〜それぞれの主張〜

「雨じゃない!!!」
「ああ。飴玉がほしいのか?」
「あ、ありがと藺志〜さっすがー」
 ころころ……コロコロ……
「違うもん!!」
「そうか。足りなかったか」
 棒状の長い飴を取り出して差し出す。
「わーいわーいこれでたっぷり〜……違うもん!!」
「うるせーーー!!!」
「う、わぁーん! 藺志が怒ったぁ〜」
「王子様、王女様……」
 部屋に入ってきた弦鋼さん。王子様に王女様がいじめられている図を見、いつものことだと無視です。
「王子。王女様ご希望の『思い付いたわ明日は突撃川原でバーベキュー(一息)』、は、雨天のため延期」
「中止だな」
「いじめっこーーー!!!」
「標準使用だ」
「デフォルト万歳ーーー」
「ぁあ膝を抱えて涙目で隅っこで床にののじを書くなら廊下でやれ。邪魔だ」
「廊下も邪魔になるかと」
「確かに。じゃぁ地下室だな」
「助けないーーー!!」
「あの〜王子様〜隊長〜。前日の空模様からどうみても次の日は雨。なのに王女様の気まぐれで大量に準備した炭ですが、どうしますー?」
 ゴトゴトと炭のリヤカーを押して執務室に入ってくる燕雅。邪魔だと王子様の眉が釣り上がります。
「持って帰れ」
「は!!?」
「日頃の行いを讃えて臨時収入だな」
「いえあの王子。即金でお願いしたいんですが」
「現物至急だ。うれしいだろう?」
 ばっさりと切り捨てた王子様。燕雅は灰になった。
「王子様〜なんだかわからないのですが魚介多めのバーベキュー用食料ですが」
 サラサラと風に吹き飛ばされる燕雅の横を颯爽と通り抜ける侍女。
「牛カルビ以外必要ない」
「海老食べたい!!」
「牛カルビ」
「え……海老」
「牛カルビ」
「ほ、帆立とか……」
「牛カルビ」
 口で勝てた試しのない王女様(一生ないでしょうね)、哀れ(?)涙目です。
「あととうもろこしもありますわ」
「焼きとうもろこ」
「甘い」
 一瞬うかれた王女様。床にばったり倒れます。
「や、……焼きとうもろこし……」
 それでもいちおうの抵抗です。
「甘い」
「焼きとうもろこし醤油味……」
 ぷるぷる震えながらお願いです。はたからそれだけ見れば捨てられた小犬ですね。
「妥協」
 ぱぁっと光の指した王女様。小躍りします。目の前をチラチラ行ったり来たり、ウザいですねー
「は、バーベキューが中止なので全部市場で叩き売りですね」
 と、ここまで話が引っ張られるのを傍観していた侍女。今にはじまったことじゃない非道っぷり。
「うわぁぁぁぁああああん!!!」
 ガスッ!!
 一瞬にして響き渡った叫び声は、またも一瞬の鈍い音のあと止みました。いやー世の中平和が一番ですね〜


「……何してんの?」
「見てわからないのか?」
 さてたっぷりお昼まで気絶させられていた王女様。お昼ご飯のにおいに覚醒して食堂までダッシュです。途中ででかい荷物(炭)を抱えてよろよろ歩く何かにぶつかって一緒に階段を転がり落ちるという離れ業(特技?)を披露して、変わらず鬼の侍女に誉められたあと説教をくらうというという珍事件(標準使用)で時間が潰れましたそんなことは関係ないです。
 さて食堂では、これでもかと皿に肉を積み上げた王子様が優雅に焼肉を食べていました。肉の減っていくスピードがまるで何かの漫画のようでしたがここでは作者の表現力が追いつかないので割愛します。
「私のバーベキューーーーー!!」
 走り出した王女様。っていうか危険です。
「ちょうどいいところに来たな。今海老と帆立ととうもろこしとピーマンと人参とたまねぎを食べ終わってこれで心置きなく牛カルビが食えるぞ」
 ずっざぁぁーーーーっと、お約束の如く何もないところでこけてスライディングで顔で床を掃除する王女様。ピタッと止まり、ピクリとも動きません。王子様。無視です。
「私の海老ーーーー!!!!」
 と、またもがばりと顔を上げて叫ぶ王女様。えーんえーんと泣き出します。
「ああ。想像よりうまかった」
 しかし片割れは容赦しません。ここ大切ですね。優しさが。
「シメは五穀米チャーハンだな」
「や、焼きそば……」
「五穀米チャーハン」
「や、焼きうどん……」
「五穀米チャーハン」
「石焼きビビンバーーーーー!!!」
「じゃ、両方だな」
 しかし王子様の選択肢に麺の文字はありません。
 シクシク泣きながら王女様、牛カルビを口に運びます。
「私のエビちゃん……帆立君……焼きとうもころし!!」
「ああ死にたいのか?」
「味方はいないのかぁぁぁあああーーーー!!!」
 叫ぶ王女様は無視して、王子様があえて空けた鉄板で優秀な侍女がヘラを両手にカシャカシャと五穀米チャーハンを作ります。
「ま茉衣莉……焼きそばとか」
「ええ? 私シメは食べない派なのですが、王子様のご要望なので」
 焼肉ではシメが入らないくらい肉を食べるらしい茉衣莉。誰かの財布に大打撃ですね自分じゃないからいいやー
「……」
 しくしくと泣きながらチャーハンを口に運ぶ王女様。味は逸品なのでさらに涙目。どうでもいいが炭を運ぶ燕雅はまだ階段を転げ落ちた時に炭が転がって砕けてぶつかって粉砕して舞って段にできた黒ずみを掃除している。
 途中でかなり本気で川原でバーベキューした場合の護衛と荷物運びの編成を一晩で組まされたのに必要無くなって通常編成で余った兵士をさてどうするかとこれまた真剣に考えていた弦鋼さんが足元に気がつかず(若干お疲れ? というかあきれぎみ)踏み砕いた炭のせいで燕雅の仕事がまだ増えるんですがいつも通りですね。


