 時間にして二時間。新しい曲を習って引き始めた。―――あとは練習ーーー

 ぽろんとなった楽器をしまうと、お茶の時間にいたしますと言われる。
「じゃ、今日は外ね」
 今日の菓子はなんだーー?

 甘い物好きこの王女。それは国でも有名だった。―――そう、求婚者が手土産に持ってくるのも中にも菓子折りが。
 ちなみに取り分→藺志:9.5割 藺宇:0.5割だったりする。

 なんだろうか……この割合。



「おいし〜〜い!」
 青空の下、白いテーブルクロス。――並んでいる皿の数、いちまーいにまーい……ごまーい……まだくるんか!!?
「もちろん」
 きほんだーー


「いい天気ですねーー」
 お茶のおかわりを注ぎつつ侍女。
「そうねー」
 焼き菓子に手を伸ばして王女。
 ………ちょっと待てい。大臣達の悲鳴は?

「聞こえない」

 都合のいい耳だ。


 求婚者が来なければ、政治権を持たない王女は原則好きなことができる。――まぁ、政治を学びたいと言えば渋られるかもしれないが。王女の興味はもっぱら音楽。

「さてと、夕食まで逃走」
 大臣が手紙の山を運んでる。―――のが見えた。

「いってらっしゃいませ」
 片づけをしつつ侍女は答えた。


「茉衣莉(まいり)!!」
 見計らったように大臣がかけてくる。
「………なんでしょうか?」
 いつものことながら、王女様もうまいものですわ。
 ―――見計らったのはほかでもない王女だ。
「王女様はこちらでお茶ではないのか!」
「―――ぇえ、もう終えて席をおたちに」
「どこにいったのだ!」
「さぁ。私には計りきれませんと申しますか。」
「王女様……おうじょさま!!」
「お逃げになられたーー!!!」

 相変わらずですわね。笑いをこらえながらも、よく王子と王女にお茶を入れる茉衣莉は思った。

「その手紙はいかがいたしますか?」
「王女様の部屋に運んでおけ!」
「―――かしこまりました」

 そう言った大臣は荒々しく地面を踏んで去っていった。

「―――さて、と。」

・・・・

 多い。
「紙も重いのよね」
 紙は貴重なものである。しかもこんな上等品。――――厚く、装飾のあるもの。封筒ですら金縁で飾られているのだから、かなりの値打ちものだ。
「よっと」
 すべて乱雑に袋にいれて、縛る。持ち上げると……
ふわっ!
「あ……弦鋼様…」
「これで全部か?」
 軽々と袋を持ち上げた弦鋼。
「また、王子様の命令ですか?」
「消し炭にしてこいと……」
 ついでに大臣も。
「いつもの事ですわねぇ」
「…………」
 もう、日常茶飯事。

 またのろしが上がった。―――何の合図?




「あ、燃えてる燃えてる」
 お前宛だーーー
「違う藺宇だ」


「大臣は燃やしたのか?」
「また今度で」
「………ちっ」



「おかあさ〜〜ん! また煙があがってるよーー」
「あら。今度はなんて言っているの?」
「うんとーー遊びに行きなさいって!」
「そうなの。宿題は、終わってるのかしら?」

 小さな民家の平和な会話。



あとがき
目指したもの「藺志視点」「ほのぼの」


目次