Short Selection 2010
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勢いで書き出すも、続かなくなった or 完結作品。超ショートからいろいろ
i n d e x
護衛は殺人鬼

「ねぇ、いい加減にしない?」
「なぜ?」
「なぜって……ねぇ?」
 ため息をついて、視線を地面に向ける。正確には、目の前で微笑む彼の足元にいる、人間に。
「だって、君を殺しにきたんだよ?」
 またまた笑顔で、さらっと言われた言葉。
「それはそうなんだけどーーでもさー」
「でも?」
「目の前で殺人現場なんて、見たくないんだけど」
「そうだったのか」
 彼は、今始めて気がついたという驚きを表すように目を見開いた。そして、しばし考えたあと言う。
「わかった」
「言っとくけど、後ろからうめき声が聞こえるとか、肉のつぶれる音がするとかも却下よ」
 どこからか布を取り出した彼に言う。彼は、ちょっと不快感を表した。引き伸ばされた布が悲鳴を上げている。
「――ちっ」
「はいはい」
 今までと打って変わって舌打ちをする姿にも取り合わなくなって、どれくらい経つのか。
「じゃぁどうするんだ? 生かして帰すのか?」
「それもちょっとね〜足止めくらいしといてよ」
「手ぬるい」
「手ぬるいって、あんた。片足切り落とすぐらいやってのけるくせに」
「当然だ」
「かわいそうよね」
「誰が?」
「別に」
 そう言って、歩き出す。でないと、口を塞がれた男の断末魔のうめき声を聞かなくてはならないから。



「手ごたえがない」
「はいはいはい」
 彼の口癖だと、最近は思い込むことにした。
「やりがいがない」
「だから、旅に出てるでしょう」
 まったく、もうとため息をついた。
「ぁあ、僕のためなんだね!」
「ちょっと違うんだけど……」
「なんだい、」
「何も言ってない」
 あーぶない。聞かす人も聞く人もひとりしかいないって切ないわ。


 今更だけど、私はアリージャ、アリージャ・デル・フェルタ。
 彼はエリシオ・マクス、私の護衛……かなりの変人。守るより殺すほうが得意って感じ。
 瞳の色は錆色。髪の色は紫紺。短い髪に黒い服。編み上げた茶色いブーツ。
 装備は、どっからか大量に出てくる短剣。毒薬。細い銀製の紐。ついでに胡散臭い最高の笑顔。
 彼がなぜ私の護衛をしているかって言うと〜長くなるわね。はしょっちゃ、ダメ?

 私はエリシオ・マクス。フェルタ国王女アリージャ・デル・フェルタの護衛です。アリージャ様はそうですね。長かったストロベリー色の髪をばっさりきって胡桃色に染めた、銀色の瞳を持った女性ですね。
 ぁあ護衛! いい響きですねぇ。あ、彼女はフェルタ国の王位継承権第一人者です。まぁなぜそんなことになったかと言うと……本人の意思でないことは確かですね。
 なんでも、伯父が使えないせいらしいですね。ま、僕はそこら辺の権力には興味がないので、知りませんね。
 しかし、護衛という職業というのはいいですねぇ〜向こうから対象がやってくるので。手間が省けて。

 彼――エリシオがなぜ私の護衛をしているかというと、単なる暇つぶしの延長ってやつね。
 実は、城から逃亡して賭博をしに行った時に知り合ったのよね。ちなみにその時の賭けに勝ったから今彼が護衛をしてくれることになったのよね。
 一年だけ。ここ、重要よ。
 実は私王位継承権は持ってなかったんだけど伯父の失態のせいで私に回ってきちゃったのよね〜いらないのに。
 というわけにも行かなくて、私は二十二歳になった時に王になることが約束されているのよね。まぁそれは、私が、生きていた場合。
 死んだ場合、元老院が国を統治する事になるのよね。ちなみに、元老院は今七人。その中でも力が強いのが二人いて、私は鼠と狸って呼んでるんだけどね。
 この二つに分離しているのが現状ね。ちなみに病気に臥せっているのが現国王。私のおじい様って訳。
 まぁ、この通り。私が死んだほうが得する元老院のじじい共がたくさんいるわけで。
 最近、死亡確率が上がってるのよね。
 そんな時に賭博場で憂さばらししてたの。その時も危うく死に掛かったんだけど、ほら、ならず者がいっぱいいるって、最高じゃない。
 一番強そうな男を引っ掛けて賭けに参加させたの。もちろん、勝ったわ。
 そして今に至って、彼は私の護衛をしてくれるの。
 ただ……それから、城にいると、シーツが真っ赤に染まったり、廊下掃除が大変になったり、窓が粉々に砕け散ったりするくらいならまだ日常だったんだけど、さすがに塔が真っ二つに折れるものだから、城を出ることにしたの。

「なんで、こうなったのかしらね」
「どうしました?」
「なんでもない」

 そして今日も、私と彼は道を進む。
 

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