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それは恐怖か殺戮かと悩んでも意味がない


「さぁお嬢様」
「だから私は帰るんだぁぁぁぁあああああーーーーー!!!!!」
「お嬢様落ち着いて下さいまし。魔界住人一大イベント件お嬢様で遊び隊発足記念二十キロ肝試しになんの問題が?」
「ありまくりだぁぁああーーー!!!」
「ええ!?」
「ああ、長さの問題ですよね。大丈夫です簡略バージョンで一キロがありますから」
「最初から作るなぁぁあああーーー」
「まぁこれは毎年の恒例行事です〜まぁちょっとお嬢様のために力を入れて」
「で二十キロですからねぇ……」
「最新記録だな」
「うるさーーーいい!!」
「大丈夫です〜お嬢様を驚かすためだけに生きてますから〜」
「私は帰るんだぁーーーー!!!」
「ネタがわかっているのに何を嫌がる」
「出たわね!! ラスボス!!!」
「喜べラーラ、一緒に行ってやるぞ?」
「ふざけんなーーーー!!」
「なんだ? 嫌なのか?」
「絶対嫌」
「なぜだ? 全部仕掛けしかないぞ」
「だから嫌なんだーーーー!! なんで!? なんで脅かされるとわかっていながらそんなところに行かないと行けないのよ!!!」
「娯楽だ」
「一人で楽しんでこいやぁぁぁぁぁああーーーー」
「何を言うラーラ」
「な、何よ」
 真剣に魔王様。ラーラちょっと引きます。しかし、
「作り物だと知りながら本気で驚くラーラを見るのが面白いのであって一人では意味ないだろう」
「ふざけんなぁーーーー!!!!」
 はたと気がつくラーラ。
「じゃぁ今まではどうしてたのよ」
「今までは魔王様は驚かせる側でしたね」
「二人に一人くらい首が飛んでたよな」
「スプラッタかーーーー!!!!」
「年によって首が飛ぶ人数が違うから賭けの対象だったな」
「なんで首が飛ぶってわかってて肝試しするのよ」
 ? と、何を当たり前なことを聞いてきたんだこの女はと言いたげな三人衆。
「死ぬとは限りませんから」
「そういう問題じゃないでしょ!!?」
「問題は脅かす側も首が飛ぶことだったな」
「無差別かーーー!!」
「そろそろ疲れて来ないか?」
「私を帰せーーーー!!!」
「まぁまぁお嬢様。見える限り火の玉っぽいのしかありませんし」
「見える限りって何よ」
「ある意味一番危険な魔王様が隣にいるんですから安全ですよ」
「首が飛ぶ心配はしなくて良さそうだって? そもそも生き残るのって最低条件よね」
「いやーそうでもないですねー」
「だよなー」
「ですねー」
 あっはっはと笑う三人衆。残念なことに投げつける鈍器が見当たらないラーラ、手短な装飾を手にとると……
「きゃーーー!!?」
「ああそれはクリスマスのツリーのりんご(改造ver)のため噛みます」
「いやーーーー!!!」
 ラーラが渾身の力で放り投げたりんごらしき黒い生首っぽい物体が孤を描いて飛んで行き……
『ぐきゃっ』
 何かおどろおどろしいうめき声とともに静かになりました。
「なななななぁによ今のは!?」
「あれは死にましたねー」
「これで一人目だな〜」
「ふっふっふ。今年はラーラがいるからといってもちろん必ずしも数が減るとは限りませんからね。有休は僕のものです」
「ああ? 負けねーぞ」
「賭けなんかどうでもいわーーー!!」
「ほらラーラ、これが明かり」
『けーっけっけけっ』
「ああ明かりは置き忘れ防止のため一定期間揺らさないと鳴る使用」
「うるせーーー!!」
 パリーンと地面にたたき付けられて割れた明かり。なんだか前にもこんな光景があったような……
「ラーラ、別にこちらは明かりなんてなくてもいいが、いいのか?」
「私は不参加なんだからーーー!!」
「まぁまぁあとが詰まってますし」
「お嬢様で遊び隊なら私の他には必要ないでしょ」
「っちこの猿知恵が。うしろから呪いの言葉吐きながら付いて行きましょうか?」
「脅すんじゃないわよ!!!」
「それだと被るな」
「……何が」
 ボソッと呟いた魔王様。ラーラ。もちろん聞いています。
「いやなんでもない」
「中途半端な発言をするなーーー!!」
「さぁ行くぞラーラ」
「いやーーーひっぱるなーーー!!!」


