神の愛人 6
「死ぬな」
 始めての懇願の言葉に、目を見開いた。
「――神?」
「死ぬな」
 神の目から零れ落ちて来るのは、涙だった。
 あふれ出たそれが、雨のように降り注ぐ。
「死ぬな、七海」
「……わ、たし」
 感情が抑えきれずに、涙があふれてきた。
「私、生きてて、いいの?」
 あんなもの無くなればいいと、願ったのに。見殺しにしたのに。
「実際に下したのは私だ。七海が負い目を感じる事じゃない」
「でもっ」
「七海。死ぬな」
 神の手が頬を包む。――どうして、そんな顔で。
「私……」
「愛してる」
 心を、かき乱すの?
「……なま、え」
「ん?」
「名前、知らない」
「――ぁあ」
 神が、考え込んだ。それ、名前を思い出す時間?
「エレシス」
「エレシス?」
 繰り返すと、神……エレシスが笑った。
「七海、顔が赤いぞ? 熱でも?」
「ちっちがっ――ちかっ!?」
 額が、重なり合う。吐息が唇にかかった。どきりと、震える。心臓がどきどきしている。――は、反則だ!!
「放して!」
「嫌だ」
「下りてよ! 重いじゃない!」
「体重はかけていない」
「ぐ……」
 確かに、そうなんだけど。
「七海。もう一度、呼んで?」
「い、いや」
「ほう?」
「ひぃ!」
 怖い! 怖いから目を細めないで!!
「素直じゃないね、七海は」
 な、何が!!?
「そんなに私を試して、楽しい?」
「た、試してなんか……」
「ふぅん」
 だ、だから怖いんだってば!
「もう、血を流すのは止めなさい」
「……はい」
「代わりに、愛してあげるから」
 逃げろと、本能が告げた。
「い、いやぁぁぁああ」
「七海、逃がさないよ」

 こうして私は、「神の愛人」から「エレシスの恋人」に、変わっていた。


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消えた5はこちらです
いやぁすっごいいろいろ落ちてる時に書くとテンションが反映されて楽しい。
こちらはお察しの通りデットエンドです。