Rain.
 どうして、泣いているの?



 そう言って、少女は傘を差し出した。だけど、受け取らないから。少女は傘を差し出したまま。



 空は、雨を降らせたまま。

 止まない雨がないように、雨の降らない晴れもない。
 晴れ続けることはないの。雨が降り続かないように。




 濡れるのは厭わない。本当に? だって、寒いじゃない。
 心が寒いのに、身体まで冷やしてしまうの?

 二人でひとつの傘を差したってどうせ濡れるわ。そんなの知ってる。
 雨から逃げても、逃げられても、自分から逃げることはできない。
 私は、私以外の誰にもなれないのに。
 無理だったの、最初から。知らなかったの。わからなかったの。
 誰も私なんて、求めてないから。
 私が誰も求めてないから。
 悲しいと、言った。あの雨の日。


 届く物だと思っていたあの声。あの頃の自分。

 差し出されたままの、少女の傘。

 よく、わからない。




 毎日泣いて、ゼロに戻すの。そして繰り返す。
 一からはじめて、十になったらゼロに戻して。同じことの繰り返し。

 歌おう。



 雨の音が止まない。
 少女も、少年も肩を濡らしたまま。
 傘の色が、見えない。


 わからないよ。だけど、あなたはそれでいいのね。


 いつだって楽なことは、楽しくなかった。
 いつだって楽なことだけを選んできた。
 それ以外を選ばなくていいように、この目は、何も写しはしないから。

 カガミよ鏡。何を映しているの?



 もし少年が傘を取れば、
 もし少年が傘を打てば、
 もし少年が、



 少女は。
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