「……静かになりましたね」
「遠くに悲鳴が聞こえますけどね」
「あの辺だと大量にさっきのりんごを飾ってありますね」
「ついでにそろそろ地面からゾンビが湧き出てくるんじゃねぇか?」
「いやいや冷気に混じって水が霧のようにうなじに直撃ですよ」
「ぁあなんか去年は水量を間違えて二、三十人吹っ飛ばした奴だな〜」
「意外にすぐ脇でガタガタと音がするのも驚きますよね」
「いやもういかにも何か出そうな扉を見つめさせておいて肩を叩かれでもすれば……」

『いやぁーーーーーーーー』


「ふんふーんふふふーん」
 お嬢様の悲鳴が聞こえようがなんのその。上機嫌でお茶の準備を進めていた侍女が通り掛かります。その腕には大量の蝋燭。
「そういえば、チェックポイント用の蝋燭は」
 と、何か不吉なことを思い出した三人衆の視線の先。
「あら〜これはなんですかね〜いちばーん。にばーん。さんばん? (注)チェックポイント用?」
 侍女の言葉に、三人衆は黙した。


「はいはいどもーここはチェックポイントそのいちでっせー!」
 と、りんごに笑われ噛み付かれそうになり、先に進むために足を踏み出したらむにって何かを踏んだと思ったらゾンビ(ドM)だったり、ぴちょーんって音がしたら首筋から背中にかけて水が服の間に入り込んだり、細長い通路の脇から予期せずガタガタと音がしたり、ちょっと明るくなっててすわ出口かと思ったら扉は開かず肩に手が落ちてきてパニックに陥ったラーラが逃げた先の壁がスパーンと開いてテーブルを前にヒラヒラと楽しそうに手をふっていた白いお化けに化けて声をかけてきた魔界人を壁に刺さっていた長い棒で殴って昏倒させて『チェーーークポイント☆そのいっちー』と書いてあった看板を粉砕した。第一チェックポイント通過。ルール無用です。良い子は真似しちゃダメよ。
 この間すべて魔王は傍観。


ちなみに会話(?)
「いやぁーーーーーーーー」
「ぎゃぁ!? いきなり何しますか姐さん!? その武器はどっか!?」←以下強制終了。



「ねぇ今チェックポイント一とか書いてなかった?」
 息を整えつつ恐怖をとりあえず紛らわせたラーラが問い掛けます。
「なんだそれは?」
 気まぐれで驚かす側の魔王様が細かいルールを知る訳ありません。ここで最高権力者が知らないルールの存在なんて塵ひとつの価値もありません。
「ちょっとじゃぁもうここがゴールでしょう!? もうここがゴールでいいじゃん!!」
 結構涙目で本気で訴えるラーラ。
「もといた所に帰らないと帰れないぞ」
「足元を見るなぁーーー!!」


「確か第一ポイントは行き止まりですよね」
「チェック者のうしろの所定の位置に蝋燭立てると扉が開く仕組みだな」
「立てる場所は九十ヵ所あって、チェック者の謎々に答えるとヒントが貰えるんですよね」


