これから訪れる未来


「あの役立たず!」
「おい。沼、おちつけ」
「おちついてますよ。ぇえ、これ以上ないくらいに」
「嘘つけ」
「細かいですね。たまには取り乱させて下さいよ。いつも、誰が冷静な役をかってでていると思っているんです」
「趣味だろ」



 扉越しに、聞こえてきた声に。言葉に、足を止める。
 よく、聞き慣れた言葉であるからか、とても。
 とても――


 何も聞かなかったふりをして、通り過ぎればいいのよ。そう、思った。
 そう、いつも通り。
 ぁあ、だけど。
 私は、普段、どんな顔をしていた?
 こぼれて落ちる涙を拭った。
 落ち着いて、声を出さずに泣くのは得意でしょう?
 足音を消して、気配を殺して。
 私がこの世にいないふりをするのは、簡単でしょう。
 だから――

 どうして、得意なの。
 どうして、得意なことを選ぶの。
 結局私は、その位置に甘えている。
 だってそこは、ひどく悲しくて寂しいけれど。誰にも、何も、求められないから。
 だから、安心。

 選んだのは私。
 望んだのは私。
 叶えようと努力しなかったのも、私――



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