I
海辺の別荘


 さて、残暑が厳しくもゆるい、温暖化の異常気象。それはいい。いいというかよくないというか、世間的に良かろうが悪かろうがどうでもいい。
 問題は、
「いー加減にしなさいよこのぼけーーー!!?」
「なんだ。海辺の別荘がそんなに気に入らないか?」
「海と別荘という単語なら大好きよ!」
 立地が崖っぷちで、海が真っ黒でなければね!!!? ありえないでしょう!?
「夕飯はイカスミのパスタだと言っていたぞ」
「せめて白いものでごまかせーーー!?」
「無理だろう」
「うるさーい!」
 あんたが一番あつくるしいわぁ!!

「さぁお嬢様、海ですよ〜」
「泳がないから」
「ぇえっかにさんと戯れるのでわっ!?」
「誰が言ったのよ誰が」
「そしてまとめて魔王様に遊ばれるんですよね」
「喧嘩売ってる……?」
「なぜですのお嬢様ー!?」
 これで素か? 本気で?
「かにさんはゆでるとおいしいですわ〜」
 それは同感……

 ……………。

「で?」
「で、とは?」
「なんの事ですかね」
「なんでしょうね」
「なんでもないでしょう」
 魔界三人衆は、砂場を横歩きでかささささと横歩きで動く動物を素手で捕まえていた。
「なんでもないですませる気ね」
「なにか、どことなく嫌な予感が」
「ほっとけ、ただの勘だろう」
「あんまり侮ってはいけませんが、この場合……」
「魔王にさぼってたって言いつけてやる」
「おい」
「おいおいおい」
「濡れ衣ですね」
「でもいくら目の前に結果が転がってても信じてもらえないんでしょうね」
 彼らが捕まえた蟹の数、ざっと二十四匹。
「ペットの言葉のほうが重みがあるのか」
「そっちのほうが楽しいからでしょうね結果が」
 はぁ……と、ため息をつく三人。勝った。
「でもラーラ、困るのは貴女ですよ」
 と、なぜか勝ち気な男の言葉に勝利の余韻をぶち壊された。
「なんでよ」
「そうなったら魔王様に、ラーラは蟹より鯨が食べたいと言っていたと言いますよ」
「いやーーー!!?」
 そんな魔王が喜んで、滞在時間が長くなりそうな一撃はいやーー!!?

「ラーラ、イルカがみたいそうだな」
「嫌ーー!? 何も言ってないのに言ったと捏造されてるぅーー!?」
「ぁあ魔王様」
「相変わらず言いタイミングで登場しますよね」
「お前たち、はかどっているか?」
「これを見ていただければ」
「決めるのはラーラだからな」
「「「………」」」
「さぁラーラ、魚類だかほ乳類だか天然記念物だか知らないが、でかけ」
「あんたに遊ばれるくらいなら蟹であそぶわぁーー!」
 ダュッシュで、ラーラは走り去った。しかし、
「おじょーさまーぁー! スイカ割りですわぁ〜」
 メイドが黒いスイカを持って登場した。

「なんで黒いのよ、ここまで」
 外側、真っ黒。
「中は赤くて、おいしいですわぁ〜」
「そうね」
 なんか血みどろの惨状みたいだけどね。
「ラーラ、種まで食べないともったいないだろう」
「そういうあんたはなんで真ん中しか食べないのよ」
「ここがおいしいからな」
「それで私の食べ方にけち付けようとでも? ぇえ!?」
「ぁあ、あついなー」
 いろんな意味で。
「スイカがうまいなー」
「ですねー」
「頭かち割るわよ!?」
「スイカ投げるな!?」
「うるさーい!」
 なんで私を呼ぶ頻度が増えてるんだぁ!?
「それは私が暇だからに決まっているだろう」
 ぴきしと、握っていたスイカにひびが走った。
「ラーラ、スイカを投げるのは止めなさい」
 デューがその手から解放した。
「重くて大変なのよ!?」
 ラーラは、切れた。いろんな意味で。
「だから投げるな……」
「おじょーさまーストックあるだけ持ってきましたわ〜」
 ……メイドは優秀だった。

