真面目な第一王子と比べれば、どこかおちゃらけた第二王子が上位の兵士を四人も呼び付けるから、どんな難関かと思いきや、ただの迎えだった。
 しかも、むしろ自分が行くと言い出しかねない勢いで。
 とりあえず賓客なのはわかった。


「ぉぃ、いい加減どうするよ」
「そう思うなら話しかければいいだろう」
「あんなに大声で恥ずかしげもなく歌う女に声をかけろと?」
「失礼にあたるぞ」
「お前が行けよ」
「嫌だ。関わりたくない」
「お前のほうがひでぇんじゃねーか?」
「気にするな――ぁ」
 あれは上官だ。やばい。


「フィリック! ミラー! 何をしていた!!」
 あ〜……うるせぇー
「すみません」
「………?」
 そんな、誰あんたとでも言いたげに……初対面か。
「お前達には国境まで迎えに行かせたはずだ」
「国境?」
 ぇえ、国境から後ろ付けてました。歌っているんで、黙って、見つからないように。思い当たったのか、娘の顔が少し引き攣った。
「すみません。まさかそんなに貧相だと思わなかったので」
「ミラー!!」
 これは本音だ。
「クライ、そのくらいにして。ユーカ様がお困りだ」
 ぁあフェイウォン様が天使に見える。入った部隊を間違えた。今から異動したい。
「すみません。私はフェイウォン。こちらはクライ・アッシュ」
「はぁ」
「そっちがフィリック、ミラーです」
「ぁあ。そう」
 興味ないって顔だね〜
「さあ、こちらへ。城までは遠いので」
「遠いの?」
「はい」
「歩いてどのくらい?」
「は? そう……ですね」
「いいわ。よくわかった」
 歩いて行こうなんて誰も考えませんよ。お姫様。



 やはり賓客扱いのお姫様はのうのうと生きていた。興味があるといえばある、ないというのは嘘だ。
「ユーカ様?」
 ただ、まるで違う様子に驚いて声をかけた。それは、どこか小ばかにした響きで、相手を警戒させた。
「なにか」
 あんなに楽しそうに空に歌っていた姿は、遠く。
「今日は歌わないんですか」
 問い掛けていた。
「歌わないわよ」
 睨まれた。あの時、遠くで聞いていたことを怒っているのか。
「楽しくなさそうですね」
「は?」
「歌っていた時は楽しそうでした」
「ああ」
 低く、暗い声。
「それで職務放棄?」
「かわいくないですね」
「だったらどうしたのよ」
「見せてください。うちの王子を陥落させたというその笑顔を」

 言ったことを、後悔した。


モドル