エルモアの一日



 こんにちは、私はエルモア・ユーリスティックです。文官になるとゆう夢をあきらめ、今は再びセネカ様の侍女をやってます! 侍女ですよぉ侍女! しかも、セネカ様がこのナイレイルに国にやってきて!! 何を間違ったか王妃様になられたのです。王妃ですよ王妃!! そして私はそんな王妃様の侍女で〜す! 気合入れて頑張らなくちゃ。今日も朝から大忙し。


「………あらぁ〜?」

 と、意気込んでセネカ様のお部屋に向かったんですが……

コッコッコ
 目の前をニワトリがあるく、すねを蹴りつけられる。

「いだぁ!!?」
 涙目になって赤い鶏冠(とさか)のニワトリを睨む。真っ白な毛色をした見事なニワトリは――ひどい!! あろう事が私をバカにしたんですよ!!

「鳥なんかに負けるかーー!!」

カーーン

 ファイトです。




「……ぅ……ぅっうっうっイタイ」
 見事なハイジャンプに見とれると、クリーンヒット。痛い……
 ばさばさと飛び去るニワトリ、さながら、勝者の余裕。

「……ううう、鳥に負けた」
 がっくりとひざをつき、砂を握り締める。遠巻きに眺めていた鳥達が現れ、周りを闊歩(かっぽ)する。

「――っはぁ!!」
 涙を拭いてあげた視線の先に、光――放つ(?)白。

「おいしそうな卵!! そうだこれでセネカ様にお菓子を作ればいいんだ!!」


 ここは、ニワトリ飼育小屋。



「ふんふ〜ん。ふふふ〜〜ん」
 おいしそうな白い卵! これでセネカ様にお菓子を作るんだ〜。なぜか、皆さん私が厨房に立つと追い出すので、今日こそセネカ様=王妃様のためなら!! ってことでO〜K〜

「ふふ〜〜」
 広い城、長い廊下。角を曲がると……

「あらぁ?」
 見たこともない景色。

「誰ですか!! 廊下を移動したのわ!!」

 いや、無理だから。ここにセネカがいれば飛び膝蹴りを食らわした事だろう。

「まったくもう」

 お前だよ。

 そして、そのまま。エルモアは進んだ。

「ここを曲がればセネカ様のお部屋〜〜」

 つかないから。

「ふんふん〜〜ふ?」
 首をかしげて、止まるエルモア。目の前の廊下の真ん中。飴玉。

「かっわいい〜〜セネカ様みたい!!」
 それはどうかと。

「あ!! あっちにも!!」
 そう言って、一定間隔で置かれた飴玉を拾う。そして進む。

「――って! こんな事している場合じゃない! 早くセネカ様のお部屋まで!!」

 目の前に飴玉がなくなってから言うなよ。膨らんだ左右のポケット。

「お部屋は……ここじゃないですか!! よかった〜いい子だわ〜〜自分から来てくれるなんて!」

………もう、何も言うまい。

「おはようございま〜すセネカ様!」
「遅い!!」
ドゴガゴン!!
「いた……いたいーー!!」

 あ、紹介しますセネカ様。このナイレイルの国王妃様であり、私の実家があるルシークス国第五王女様! とっても凶暴な……

「せ、セネカ様。モノローグの途中で花瓶の花(棘つき)を頭に刺さないで下さい」
 痛いです。バラの棘。
「当たり前でしょう。刺しているもの」
「いたいですぅー」
「まったく遅すぎるわ。この方向音痴迷子!!」
「違います! 廊下が悪いんです!!」

 なんで、なんで花瓶投げつけるんですかぁーー?

「って、エルモア? あなた、何ポケットを膨らませてるの?」
「どうぞセネカ様!! 空から降ってきました!!」
 雨。――飴。そして、いったいそのポケットはなんだ? 絶対に入りきっていないはずの量出てくる。
「……そう、明日は焼き菓子にしてもらおう」
「なんですか?」
 花瓶の破片を拾っていたエルモアには聞こえない。
「なんでも、いただくわ」
「はい!」
「で、そっちわ?」
 反対の、右のポケット。不自然なごつごつとした膨らみ
「はい! こっちは卵です!!」
 白く、綺麗な卵が二つ。
「今度セネカ様にお菓子を作ってあげ」
「ゆで卵」
「……はぃ?」
「ゆでタマゴ」
「セネカさま〜ぁ。私、お菓子が」
「ゆでたまご」
「……っう……ぅっう……わかりましたぁ」
 残念。でもセネカ様の食べたい物が先だもん。また今度の機会に!!