「ああそうだ。食後のデザートは」
「シュークリーム!!!」
「鉄板で焼けるものにしておけと言ってあっただろう」
「そこ!?」
 問題はそこなのかと王女様しかしまだ諦めない。
「でしたらホットケーキと」
「甘い」
 侍女の言葉にばっさりと王子様。王女様負けません。
「わ、私パンケーキにメープルシロップ!!」
「お好み焼き」
「主食かーーーー!!!」
 バァンとお決まりの如く鉄板に手をつく王女様。熱いですね〜
 ついでにうるさいと王子様の攻撃(肘)も決まり、見事に床に沈みました。あ、気絶している間に火傷の手当はばっちりですさすが侍女。その後王子様は有限実行の如くお好み焼き(スペシャル)を平らげて執務に向かい今日も一日憂麗国は平和です。主に一部の上層部(と言えなくもない存在)の犠牲によって。





 えーんえーん。空耳でなければ次の日は雨だろうと百人中九十人は言う空模様の中次の日に川原でバーベキューとかとち狂ったことを言い出して案の定雨で食材を焼肉に回したのはまだいいものの食べたかったものを半分も食べられなかった王女様の泣き声が聞こえます。
 しかし誰も立ち止まりません。狼少年もびっくりの信用のなさもといいつものことでしたねー
 もうすぐ夕飯の時間です。え? おやつはあれですよ。王子様のお好み焼きの残りでした。いいえ食べかけではありません。ちゃんと優秀な侍女の手づくり(冷えている)でございます。シュークリームは前日から用意してあったはずなのですが、どこに消えたのでしょうか。
 いくら嫌いなものでもあの王子様が食べ物を粗末にする訳ありませんしー……ま、シュークリームが食べられなくて泣くのは王女様しかいませんから問題ないですね。
 さぁ夕飯はお昼ご飯で腕を振るうことのなかった宮廷料理人(賄いは作った)がおよそ一回分の食事を犠牲にして作った(言いすぎー)海老フライ……ではなくカニクリームコロッケです。なんでも憂麗国中の海老が今日朝すべて買い上げられ、宮廷料理人の手にすら入らなかったようです。さすが王子様、仕事は完璧です。しかし予定は未定と言えど残念ですね〜……何もしなければいちおう海老が食べられたのにね王女様。そして、消えた海老の所在を、『〜ブラックホール』となるように「〜」の部分を十一文字で表しなさい。はいー三十秒以内ー


「え、海老……」
 バタリ。それが王女様の最後の言葉だった。完。

 次回! 王女様なんていらね☆ 王子様による王子様のためだけの憂麗国改造秘話! 〜ポロリもあるよ〜
 題名改めまして「王子は女王 〜国を支えた王子の秘密〜」連載開始!



「……と、言うところまで想定した」
「ポロリってなんだぁぁっぁあーーーー!!」
 王子様の求めている答と違う意見を述べた王女様。見事に床に減り込みました。
「う、うう。お、王女様は必要だと思うの」
 おおっと王子様が眉を片方不愉快そうにあげました。これも違いますが妥協して下さるようです。
「なぜだ?」
「ぼ、ボケとツッコミのバランスが……」
「良いところに気がついた」
 正解を言い当てたと勘違いした王女様。パァッと天使のお迎えが着たように起き上がります。――ってダメじゃん。
「大丈夫だ。作者を買収すればいい」
「作者の頭に介入するなーーーーーぁぁぁぁああ」
「なぜだ?」
「し、進行に問題が」
「ないだろう」
「うっうう」
 言い返せない王女様。あほですねー
「それに下僕は一人いれば十分だ」
「あのー王子。それは誰のこっとすかねー」
「ああ。思い当たる節があるだろう燕雅」
「多いにあるんですが……」
「ならばもう言うことはないな。ああ現物支給した炭はどうだ? そういえば廊下に落ちていたのに気がつかず誰かが踏んで廊下が真っ黒になっていたような……」
「燕雅!!! あれほど掃除はきちんとしなさいって言ったのに!!」
「なにーーーー!!?」
 そして彼は星になった。


「ああ王子。明日の予定ですが」
 若干お疲れ気味の弦鋼さん。侍女に耳を引っ張られつつ何かを訴える男とすれ違いましたがスルーです。王子は一言。
「明日は海でバーベキューだな」


副題
「王子様の胃袋はブラックホール」

海でバーベキューがしたかった模様。

2013.07.25
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