〜新婚夫婦は誰に迷惑?〜

「ちょっと藺志」
「なんだよ新婚、でべぎゃ!?」
「なんだって?」
「いえなんでもぐえ」
「なんでもっかい言わないの?」
「なんでしょうか新婚のでぎゃっ」
 廊下に片割れの頭を沈めた女王様、しばらく右手を頬に当てて考え込みます。ぴくぴくと痙攣する片割れが耐え切れないのか必死に床を叩きます。
 遠めに、ほほえましそうに見守る侍女、素通りの兵士。これも日常。
 さて、女王様、心は決まったところで一言。
「新鮮ねぇ……」
「ぇえ!?」


「大変だっーーーーー!!」
「王子の頭の中ですか?」
「お前!! 新婚だからって浮かれるなよ!! 新婚って言えば俺がなんでも許すと思ったら大間違いなんだぞ!!」
「どちらでも構いませんが……それでは」
 正面に向かって向かい合わせ、回れ右。
「俺の話はまだおわっでないだろぉ〜〜ぉおお〜」
「足にしがみつかないでください」
「ぅう、夫婦でこのしうち……」
「それで、一体どうされました?」
 心底どうでもいいと思いながら、弦鋼は問いかけた。
「藺宇が壊れた!!!」
「は? 突飛な行動に出ることは王子もふくめていつものことですよ」
「……」
 いぢめる……と、床にののじを書きはじめた藺志。


「あら藺志様。どこにいても皆いないものとするからいいんですけど一応言っておくと廊下のど真ん中はやっぱり邪魔なので端っこに寄ってくださいません?」
「末衣莉。そんな本当のことを……」
「ほほほ弦鋼様。そこはうまいこと端っこに寄せてくださらないと」
「………私のせいか」
「どうでしょう?」
「最近、どことなく扱いがひどいのだが」
「まぁ。私の女王様を射止めておいて、心の狭い男は嫌われますわよ?」
「なんの試練だ……」
「末衣莉!! 藺宇が壊れたぞ!!」
「え? まぁ少しくらいは標準でしょう?」
「ひでぇ……」


「何してるのよ」
「女王様こそ、隊長の護衛を撒かないでくださいよ」
「だっていらないもの」
「隊長が心配しますよ。あれで本当に真面目な人ですから。しかも新婚でしょう」
「新鮮よねぇ……」
「だれかに紹介されたいんですか」
 思いもしない、望んでいたことを見透かされたと目を見開いた。
「自慢しようかなぁ」
「お好きに。とりあえず撒かないでくれれば」
「なんでついてくるのよ」
「いや、首が飛ぶのは俺なんすけど」
「困らないわよ」
「俺が困ります!!」
「はぁ?」
「………俺が悪いんですか……」
「そうよ」


「ちょっと燕雅、王子様じゃないんだから廊下のど真ん中で座りこまいでよ。邪魔よ」
「……ひでぇ……」


「あ」
「女王陛下、なぜいきなり反対方向に向かうんですか」
「気のせいよっ」
「あとになるか先になるかの違いですよ」
「……怒った?」
「心配しました」
「………ごめんなさい」
「いいえ」
 期待するだけ無駄でしょうし。どちらかというとやり取りを楽しんでいると弦鋼は自覚していた。


「でもあれはきっと確信犯だぞ」
「何をぶつくさ言ってるの? さっさと仕事して」
「すんません……」
 結果廊下においてきぼりにされた燕雅はうなだれた。


「あれ俺の出番は?」
 置いてきぼりの藺志が呟いた。
2013.03.11
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