世界は、三つにわかれている

 人間界
 闇術界(あんじゅつかい)
 空呼界(くうよかい)

 闇術界には、自分の内から発生させる術を使う術師(じゅつし)がいる。
 空呼界には、自然界に存在する精霊や元素などに語りかけ、その力を借りる招喚師(しょうかんし)がいる。

 人間界には、人間が。
 時(とき)に、人間の中には術師や招喚師と同じ力を持つ者が生まれる。
 それはとてもまれなことだったり、そうでなかったり。ただ、たとえ同じ血のつながった兄弟でも、同じ力を持つとは限らない。

 闇術界と空呼界は一人ずつ、闇皇(あんおう)と空帝(くうてい)が存在する。
 闇皇になる条件は、力と前皇の承認。
 空帝になる条件は、三大神の招喚と認知。

 はるか昔から、闇術界と空呼界は不可侵を、二界間で沈黙を暗黙(あんもく)を続けてる。―――――表向きは どちらとも、思想のあわない対界(たいかい)を消し去りたいと考えて。
 そして、それはいつしか、表に現れはじめてる―――

 ――――そう。空呼界から闇術界へ、とある刺客がはなたれた。



 ものがたりは、数年前わかれた、兄妹の再会……





手の中へ






「行くぞ!!!」

 現れるゾンビにモンスター。切捨て切捨て階段を下る、廊下を走る。現れるのはザコばかり。

「……………?」

(……………変だ)

 皆同じように疑問を持ちながら、それでも先へと進みゆく。

 走るのは五人。人間界で“救(すく)い主様等(ぬしさまら)”そう呼ばれる五人組。





バァアン!!!!

 長い廊下を走り。門番のいない扉を開け放つ。


ざぁぁぁぁぁぁ

 開けた光景は壮絶(そうぜつ)だった。

 細長い赤い絨毯(じゅうたん)が引かれ、それにそってローブに身をつつんだ特定の階級(かいきゅう)以上の術師が向かい合って並ぶ。
 何十にも幾人(いくにん)も。先にある階段の下には、正面を向く四人の人影。後ろに二人の直属部下を伴う。

 ――――闇四術者(あんしじゅつしゃ)


 そして、その上、その後ろの階段の上にいる―――――


「――――っっお兄ちゃん!!!?」

「久しぶりフィー。迎えにいこうとしていたところを、君がやって来てくれたから。――――待っていたよ。」

 玉座に座る闇皇は、にっこりと微笑んだ。




(―――………お兄ちゃん!!!??)
 今まさに悪の権化(ごんげ)と呼ばれる者を封印しにやって来た、救い主と呼ばれる者等は驚愕(きょうがく)した。

(まさか――――)
 治癒者(ちゆしゃ)として一緒にいたフィー。まさか、まさか闇皇と、知り合い!!? これから封印するんだぞ!!(倒すと言えないのか!!!)

 四人は闇皇を仰(あお)ぎ見た。不適に笑う玉座の皇は、底知れぬ恐ろしさと得体の知らなさ、そして、何者にも壊されることのない自信。



ふっ

 何かを含んで見下し笑う皇の顔は、離れた所の四人にまで、恐れと怯(おび)えを運んだ。


 ―――――遠いな
ぱち
 あわさった指が鳴って、フィーは突然玉座の隣の席の上に、赤いドレスで現れた。

「へ?」
「よく似合う」

 ゆったりとした顔で満足そうに兄は笑う。



 ―――――――そういう事か!!!!――――

 闇四術者はじめ周りの術師達は玉座の皇の態度に、今までの疑問が解かれるのを感じた。

 命に従い行動し、帰ってきたもの。報告の間での皇の態度――――



 ―――――

「そうか」

 そう言って、突然切りつぶされる裏術師(りじゅつし)。一瞬のことで、本人は死んだと思う暇すらない。

「次の実行者はラーガ。お前だ。」

 皇はそれだけ言って部屋をあとにする。抗議する暇も、質問する間もない。否、そんな事が許されるはずもない。

 ―――――



 ――――なぜ? われらが皇に、われらが世界を批判する者共。人間界では、今救い主と呼ばれ崇められる人間と招喚師。それらを殺すのが命だった。なのに――――?
 答えは今の状況を見ればわかる。殺された者の共通点。それはその中にいる少女――――今、皇の隣に座ることを許された少女。
 彼女を傷つけたものが殺されていた。

 皇の身内? そう――――妹

 だから―――――今の皇の態度を見れば、皇の中で彼女がどのような位置にいるかわかる。




「元気だったか? 本当はもう少し早く迎えに行きたかったんだ。」
 そう言って、長い髪を、すくう。
「綺麗になったね。」
 なつかしむように、痛々しいように、そして、悲しむように。

 ―――――もっと早く会いたかった―――――

 過ぎた時間は戻らない。だから、これから――――


「さて、」
 王は扉の前に唖然としてこちらを見ている者共を眺めた。

「邪魔だな」

「ってちょ!! まってお兄ちゃん!!」
「なんだい? 何の問題もないだろう?」
「問題ってないようなあるような……あるわよ!!!」

 あわてて皇に取り繕(つくろ)う少女。

「フィー。おちついて」
「おちつけって!!……」
「そうだ!これを」

 そう言って、ドレスに負けないくらい真っ赤な花が現れる。

「はい」
「あ…ありが…とう」

 香りのよい花は、段下の皆にも香りを運ぶ。

 驚(おどろ)いてもどこか嬉しそうに花を受け取る少女を見て、皇は満足してうなずいた。でも、振(ふ)り返った顔は、闇皇にふさわしい残酷な表情だった。

「キエロ」

 その一言で、救い主と呼ばれる四人は跡形もなく消え去った。

「――――っっ!!!!―――」

 驚き悲しんだ少女の顔から笑顔が消える。その表情を見た瞬間の皇の不快そうな顔――――その場にいたすべての術師に寒気が走った。

「おにぃ…ちゃん――――?」
「大丈夫、フィー」

 そう言って、現れる鏡水晶。映る四人の人影。

「人間界に落(お)としただけさ――――」
「!! ……」

 それを見て、安堵する少女。まだ不機嫌な皇。

「殺したかったけど、フィーが悲しむことはしないよ。」

 あっさりと、言ってのけた。

「本当は、フィーにそんな顔させる者すべて消し去ってしまいたいけど。」

 ――――――これで、ずっと一緒だ――――



 ……………もう、放さないよ。












あとがき

なんでしょう?はじめは勇者の御一行が魔王を倒しに城に来たら、玉座の魔王はパーティーの一人(女)の
兄だった。という設定で書き始めたのに・・・
まず世界観が・・なんかいろいろ。
魔王と勇者設定じゃつまんないかな〜と思って、いろいろいじったら、このように。
ちなみに、空呼界の刺客というのは、表だって闇術界に戦争ふっかけるわけに行かないので、人間界を
味方につけて、人間に闇皇を殺させよう!って事での刺客です。ただし、一人操作役として、招喚師がいる。
そして結局独占欲の強い兄貴の話で終わってる・・・







Free Will