 すでに着替えを終えてしまったセネカ様。セネカ様早すぎだわ。ってなんで今度は本を投げるんですか!!!



※ ※ ※



「ほら、朝ごはんはまだだろう?」
「わーいっただっきまーす!!」
 食べ損ねた朝ごはん(毎日)の代わりに、料理人のおばちゃんが余り物で食事を作ってくれる。今はセネカ様は謁見室で国王の隣に座っていたり、気に入らない大臣をいじめつつ、エリス様に嫌がらせの手紙を送っている時間で、私は暇。なんでも、この時間は一人で生きていけるように!! 常に私の傍でなくとっさの事にも対応できるように一人でいろって! 私のことを考えてくれるセネカ様〜〜

「おいし〜い」

 次の用事はセネカ様のお茶の時間にお菓子とティーセットを用意すること。今日は何がいいかな〜〜セネカ様の好きな黒にどくろのカップでいいか。


 さて、今は少し暇な時間。


 すれ違う兵士達、歩きさる侍女。洗濯とか掃除とかやります!! って意気込んだのに。一回でもういいって。王妃様の侍女にそんなことさせられません! 王妃様が快適にお過ごしになられるように努力なさい! だって、でもセネカ様ほしい物は自分でだいたい手に入れる手配するからなぁ。時々、暗闇の中目を光らせてお届け物が来るんだけど、中身なんなんだろう? 今度聞いてみよ。――! そうだ!! なんでかしらないけどまた花瓶が割れてたから、新しいの用意してこないと!!



「これでよっし! ってお花がなーい!!」

 お城の裏には花園があります! 色とりどりで綺麗なんです!!

「お花くださーーい!!」
「エルモアさん? 昨日持ってかれたばかりでは?」
「えーー? それは全部……どこに行ったんだろう?」

 ねぇ、気がついて。エルモア。君の頭に刺さってるよ。全部。

「……こ、今度はやっぱりきちんと棘を取った状態で届けようか……?」
「嫌です!! 私が活(い)けるんです!!」
 そして棘の残ったままの花はエルモアの頭に刺さると。

「……じゃぁ、今日はあっちのカスミソウなんか……」
「またバラがいいです!! 今度は赤で!!」
「………」
 そうだね、血で染まっても綺麗かもね。





「ふふふ〜〜完璧!!」
 そしてまた、繰り返される悲劇。活けられた棘のあるままの赤いバラ。心なしか、すでに血が……?




「さて、そろそろお茶の時間!!」


 どくろのカップを取り出してぇ〜〜


「まずい」
「あのぉ〜〜セネカ様」
「何?」
「まだ、のんでませんけど?」
「そうね」
 もう、のんでから言って下さいよう。今日もいい天気ーーあー雲が灰色で……いかにも、何かでそうですね。
 カチャリとカップをソーサーに戻す音に振り返る。
「おいしかったですかぁ?」
 わくわくと問いかける。だって! カップからですよ!!
「まずい」
「ひどいセネカ様!!」
 うううーーなんでー。あ、何でといえばセネカ様。冬だろーが夏だろーが外でお茶するんですよね。野外ですよ野外!! 寒いし、熱いし。それに不思議なんですよねぇー? 雨は降っていないのに、なぜかいつもセネカ様の周囲はぬかるんで来るんです。今日は白いヒールなんだもん、泥が跳ねでもしたら大変。さて、おかわりおかわりっと。そうそう、今日もセネカ様の好きな焼き菓子です。甘いフロランタン。セネカ様こういうのお好きですよねぇーー。


※ ※ ※


「じゃ、お休みエルモア。明日は遅刻しないで頂戴」
「遅刻ですねーしません!! だだだ!」
 ほっぺた引っ張らないでーー……
「ってセネカ様。寝るには早すぎですよ?」
 夕食が終わって、すぐ。
「だから、明日早起きできるように」
「あ、なるほどー!」
「おやすみ」
「おやすみなさーい!」


 ってことで寝ました。皆様また明日!!




 あ!! 忘れてました。予断ですがあの卵。ゆで卵にしようと思って暖めてたら、雛(ひな)が孵(かえ)って来たのでこっそり小屋に返しておきました!!






おまけ⇒ある兵士の受難



200.11.20