「ん〜おいしかったぁー」
「よかったですわぁ」
 パラソルのしたでなごむラーラ、メイド。足下には血の海。もとい凶器に成りきれなかったスイカの残骸。
「あの辺の惨状は無視ですよ」
「まぁラーラですから」
「そうですね」
「さて、鯨でも見」
「見たくないーー!」
「ラーラ、夕飯がないだろう」
「蟹でしょう!?」
「鯨だ」
「イルカは!?」
「食べるのか?」
「食べないわよ!?」
「なら海で泳いでこい」
「だめですわ〜魔王様、さっきみたらクラゲがうようよいますの。お嬢様の肌に大打撃ですわ」
「よかったー断って」
「ううっせっかく、せっかくお嬢様がいらしているのに」
「最近、来すぎだから」
「永住してしまえばいいのに!」
「しないから」
「うう……永住すべきですよねぇ、みなさま」
 魔界三人衆は一瞬、口を閉じた。はたして、機嫌の悪い魔王様の八つ当たりと、機嫌のいい魔王様に遊ばれるのどちらがいいか、天秤は傾いた。
「そうだな」
「そうですね」
「そうすべきです」
「クラゲと一緒に海に沈んでこいやぁーーー!」
 と、ラーラが力一杯叫んで、ふと首を傾げました。
「クラゲ?」
「はい」
「どこにクラゲが?」
「海にとけ込んでますので見にくいのですわ」
 ……トラップか?




I
森の別荘

その1、狩り


「それで?」
「それで? じゃなーいわよ!? ふざけんじゃないわよ!?」
「ラーラ、鳥が逃げるから叫ぶのは止めなさい」
「これが叫ばずにいられるかぁぁぁああーーー!」
 しかし、耳にいたい攻撃を食らったはずなのに、魔王は素知らぬ顔だった。
 それを見て取ったラーラは、気合いを入れて息をすって、背伸びをして鍛え上げた腹筋を披露した。
「私は一昨日きたばっかりだぁぁああーー!!」
 そうなのだ。夏休みの一見以来。日々ラーラがいることになれてしまった魔王様は、(ラーラに)迷惑なことにその頻度が増えてしまったのだ。
 メイド、大喜び。魔界三人衆、魔王様の逃亡に頭を悩まし。ポールは話題にもあがらない。
 いやぁ〜日常って、最高だねぇ〜
「最悪だーーー!!!」
「ラーラ」
 若干きいてきたのか、片手で耳を押さえながら魔王様がう呼びます。
「なによ」
「夕飯が逃げるぞ」
「素手でイノシシでも捕ってこい!」
「そんな野蛮なことできるわけないだろうラーラじゃあるまいし」
「私にできると思ってんのかーーー!!?」
「そうですわ魔王様」
「メイドか?」
「やっちゃいなさいピア!」
「お嬢様は素手で熊しか倒せませんわ」
 ぁあと、魔王は納得した。
「ふざけんなぁぁあああ」
 ラーラの怒声が響きわたった。



その2、きのこ

「ねぇこれは?」
「お嬢様、それはクログロ茸ですわ」
「さっきの?」
 あの毒キノコね。
「はい」
「じゃぁこれは」
「それはくっろぐろ茸ですわ!」
「ふざけんなぁ!?」
 べしっと地面に叩きつけた。
「ぁあっこっちは食べられるのに!」
「ぜんぶおなじだぁーー!」
 だって、真っ黒だから。



その3、搾取

「実がたっくさんなってますわ〜」
 両手を広げて一回転。
「揺するといいのよ」
 でかい木を蹴り飛ばす。
「バックに巨大な何かを背負った悪女のようにですか」
「そうそう。身ぐるみはいで家族を担保に脅すのよ……違うわぁ!?」
「ノリノリでしたね」
「魔王様と一緒になって被害が拡大するんだ」
「ぁあやだやだ、後始末する身にもなってほしいね」
「っていうかあんた達三人ここにいるのに、城で誰が書類切り刻んでるのよ」
「誰も切り刻んでないはずだが」
「そうだそうだ」
「間違えた。提出日ごまかすんでしょう」
「「………」」
「僕たちはペット以下ですか……」
 そういえばあの紙飛行機、回収したの? と聞くと、三人とも頭を抱えた。



おしまい。


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