孤高の女王

 ある所に、女王様がおりました。
 その女王様の名前はエルカナラレスティル=アフィカと言いました。
 でもその名前は長すぎました。
 そして、自分の名が下等な民の口にされるのを嫌った女王は、民が自身の名を呼ぶことを禁じました。

 女王の城ははるか遠く、高い山の上にありました。
 城の最上階からは、国中が見渡せ、女王はそこで税のすべてを尽くした生活を送っていました。

 正治など、誰かが動かすもの。民は働いて当然。奴隷は、奴隷らしく、農民は農民であれ。
 王家の血を引く女王には、それ以外は人として認めることは決してありません。
 ただ大臣を除けば。

 女王は、税は自分の物だと思っていて、民は税を払うのが当然。と言うのが根底の考えでしたから、わがまましほうだいでした。

 食べるものはありまあまって捨てる。一度着た服は着ない。暑い夏は氷を食べ、寒い冬は暖炉を燃やす。
 金貨のお風呂に入り、惜しげもなく宝石を買う。
 気に入らない事があれば、毛皮の絨毯に向かってお茶を撒く。




 もし女王が少しでも、下を見ていたら未来は違ったかもしれません。
 ほんの少しだけ、耳を傾けていたら。




 こんなことには――



「民をこれ以上殺す気か! 女王!」
「女王に裁きを!」
「これ以上、女王の横暴を許していいのか――」


 いつからか、民の暴動は抑えきれなくなっておりました。


 女王には心を許す存在も、肩を預ける存在もありません。

 いつでも、独り。

 時々、稀に人を求めては、心無い言葉で気付けて、人は去っていきます。
 それすらも、女王は自分のせいだと気がついていません。

 自分が、人の心に傷を負わせているなど、どうして考えようか?


 女王が飼った鳥も、猫も、蛇も、人も、すべて――
 死にました。

 逃げようとしたものは、容赦なく後ろから切られます。

 そして塔から落とされて、女王の塔の守りの獣に食べられるのです。


 女王ですら、その獣を御することができるのか、知る人はいません。
 その獣は、本当に女王の守りだったのでしょうか?
 それとも、日々肉を提供してくれる餌場だったのでしょうか?


 いつでも、女王は一人きり。
 給仕をするしわしわの婆だけが、常に女王の下におりました。
 彼女は、ただ言われたものを用意していれば殺されずに済むと知っているのです。
 そして昔――この女王とした取引のせいで、ここから逃げる事が叶いません。

 だって、本気で女王に首を絞められたことなら、もう数える事もできないのですから。

 いつでも、人間以下の扱いを受けておりました。
 この塔から、逃げられる事もなくて。



「女王陛下」
「次は、何を持ってくるのです?」
「今はそれどころではありません! 何とぞ! 民の願いを……ぎゃぁ!!?」
 勇敢にも女王に命乞いをした者が、あっけなく首を切られます。女王はこの城に張り巡らせた罠を持って、人々を残虐するのです。
 自分の、言いなりにならない者を。


「次のドレスは、赤がいいのう」

 こうしてまた、女王のわがままが増えていくのです。




 本当は、女王は怖かったのです。
 自分は“女”で、誰もが重要視しない。ただの人形である事を望んだから。

 だから、女王はこの高い場所に住むのです。

 いつでも、すべてを見渡せるように。

 でもそれは――女王の目があってこそできたことでした。

 もう何も、見ることのない女王の目には、下のことなど、映りはしないのです。




「女王の首をさらせ!!」


 城壁の上にさらされた生首の目には、何も映りはしないのです。



Free Will
2007.08.09