〜1〜

「……ん?」
 ふっと、目が覚めたわ。夜中に。不思議に思って寝返りを打つとすぐ傍にクラウドがいて驚いたわ。いつの間に人の部屋に入ってきたのよ、気がつかないし。しかも、伸ばした腕がぶつかったのに熟睡。最近は忙しらしいって聞いていたけどこれほどね。

 さて、どうしようかしら。

 思いがけず目がさえてしまった。今からエルモアをたたき起こすのも楽しそうだけど、騒音妨害ね。………そうね。
 足取り軽く、セネカは寝室を抜け出した。

ぎぃぃいい――
「……? 王妃さま、いかがされましたか?」
「……」
 ちっ準備が良いわね。部屋の前に兵士が二人、あっちにも。わかってはいたけれど、昼間の倍はいる。どうにか減らしてもらおうかしら?
「侍女をお呼びしますか?」
「それはいいわ」
 力をこめて言うと、何か向こうも察したらしい。
 どうしようかと思いつつ、とりあえず部屋の外に出るかと足を踏み出した、その時。
「――おい」
「あれ? いつ起きたの」
 低い声に振り返った。
「お前……」
 さくっと思った事を言うと、がっくりと頭を下げる。
「最近忙しいって聞いてたけど、寝ないの?」
 どうやら追い討ちだったらしく、さらにがっくりとうなだれている。
「あのなぁ。もっと労わったらどうだ?」
「誰を?」
「言わせたいのか?」
 呆れて問いかけると、その答えは気に入らないと引っ張られる。部屋の中に戻るように消えて――扉が閉じられた。
 明かりの消えた部屋の中。
 そして腕の中だ。
 しばらく、背後から抱きしめられていた。そして、暗闇に目が慣れたころ、目の前に回る腕を叩きながら問う。
「労わってほしいの?」
「多いに」
「じゃぁ寝てなさいよ」
「……怒るぞ」
 ぐりっと体が反転する。それは、相手の行動だ。
「なんでよ?」
 肩に手を置かれて、真剣な目でこっちを見ている。
「久しぶりに来てみれば寝ているっ! いや、それはまだいい。なのに俺がいるのに抜け出すとはどういう了見だ?」
「目が覚めたから」
「……」
 はっきりいうと、クラウドは何かにいらだつかのように頭をぐしゃぐしゃをかき回している。その様子を見ていて思ったのは、クラウドが感じているのは、私がエルモアと会話が通じない時に感じるいらだちと似ている。ということだ。
「どうかしたの?」
「お前、本気で言っているんだな」
「……そうね」
 ある意味で、とぼけているところもあるが。
「まぁいい。目が覚めたなら丁度いい」
「散歩に行きたいんだけど」
 ひやりとしたものを感じ取って、すぐさま逃げようと身を翻す。遅かった。
「逃がすと思っているのか?」
 ……本気で眠らせてもらえなそうだと、ため息をついた。


「Good Night」


2009.03.24