I
だい1週め


「まぁ〜お嬢様〜ステキですわぁ〜」
「どこが」
「だってお嬢様」
「言わないで」
「だ」
「言わないでよ!」
「これで連続一ヶ月滞在ですわねっ」
「うれしくないーー!!」

 さて、騒がしい彼女はほっといて、話を進めましょう。
 まあ、あれが主人公ですが。問題ないですね。

「魔王様〜?」
「なんだ?」
「いえ、その……」
「なんだ? 書類か? サインか? 休暇か?」
「あ、僕休暇で」
「抜け駆けですか?」
「そうだ。俺の分がない」
「お前たちに休暇があるわけないだろう」
「ぇえ!?」
「そんなことよりお前たち」
「そんなことですまされた……」
「お前が抜け駆けするから」
「本当ですね」
「いや自分言っただでしょう!?」
「濡れ衣です」
「心外だ」
「どの口が……」
「お前たち、仲がいいのはけっこうなことだが、あれを終えてから帰れよ」
「は?」
「今日の仕事は終えて……」
「今日の分ではないからな」
 魔王様は、それはそれは晴れ晴れとした顔で言いました。
「お前たちが提出日をごまかしたものだからな」
「ごふっ」「げっ」「ああ」
 そういって、魔王様は姿をくらましました。彼がまともに部屋の扉から入ってきた姿など、見たことありません。
 魔王様がいなくなって、ひゅーと冷たい風の通り抜けた部屋の中。三人が動き出しました。
「おかしい。おかしいぞ」
「なんかあったのか?」
「普通なら一人くらい短冊切りに似た飾り切りになってますね」
「しかも休暇とか言い出しましたし」
 わいわいと話を進める。魔界三人衆。その隣で、影が薄くすっかり忘れられていた彼が言います。
「あのー私は休暇に……」
 言葉の途中で彼はひっと息を飲みました。なんと言っても、振り返った魔界三人衆の表情と視線に射抜かれたのでしょうね。
 誰かが、口を開きました。
 そして、彼の姿は永遠に。

 さてさて、話を誰に移しましょうか。我らが主人公がいいですか?
「さぁお嬢様〜今日はお赤飯ですね〜」
「認めない! っていうか赤飯は好きなだけに認めない!!」
「なら、豆ご飯ですか?」
「そっちも好きよ!!」
「ならちらし寿司ですねぇ〜」
「なんかグレードアップしてる感じがいやーーーー!!!」
「お嬢様がいてくださるので腕のふりがいがありますわ」
「料理作ってたの!? ってかそうじゃないわよ!?」
「茶巾のお寿司も嫌いですの?」
「つーか食べるなら全部食べたいけどそうじゃなーい!」
「なんでですの?」
「うわーん! 話が通じないーー!!」
「夕食はどういたしましょう」
「赤飯がいいっ! ……ちがーうっ」
「わかりましたわ」
「ぎゃーー!!?」
 自己完結と言うか、必要な情報を得た優秀な侍女はラーラの嘆きをさくっと無視して部屋を後にします。
 ぇえ、いい笑顔で。きらめいていました。眩しいくらいに。
「……だから、」
 部屋に残された彼女の肩がふるふるとふるえます。
「だから」
 がばりと頭を上げて息を吸い込みます。
「だから話を聞けーーー!!!?」
 本当です。せめて話の流れがわかるくらいには会話してほしいです。

 事の発端は彼女がいつものように魔界に呼び出しを食らった時になります。

「私を帰せーーー!」
「やぁ久しぶりだなぁラーラ。その声も久しぶりに聞くとどこか心地よい気がす」
「かえっせぇぇぇーー!!」
「ラーラ、私がまだ話しているだろう。人が話している最中に」
「うっるさーい!!」
「ラーラ、」
「ラーラじゃなーいぃ!」
「そうそうラーラ、部屋の模様替えをしておいたぞ」
「わたしをかえっっっ……模様替え?」
「そうだ。ラーラの大好きなスパイダーを採用しておいたぞ。ぁあもちろん、泣いて喜んでくれてかまわないぞ」
「勝手に変えるな!! 決めるな!!」
「勝手に決めてなどいないだろう」
「私の意見は!?」
「私が決めたのだから」
「かぁってにきめるなぁぁーー!!」
「魔界の代表だぞ」
「私は人類の代表だー!!!」
「そうか。ここは魔界だな」
「さも当然のように何度も頷くなーー!!」
「ラーラ、蜘蛛は嫌いか?」
「嫌いだーー!!」
「ほかに蠍と百足が……」
「他の選択肢を用意しろ!?」
「なにぃ!? 魔界のトレンドだぞ!? 今の!」
「私は人間だーー!!」
「なんと、蜘蛛は駄目か……」
「さそりとムカデも却下よ!!」
「なんと……それではストライプしか残らないじゃないか」
「なんで最後の選択肢がストライプなのよ!!?」
「ラーラ、思うのだが」
「なによっ!?」
 ぜぇっはーっと息を切らせつつ応戦。
「いつ水分補給をするのだ?」
「お前に心配されたかないわーーー!!」
 ぜぇぜぇと、一ヶ月ぶりの声量に息を切らすラーラ。もちろん、ここでもラーラとしか呼びません。
 ナレーションは、基本ぐだぐだですよ。
 漢字は画数が多くてね〜
「そうか、わかったぞラーラ」
「なによ」
「これだ」
「金貨がどうしたのよ……金貨ぁ!?」
「でた面で話を進めようじゃないか」
 にやりと、魔王様が笑います。ギャンブル魂を奮い起こしたラーラも笑います。
「表よ! それ以外は認めない!!!」
 ぴぃーんと、コインが空を泳ぎます。小気味いい音で魔王様の手の中に収まって……
「裏だな」
「ぃややぁぁあああーーー!!?」
 コイン一枚で、彼女の命運は決まりました。勝負運ないですねー

「さぁラーラ、期限は一ヶ月だぞ」
「なんでよ!?」
 きいてないわよ!?
「ラーラ、一ヶ月も来なかったのだから、一ヶ月は滞在して当然だろう?」
「いやぁーー!!? 私の知らない言語で話さないでーー!!!?」
「ラーラ、会話は成立しているだろう。失礼な」
「意志の疎通が図れないーー!!?」

 そして、冒頭に戻る。


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