「いやぁぁぁぁあああーーー!!!」

 絶叫が響き渡った。―――晴れ渡る午後。




200匹の蛙





「いい天気ですね〜〜セネカ様」
「そうね」
「……」
「……。」
「あのぅ」
「なに?」
「さっきの絶叫は?」
「虫」
「………さむっ」
「なによ」
「殴ってから言うなんて……」
「不味い」
「ひどっ!?」
「おいしかった事がいまだかつてあったのかしら」

 わざとらしくため息をついた。

「そ! そんなこと……」
「ない」
「ぅぅうう」

 目の前でまたため息をついて、お茶を飲む――――やっぱり不味い。

「お菓子がかすむわ」
「霧は出てないですよ? いだっ」
「明日はゼリーでなくてもっと味の濃い焼き菓子にしてもらって」
「わかりました!!?」
「―――あ、やっぱり私言いに行く」
「なんでですかぁーーー!!?」
「だって、迷うじゃん」
「そんな事ありません!」
「嘘つき」
「……ひどい…」
「事実。」
「だってだって」

 いじけて地面にしゃがみ込むエルモア。

「掘らないでくれる?」
 地面。

「芝ぬいてるだけですもん」
「………」
 何が“もん”よ。

「―――はぁ」
「どうしたんですかー? は!! まさかこの世に生きていることに意味を見出せなくなってしまわれたのではっ」
「楽しいわよね、毎日」

 蹴りつけた足がぶつかって痺(しび)れてしまった。―――ちっ、なんだってここにテーブルの足があるのよ。

「本当に!!」
 ―――あんたわね。


 風が二人の会話を―――運ぶ事ない。優雅な、お茶の時間?


「そういえば、プレゼントをもらう時って、どんな気持ちかしら」
「嬉しいです!」
「じゃぁ、どうもらったら?」
「………ん〜やっぱり、予期しないプレゼントって驚きますよね」
「それが、ほしいものでなくても?」
「何言ってるんですか! プレゼントは気持ちの問題です! 自分のほしいものをあげるのであって、相手がほしいかどうかなんて論外です!!」

 実用性とか、個人の趣味とかは? ………聞いちゃいねぇ。

「誕生日のプレゼントは予想しますけど、嬉しいですよね!」
「そう?」
「そうですよ!!」
「箱にサソリが入っていても?」
「………。あ、でもまぁ、かわいいいたずら☆なら……」
「すでに割れていても?」
「えっと、転んじゃったかな〜みたいな?」
「じゃぁ、」
「あ! あのセネカ様!?」
「なに?」
「誕生日って、お祝い事ですよね?」
「……他になんなの?」
「いえ、あの。」
「はっきりしなさい」
「まるで不運の日だな〜なんて」
「たまには、いいのそれに安心して頂戴、誕生日じゃないもの」
「誰かに、贈り物ですか? ――――はっ!! まさか私の知らない間に彼氏が!! どこのどいつですか!? そんな命知らっ」

 ああ、いい音。

「頭が割れる……」
 平気よ、あんたなら。

「やっぱり、驚かすべきよね」
「そうですよねぇ〜〜〜ででで! どなたにですか?」
「もう送りつけてきたわ」
「―――やっぱり男――!! あう!!」
「ごめんなさい、足がすべって」
「………わざとです……」
(注 わざとですよねぇ?)
「なぁに?」
(ああお茶がまずい)
「教えてくださいセネカ様。命ってなんで一つしかないんでしょうか?」
「大切にするためでしょ」
「………。それで、どなたへのプレゼントなんですか?」
「エリス」
「―――?? 何をあげたんですか?」
「秘密」
「………そういえばさっきの声、エリス様ではありませんか?」
「そうなの」

 肯定とも、疑問とも取れるその口調。

「…………。」
「おかわり」
「え゛!?? あ、はい!!」

 カップがまたいっぱいになる。入れすぎじゃない? 誰が飲むと思ってるわけ?

「―――不味い……」
「地面に流さなくたって!!?」
「水あげ」
「芝生に?」
「ねぇ、エルモア」
「なんですか?」
「蛙は、好きかしら?」



 ルシークス国第五王女セネカ、ただ今十五歳。




2006.09.17