「ねぇなんか壁壊れてるんだけどこっち?」
「たぶんそうだろう。というかお前が壊したろう」
「たぶんかよ。細かいことはどうでもいいのよ」
 そういいながら、魔王の背中をぐいぐい押すラーラ。
「なんだ?」
「先行ってよ」
「うしろに一人増えるかもしれんぞ?」
「前からなんかふって湧いてきたらどーすんのよ!!」
「殺す」
「………」
 一瞬、それならオッケーかと脳内パニックで思考回路が正常ではないラーラが頷きかけ……
「っちがーーう!!!」
 スパーンとハリセンでツッコミを加えました。いつも思いますがどこから出てくるんでしょうねそのハリセン。
「なんだ何が問題だ」
「お前の存在だーーーー!!」
 あながち間違いではないラーラのツッコミでした。


「第二チェックポイントまではスプラッタが中心ですね」
「お前の兄貴が監修したんだろ?」
 レイスがセンドールに問い掛けます。
「まぁそうなんですが」


「ままままぁぎらわしいのよーーーー!!!!」
 第二ルート(入っちゃう?)とふざけた看板を頭上に掲げた道の先で、再びラーラが叫びます。予断ですが看板はラーラの手の届かない所に設置してあったので無事です。
 さて足元には血溜まり。死し累々と死体……と思い気や人形。すわゾンビの再来かとびくびくしながら通り掛かるラーラは全部人形だと思うと恐怖を怒りに変えて進みます。
 と、そこへ、ガタンと大きな音がしました。
「いやぁーーー!?「ぐふっ」 ……?」
 どさくさに紛れて魔王様の背中を蹴飛ばしたラーラ。チャンスは逃しませんねーしかし何も起こりません。
「なななななにするのよいったい!!」
「こちらの台詞だが」
 背中をさすりながら魔王様。
「ジジイはどうでもいいのよ!!」
「誰がジジイだ」
「うるせーーー!!」
どごん!!
 ラーラが立っている場所から二十cm離れた所に、斧が振り下ろされます。それは死し累々と積み上がっていた人形ではなく、壁に設置してあった騎士風の甲冑でした。ドロリと、中から黒いゲル状の何かがあふれ甲冑の口元が楽しげに笑うように釣り上がったように見えました。
「きゃーーーーーーーー」


「なんでも兄は最近ラーラの世界の「ホラー映画」というものにはまったそうで」
「どうやって手に入れたんだよ」
「そこの侍女を買収したそうです」

「ぁあ早く戻ってきてくださいまし〜お嬢様〜」

「ああ……」
 レイスの目が遠い。
「なんでも「恋人と別れられてすっきり〜ですねーあああなたのおかげだそうですーねー。で何をくれますか〜? お嬢様に勝るものはありませんが〜」だそうです」
「へぇ」
「で、斧を持って追い掛けて来る使用になっているそうです」


「どこの恐怖の館だぁぁあーーーーー」
「また増えたぞラーラ」
「解説するなぁーーー!!」
「おおあれはさっきの人形だな」
「起きてるーー!!」
 目の前にゆらりと立ち塞がったのは、確かに先ほど死んでいた人形です。使いまわし?
ゴン! べちゃ!?
 しかし前にも現れた甲冑に呆気なく真っ二つ。びしゃぁと血……血? が飛び散ります。
「死ねぇーーーー」
 どさくさに紛れて魔王様を突き飛ばすラーラ。
「ラーラ。私が死んだら元の世界に帰れなくなるぞ」
「だから足元を見るなぁぁぁぁ」


「兄が監修したのはいいんですが、」
「が?」
「兄が監修すると必ず分かれ道とか、うっかり死んじゃう造りなので」
「魔王様の出番が減るな」
「それより嫌な予感がしますよ」


「はぁ!!?」
 恐怖で道を走っていて、ちょっと明るい場所でふとわれに帰ったラーラ、ここはお約束、目の前のは第二チェックポイント……粉砕済み。
「私をひとりにするなぁぁぁぁぁーーーー」

続く。


サブタイトル『殺戮とホラーは紙一重』
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